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グリーンオイルストーリー ~空の少年たち~  作者: 久川智子
第十三章 手紙と贈り物
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第十三章 手紙と贈り物 3

レインとジリアンは、SAF(スカイエンジェルフィッシュ号)のエンジンルームにいた。

エンジン技師のジョナサンと一緒にいて、エンジンの様子をみていた。

ジョナサンはグリーンオイルのタンクをのぞきこんで、ポケットから、黄色い液体が入った瓶を取り出した。

そして、またポケットからスポイトを取り出して、瓶のふたを開け、スポイトをいれて液体を吸い取った。

その様子をレインとジリアンは無言で見ていた。

「この液体は、グリーンオイルを活性化させるもので、研究所での試験段階だが、効能に確証があるんだ。」

レインとジリアンのふたりは「へぇ~」と関心していた。

「ふたりともおいで、垂らすところを見ると一目瞭然だよ。」

ふたりは脚立を持ち出してきて、タンクにかけて、あがった。

覗き込むと、グリーンオイルのさわやかなツンとしたニオイがした。

ジョナサンが黄色い液体をグリーンオイルに垂らすと、落ちた地点が黄色になって波紋していくと、グリーンオイルが光を放って輝いているように見えた。

「うわぁ、ほんとだ。」

感嘆をあげるふたりを横目に、ジョナサンはさらに数的液体を垂らした。

「活性化させることによって、グリーンオイルはパワーアップするの?」

ジリアンがジョナサンに質問をした。

「いや、違うよ。長持ちするんだ。液体自体はタンクの中で成長を止められて、燃焼するのを待つ状態だから、その時間を利用して踏ん張らせて持続させる粘りを作らせるんだ。」

