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第十五章 白い魚 6

月は、細長く弧を描いていた。

カオル=ロックフォードは、不動産王ロックフォードを色仕掛けで落とし、結婚して財産をほしいままに使いたい放題してきた。

数ある別荘のうちのひとつは、野生動物が保護管理の下生息している地区にリゾートホテルや別荘が点在している場所にがあった。

パジェロブルーはその地区から少し離れた場所に着陸し、クレアたちは秘書のセリーヌが手配した車に乗り込んで、野生動物保護地区リゾートに入り込んだ。

一方、カスターの方は、泥酔させられた状態で、ベッドに寝かされて、数時間後、麻薬を注射されたうえに、その部屋にはアヘンが焚かれた。

人格破壊の施術が始まっていた。

クレアたちは、別荘に到着すると、マスクにヘルメットで侵入し、警備に当たっていたものを倒していった。

ロブは素手でなぐり、クレアはサイレンサー付きの空砲銃で相手を打ち、交わされた時は足技で倒していった。


カスターは彷徨っていた。

どこまでもつづく、白い状態。

突如、妹のように可愛がっていた子が現われて、レイプされていた。

犯している男を捕まえて殴りかかろうとすると、それはロブだった。

驚いて後ずさりすると、助けようとした子が写真だけでしか見たことのない実母のマーサに変わった。

「うわぁーっ。」

カスターは叫び声をあげたが声にならなかった。

喉の奥からちからいっぱい張り上げたが、声がでなかった。

顔を真っ赤にしながら、叫んでみたが、出なかった。

目から涙が出て、両手で頭をかきむしった。

喉の奥に違和感を感じて、嘔吐すると、白い物体が出てきた。

その物体は、変形を繰り返し、カスターと等身大に大きくなったかと思うと、カスター自身になった。

もう一人のカスターはカスターの首を絞め始めた。

「死んでしまえ。」

喉の奥から出てくる低い声だった。

「消えてなくなれ。」

カスターは息も絶え絶えになり、意識が朦朧してくる感覚を感じていた。

(俺は死ぬのか。死んでしまったら、楽になれるのか。)

「死なないで。」

どこからともなく、女性の声が聞こえてきた。

薄目からはカスター自身しか見えない。

思い切って、目を見開くと、カスター自身が首を絞めるのをやめて、後ろに下がっていく。そして、カオル=ロックフォードが現われた。

「もう、大丈夫。わたしがいるから。」

そういって、カスターを抱きしめた。

カスターはカオルの腕に抱かれて、安心して目を閉じようとした。

ところが、後ろに下がったはずのカスター自身がカオルとカスターの間に両腕を入れて、二人を引き離した。

そして、カスターを殴り続けた。

「だめーっ。」

カオルは叫んだ。


ベッドに横たわるカスターのそばでカオルは左手をカスターの目の上におき、右手を自分の目を抑えていた。

その両手をそれぞれの目から離した。

「だめだわ。なぜなの。」

カオルはため息をつくと、注射器を手に取り、カスターの腕に打った。

ドアが動く音がしたので、振り返った。

「施術中は、部屋に入って来ないようにって。」

カオルが振り返ると、そこには、ヘルメットをはずしていたがマスクをつけたクレアとロブが立っていた。

(警護に当たっていた者たちが倒されたっていうの?冗談じゃないわ。)

カオルが立ち上がると、クレアは足を上げて、カオルの顔をめがけて蹴りこんだ。

カオルは顔面に足蹴りが決まり、床に倒れると気絶した。

ロブは、カスターのそばに寄っていて、上半身を起した。

腕を見ると、注射後がいくつかあった。

部屋はアヘンの煙で充満していた。

「キャス!」

息をしないようにマスクをはずしながら、ロブが呼びかけたが、カスターの反応は無かった。

「呼びかけても無駄だ。変に意識を取り戻させないようにしないとだめ。」

マスクをはずしたクレアはアヘンが効かない訓練をうけていた。

ロブはマスクをつけた。

クレアはカオルを仰向けにして、足でまたぐと、カオルの右目にポケットから目薬を出して指した。

左手でカオルの左目を押さえ、右手の人差し指でカオルの眉間を押さえた。

右目にさした目薬は、まぶたがなかなか閉じられない薬だった。

「オイ!聞こえるか。厳。わたしだ、クレアだ。」

クレアのその様子にロブは、愕然としていた。

「こうやって、離れた場所で交信するのが白い魚のやり方なんだよ。」

薫の反応がないのを見ながら、クレアは話を続けた。

「白い魚って、この世に3人しかいないんだ。厳、薫、そして、もうひとり。」

薫の右目が2度ほど、瞬きをした。

すると、低い声で返事をした。

「お前はダンとかいう医者の養い子って奴か。」

「よく、ご存知で。はじめましてじゃないよね。あんた、あの時、死んだだろ。」

「そうだなぁ、スワン村の手前で谷底に落ちてな。」

「替えの体があって、良かったなぁ。」

「なぁ、そこまで知ってるってのは、どういうわけかな。」

「さぁな。」

「スワン村に、白い魚の書物でもあったのかぁ。」

「じゃ、何しにスワン村に向かったんだよ、あんた。」

ただただ、唖然とその様子をみているロブに、この部屋を出るようにクレアは顎で指図した。

ロブは、カスターを抱えて、部屋から出て行った。

「さぁな、教える理由なんてないだろう。」

「だったら、こっちもそうだろう。」

クレアは後ろを振り返った。ロブが出て行ったあと、ドアが開いたままで、アヘンの煙がドアから流れていってたからだ。

「こいつを、殺しておいたら、もうスペアはないだろう。」

「もうひとり、いるじゃないか。」

「たしか、女だったはず。」

「ふっ。どうかなぁ。」

厳は、もうひとりが男か女かも知らないはずで、自分の子が生まれたことは知らないはずだが。

存在していること事態は知っていてもおかしくない。

「交信は終わりにしよう。今度はお前の番だ。」

「さぁ、どうかな。俺がやられる前に、お前たちをやってやる。お前たちをだ!」

薫が低い声で怒鳴ると、クレアは両手を離し、薫の頭を両手で押さえつけると、自分の額で頭突きをした。

クレアは即座にポケットから、黒い玉を取り出し、指でつまんで、薫の口の中に掘り込んだ。

薫の口を右手で押さえ、左手で後頭部したの首を押さえ込んで、薫の頭上を下げた。

そして、黒い玉を飲み込ませた。

すると、薫は白目を向き、咽ると体を反り返った後、動きが止まった。

クレアが後頭部を床に置き、口を押さえていた右手を離すと、薫の口から血が流れた。

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