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第十二章 旅立ちのとき 9

登場人物


レイン=スタンドフィールド(主人公・愛称レイニー)

ジリアン=スタンドフィールド(主人公の弟<従弟>・愛称ジル)

ロブ=スタンドフィールド(主人公の兄<実父>)

カスター=ペドロ(クルー。通信士。愛称キャス)

クレア=ポーター(クルー。医者)


エミリア=サンジョベーゼ(スカイロード上官育成学校1回生。皇女殿下のルームメイト)

フェリシア=デ=ドレイファス(皇帝の第一皇女。スカイロード上官育成学校・一回生。)


白髪の男(黒衣の民族)


カスターは通信機をつけたままだったので、管制室から通信が入った。

「SAF(スカイエンジェルフィッシュ号)クルーに告ぐ。軍部から通信あり。

未確認のエアジェット機が研究所に向かって猛スピードで飛行中。軍の空挺が追尾しているものの追いつけない状況。

機体の特徴は赤い塗装の翼。」

カスターが管制室からの通信内容をロブにつたえると、言った。

「レッドボード。黒衣の民族だ。」

「どうして、黒衣の民族がジリアンを酷い目にあわせるの!」

フェリシアが叫んだ。

ロブが声のするほうを向いて、そのとき、ようやく、人質にとられたのが皇女フェリシアであることを知った。

フェリシアから黒衣の民族の目的がジリアンであることを告げられて、ロブは思った。

(まさか。あいつが生きているんじゃないだろうな。)

スカイエンジェルフィッシュ号で荷物の整理をしていたクレアは情報を聞きつけ管制室に向かっていった。

管制室にたどり着いたとき、パジェロブルーが黒衣の民族によってジリアンが人質にとられて飛行していることをクレアは知って驚愕した。

サイレンが鳴り、研究所全体に響き渡った。


エミリアは銃口を向けられて、そのことでジリアンが言いなりになっていることを何とかしなければいけないと考えていた。

「ジリアン君、わたしはどうなってもいいから、自分のことだけ考えて。」

ジリアンは後部操縦席がみえる鏡をちらりと見ながら、必死に操縦桿を握っていた。

「うるさいだまりな。お嬢ちゃん!」

白髪の男は、右足でエミリアの胸めがけてたたきつけた。

「げほっ」

エミリアは咳き込んだと同時に気を失った。

レインは、白髪の男の死角になるよう背中越しの方へ回り込んだ。

操縦席は防弾ガラスにできているのだが、そのところどころに取っ手のようなものがついていた。

その取っ手にしがみついて、移動していった。

レインは後ろに手を回し、スタンガンを取って、握りながら、白髪の男の背後からはがいじめにした。

「ぐぅ、なんだ。」

重心が右に傾き、白髪の男はのけぞった。

レインはスタンガンのスイッチが押せないまま、そのスタンガンを白髪の男の首にひっかけて、両側を両手で握り、それにぶらさがるように足が宙にういてしまった。

さらに重心が右に傾きそれが急激だったため、エミリアの体が動き、頭を操縦席の淵に打ち付けて、意識を取り戻した。

「うぅ。」

白髪の男はレインの体重で首をきつく絞められた状態で、パジェロブルーから落ちないように操縦席のガラスの淵を握っていた。

ジリアンは必死に操縦桿を握って左右のバランスを図っていた。

ジリアンの操縦で右に傾いていたのが水平にもどる感じがしたが、反動で左に傾いた。

宙に浮いてしまったレインの足はガラスの側面についたと同時に、レインはスタンガンのスイッチを入れることが出来た。

「ぐあぁ。」

白髪の男はもがいて、スタンガンの電気ショックに耐えていたが、ジリアンの方へ目をやったときに、赤いものがこちらに向かっているのが一瞬見えた。

白髪の男はレッドボードであることが直感的にわかった。

ジリアンは操縦桿を操作するのに必死だったので、レッドボートが近づいているのがわからなかった。

エミリアはようやくレインがいることに気がついた。

(無茶をしないでって言ったのに。)

