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第十五章 白い魚 3

カスターはパラディーゾデラモンテグナ都市から瓦礫を廃棄するダンプ車にヒッチハイク目的で助手席に乗せてもらっていた。

目撃情報を得て、テオは除隊した元部下を目的地に張り込ませた。

クレアからの依頼は、交換条件だった。

スワン村で手に入れた情報を差し出す代わりに、カスター=ペドロを尾行し、危機に面した時は連絡がほしいとの依頼だった。

「スワン村で手に入れた情報は、少佐にメリットのあるものだし、カスター=ペドロがその有益な承認になる人物なんだ。

本人には内密にして計画を立てている。SAFから離れることが計画の実行であるから、本人に気づかれないように尾行してほしい。」

「おまえさんの脳みそは俺には理解できないところで働いているのだろうな。信用していないわけじゃないが、命狙われてまですることかどうか。」

「解散したホーネットクルーについてとだけ言っておこう。信じるか信じないかは、少佐次第。」

釈然としない依頼ではあったが、スワン村の情報というのは、得難いものがあった。

テオは話しに乗った。

ダンプ車が向かったのは、豪雨に見舞われて、川が氾濫した地域だった。

川岸を護岸するために瓦礫を運搬してきたのだ。

至るところから、ダンプ車が集まってきて、そこに街ができていた。労働者の街で、夜にはネオンが輝いく安価な宿やモーテルが立ち並び、また呑み屋が点在していた。

深夜になると、自然と街角に胸をはだけさせ短いスカートにハイヒールの女たちが立ち始める。

カスターは当ても無くたどりついた場所で、SAFから逃げ出して求めていた場所がここなのかと落胆しながら、モーテルを探していた。

ようやく、空き部屋を見つけて、沈むようにベッドに倒れこんだ。

災害救助活動中のカーテンで締め切ったようなロブとの関係性に、開き直る余地もなく、自分が消えてなくなることしか思いつかなかったことに苛立ちを感じていた。

そして、自分の過去を振り返った。


カスターがまだ赤子だったころ、父親が母親に暴力を振るい、母親は暴力に耐えかねて、父親を殺した。

情状酌量につき減軽されたが、刑に服するため、カスターは養子に出された。

実母マーサが危篤になるまで、実母が生きていることは聞かされていなかった。

母方の親戚の養子となったが、養父母は子供ができず、懇願していた養子縁組だった。

子供好きだった養父母は多くの里子を預かっていて、カスターが養子に来た時にもすでに4人の里子がいた。

里子は親が育てられない状況であるがために他人の家に預けられる制度。国からの補助ももらえるが、里親になるために資格がないとだめだった。

養父母にとって戸籍上の子供はカスターだけで、里子ともども分け隔てなく育てた。カスターにとっては優しい養父母であり、申し分の無い生活をさせてもらえた。

しかし、カスターには愛情の飢えた里子たちとの関係性は安易なものではなかった。

妹のように可愛がっていた子が次第に、オンナになっていく。子供だとばかり思っていたのは、カスター自身が未熟だったからかもしれない。

その子が他の里子から性的虐待を受けるようになった。養父母に心配掛けたくない一心で、事実を覆い隠そうとした。

そうすることによって、虐待を受けた子、虐待をした里子も、カスターを愛欲の犠牲者に仕立て上げ、自分たちのこころの隙間を埋めようとした。

その心の隙間を感じ取っていたので、カスターは助けを求める事をしいでいた。

ただ、この場所から逃げ出したいという考えしか思い浮かばなかった。

逃げ出す口実を見つけたのは、軍の入隊だった。

その後、里子たちは自立していったが、消息はつかめないままとなり、養父母は気にかけ、至らないところがあったのかもしれないと嘆いた。

日々、軍の訓練を受けていたカスターはもう過去をひきずる根暗なオトコではなくなった。

すこしたくましくなった自分に自信を持ち、女性にアプローチすることが多くなった。

軟派に成功しなくても、同年代の男たちと一緒に馴れ合い、普通の生活をしているように感じて満足できた。

女性が多い部署として、通信部に配属願いをし、望みどおりになって、カスターは手当たり次第にアプローチしたが、結局気持ち悪がられてしまい、最終的にその部署全体から嫌われてしまった。

訓練中に目を掛けてもらった上層部に声を掛けてもらい、輸送部隊に配属になった。

そして、理由(わけ)ありの物件を輸送し、トラブルが起き、品物を物色した罪を着せられるところで、除隊した。

輸送部隊に配属になる前に、実母の危篤の知らせが来ていたが、受け入れることができず、居場所を見失ってしまうことを恐れて、実母のところへかけつけることができないでいた。

除隊になった後、実母マーサの墓を訪ねて、ロブに誘われて、スタンドフィールドドックのクルーになった。

アレックスの子孫であるロブの気性に惹かれていたのだが、中身を知ると、何故か安心してしまった。

そして、実母の子であると紹介されたレインとジリアンを一目見て、自分の弟たちではないなと思った。

しかし、そのことを確かめると、自分自身の素性がばれてしまうことを恐れて聞けずにいた。

カスターは素性を隠しながらも、敢えて追求しないロブにある意味感謝しつつ、自分の居場所を得た気持ちで満足する日々を過ごしていた。


カスターは、自問自答した。

愛に飢えていたのか。

女性にモテないことを開き直って、男たちばかりの生活に慣れ親しんで満足していたはずなのに。

ロブにレテシアという恋人がいる事を知り、レインの恋心に自身も気持ちを高ぶらせて同調しようとした。クレアの無防備な振る舞いに興奮して、愛を求めようとしたのかもしれない。

求めているものが欲しいと素直にいえない気持ちを隠して、まるで、それを引きずりだされているような感覚で、お互いを求め合ったようなあの夜のこと。

そこには、純粋な愛情はないと理解しながら、求め合い愛撫し欲情をぶつけた。

果たして、こころは満たされなかった。空いた穴が大きく広がり、強く痛みを感じた。

カオル=ロックフォードが別れ際に囁いた言葉が耳について離れない。そこへ逃げたいと思っているからか。

「わたしの体を必要としているのなら、いつでも、連絡を頂戴。」

ポケットからメモ書きを取り出した。

そこに電話すれば、カオル=ロックフォードがいる場所に伝言が届くという。

メモ書きを握り締めて、腕で目頭を押さえた。

こころが千切れてしまいそうだ。つなぎとめておくには、彼女の体が必要なのか。

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