エピローグ また、とんでもない物を盗(ぬす)んでしまいました
ところで、あの暴走少女だが、彼女は大企業の令嬢だそうで。自社のバイクを走行テストするため、彼女も高速道路を貸し切ってたそうで、手違いで貸し切り予約の時間帯が私たちと重なってしまったらしい。
「運命の出会いですわー! 命の恩人様ですわー! そして後輩さんも可愛らしいですわ!」
令嬢さんは、身を挺して自身を助けてくれた、先輩に一目惚れをしたそうで。お金持ちばかりの私立高から、私たちの高校へと転校してきた。先輩と同じ高校三年生で、強引に電動バイク部へと入部している。部室で私たちは「愛してますわ!」と令嬢さんから言われていた。
「部長さん、素敵ですわー! そして後輩さんも可愛らしいですわー! 私たち、三人で付き合いましょう!」
「……まあ部員が増えるのは良いことかな」
「ちょっと! やだ、先輩! 三人で付き合うなんて! ちゃんと断って!」
泣いて嫌がる私である。私はまた、とんでもない物を盗んでしまったようだ。これが天罰なのかも知れない。困ったように笑う先輩と、微笑ましそうに見つめてくる令嬢さんから頭を撫でられて、ひたすら私は宥められ続けていた。