黄色い液体を垂らされてグリーンオイルは黄緑に変化したものの、しばらくすると緑色に戻った。

そして、何かしら水っぽいニオイがしてきた。

「なんか、ニオイが変わった感じがするよ。」

レインは目を輝かせながら、言葉を口にした。

「グリーンオイルが生きている証拠だ。息を吹き返しているように思えないか。」

「うん。」

ふたりは笑顔で返事をした。

ジョナサンは、タンクから降りると、黄色い液体とスポイトを箱に閉まった。

「研究所では、グリーンオイル以外にいろんな研究をしているんでしょ。」

レインは脚立から降りて、あたりを見回した。

「そうだ。グリーンオイルの利用を模索して研究している。電力もそのひとつだし、薬にも利用しようとしている。」

ジョナサンは、ふたりに、研究所でしていた仕事の内容を話した。

ふたりは目を輝かせて、聞き入った。

ひととおり、口にした後、ジョナサンはレインに言った。

「クレアさんから、聞いたけど、レインはレテシア=ハートランドの息子なんだな。」

急に話しだしたので、虚をつかれたレインだったが、「そうです。」と答えた。

続けて、「知っているんですか。」と言った。

「知っているも、なにも、俺は軍から研究所に引き抜かれたエンジン技師だからな。

ホーネット・クルーは、俺にとっても、大事な逸材の集団で、彼らが自慢の機体を操縦して飛行するところを楽しみにしていたんだ。」

「俺にとってもって・・・。」

「ホーネット・クルーは皇族専用機を操縦するパイロット集団だからね。皇帝自身がお気に入りで集めた逸材なんだよ。」

ジリアンは、ジョナサンの言葉をこころにひっかけた。

「皇帝自身がお気に入り・・・。」

ジョナサンは話を続けた。

ホーネット・クルーは有能な航空士の集団だったのが、現皇帝によって、お気に入りで集められた逸材になった。

そのなかで特徴的だったのが、レテシア=ハートランドだった。

スカイロード上官育成学校ですでに優秀な生徒だと軍の間でも話題にのぼったが、事故があって入隊が見送られ、レテシアの存在は伝説と化していた。

何年か後に、ホーネットクルーへ入隊になって、話題にのぼったものの、レテシアが除隊してしまい、皇帝がいちばん落胆したとの噂がひろまった。

その後、ホーネットクルーは解散してしまったが、軍管轄だったエメラルドグリーン号がハートランド艦長の私物化していたので、レテシアは復職に至ったという。

「俺のレテシアとの関わり合いは、パジェロブルーだな。」

「パジェロブルー?」

レインとジリアンのふたりの言葉が合ってしまった。

「ああ、パジェロブルーはレテシアの原案によるものなんだ。」

「ええ!!」

レインは驚いた。思いもよらなかったからだ。

ジョナサンが軍にいたとき、機体のデザインをホーネットクルーに書かせたとき、設計士がレテシアのデザインを「こんなもの、絶対無理だ。」と破棄しようとした。

ジョナサンはそれをみて、面白いと思い、保管しておいた。

その後、皇帝がレテシアのデザインした話を聞きつけて、拝見したいと命じてきた。

うろたえた設計士はあわてて、自分で書いたものを出そうとしたが、ジョナサンが保管していたものを差し出して、事なきを得た。

その後、グリーンオイル財団研究所で、その原案を元に起した設計図を見るまで忘れていたのだが、つけられた機体の名前が「パジェロブルー」だったので、レテシアの原案であることを思い出したのだという。

「じゃぁ、パジェロブルーはレテシアママが考えた機体で、それを作らせたのは皇帝っていうことなの?」

「そうだね。皇帝が財団理事長に要請して作らせた可能性が大きいと思う。

後からコーディから聞いたんだけど、出発式典にはお忍びで皇帝がいらしていたんだろ。

俺は知らなかったからなぁ。パジェロブルーを見たかったんだと思うな。」

ジリアンは複雑な思いで聞いていた。

皇女殿下は皇帝の亡くなられた皇后の娘で、レインより先に生まれているから、皇后が亡くなられてから、皇帝はレテシアの事を・・・。

レインも複雑な思いで聞いていた。

(ええ?レテシアママとロブ兄さんが別れたのって、皇帝が原因なわけ?)

二人のいぶかしげな顔をみて、ジョナサンはまずい話をしたのかと勘ぐった。

「いやぁ、しかし、ホーネットクルーにいてたとき、レテシアがスタンドフィールドの若い男と交際している噂があったんだが、本当の話だったんだな。」

「ジョナサン、聞いていい?」

レインは真面目な顔をして言った。

「皇帝が一般の人と結婚できることってあるの?」

「はぁ?!」

ジョナサンは最初レインの言った言葉の意味がわからなかったが、しばらくして、意図がつかめた。

「いやいや、それはないよ。えっと、レテシアが皇帝と結婚ってことだろ。」

ふたりはジョナサンの顔をまじまじと見つめてうなづいた。

「ホーネットクルーを除隊した後、しばらくして、キース=ロックフォードと噂になってな。

皇帝は失恋したんだという話しでもちきりだったよ。」

「キース=ロックフォードって?」

「知らないか。ロックフォード・ファミリーってアクロバット飛行のショーをする有名なスタントマンだ。

レテシアがファミリーとしてパイロットをしていたんだよ。アイドルとしてモテはやされたんだ。」

「へぇ~」

ふたりはそう言ったものの、なにか腑に落ちなかった。

(え、レテシアママって、男にモテモテで、危ない女性だったのかな。)

レインは次第に暗い顔になった。

それをみたジョナサンはあわてて、否定する話をしだした。

「いやぁ、キース=ロックフォードがメディアにむけて、レテシアとの交際を全面で否定していたんだけどね。

ほら、世間というか、人の口には戸をたてられないっていうか、勝手にさ、噂は広まってしまうから。」

ジョナサンは話をうまくまとめられないばかりか、してはいけない話をしてしまったと後悔しはじめた。

「でも、すごいね。レイニー。パジェロブルーは、レテシアさんの原案で僕たちがそれに搭乗しているんだよ。」

ジリアンは察して、レインののテンションを持ち上げようとした。

「ああ、そうだね。ママの存在で守られているような感じがするよ。」

レインのテンションはすぐに持ち上げられる、簡単だった。

ジョナサンは胸をなでおろした。

「パジェロブルーは皇帝からの贈り物なんだね。」

ジリアンはつぶやいた。

「皇帝は、才能ある未来を託せる人材には惜しみなく愛情を注ぐ人物だと俺はそう思ってるんだ。」

ジョナサンは、そういって、この話を締めくくろうとした。


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