エミリアがレインを助ける方法はないかと考えていたとき、白髪の男の口元がにやけているのが見えた。

白髪の男は、足をふんばり腰を操縦席の淵にもたれかけて、自分の両手を話スタンガンを持つレインの両手を掴んだ。

そして、白髪の男はレインの手を掴んだまま、反り返り、パジェロブルーの外へと上体を落とし込んだ。

「え!」

レインは思いも寄らない白髪の男の行動に驚き、男の重心が自分にかかってきて支えないと自分が落ちてしまうので必死にささえた。

男は両手に重心をかけて、足で操縦席をけり、回転してパジェロブルーから落下した。

必然的にレインも白髪の男と一緒に落下した。

「レイン!!」

エミリアが操縦席から身を乗り出し、レインの足を掴もうとしたが、間に合わなかった。

レインと白髪の男はを上空で落下していった。

レインは驚きスタンガンを放してしまった。すると、白髪の男からも離れていった。

白髪の男はレッドボードが近づいているのを確認して、レインの体めがけて、けりこんだ。

突き放すためだった。

レインは風圧と蹴りで、白髪の男からさらに離れていった。

そして、その風圧のせいでレインの体は回転しつづけて、頭をきつく巻いていたはずのスカーフが取れてしまい、飛んでいってしまった。

白髪の男を確認したレッドボードのパイロットは白髪の男が着地しやすいように旋回していた。

白髪の男はタイミングよくレッドボードの翼に着地した。

(金髪じゃないガキはたしかロブの息子だったはずだな。ジリアンはだめだったが、これであのガキはペシャンコだ。ロブが絶望するだろう。)

エミリアは操縦席から身を乗り出して、レインの様子をみていたが、即座に自分の足を操縦席の固定させた。

ジリアンにむかって、立てた親指を下に向けて合図をした。

エミリアはアクロバットをしたことはなかったが、レインをたすけるためには、どんなことでもしなくてはいけないと思った。

ジリアンはエミリアが何をしようとしているかわからないわけではなかったが、思い通りにできるかどうか不安に思いながら操縦桿をにぎりしめた。

パジェロブルーは先端を下に向けて急速降下した。

エミリアはその速度と風圧が強くて両手を操縦席の淵にしがみつくのに必死だった。

一方レインは上空でパラシュートもつけずに落下していく様子に絶望していた。

(無茶をしてはいけないって言われたのに、何だよ、このざまは。

ジリアンを助けたとしても、何の策もなく自分があっさりと死んでしまったら、もう守ることもできないじゃないか。)

地上に背をむけて、大の字になり、できるだけ、落下の速度を遅くしようとしていた。

すると、そばを猛スピードでパジェロブルーが降下するのが見えて、風圧で自分の体がゆりかごのように揺らされた。

パジェロブルーはレインの下まで降下すると水平に体勢を整え、旋回していた。

エミリアは両手を操縦席の淵から離し、ゆっくりと立ち上がり、両手を上に向かって広げた。

ジリアンはレインのそばにパジェロブルーを寄せて、ゆっくりと、右のほうへ傾けた。

エミリアは傾いたタイミングでレインの手を掴み、腕を掴みかえ、引き寄せた。

ジリアンはミラー越しにその様子を確認しながら、右に傾けたものを水平にもどした。

パジェロブルーの傾きで、エミリアはレインを操縦席に引き込んだ。

引き込んだ反動で、レインは頭を操縦席のドアに打ち付けて、気を失った。

「ああ!」

エミリアは叫んだが、レインはもう意識を失っていてわからなくなっていた。

ジリアンは安心すると涙がとまらなかった。涙で前方が見えなくなっていて、パジェロブルーを水平に飛行するだけで精一杯だった。

エミリアは足に固定させたものをはずし、レインを抱えたまま操縦席に座り込んだ。

レインをしっかりと抱きかかえて、エミリアも安心すると涙が止まらなかった。

「良かった。無事でよかった。ほんと良かった。」

エミリアは手をレインの頭に持っていき、頭を固定させようとした。

しかし、手にぬるっとした感触があったので、レインの頭から手を離し目で確かめるとそれは血だった。

巻いていたスカーフが取れてしまい、操縦席に引き込む際に頭を打ち付けたので、傷口がまた開いてしまったのだ。

エミリアは自分のポケットからナイフを取り出し、胸元を開いて、白いものを少し引っ張り出すと、それをナイフで切り裂き、さらに引っ張り出した。

白い布を胸元から出すと、それをレインの頭に巻きつけた。

ジリアンはエミリアが何かしているのが見えていたけど、なにをしているのかがわからなかった。

エミリアは操縦席にあるレーダーを見ると、飛行物体が近づいているのがみえた。

肉眼で確認すると、それは軍部の空挺だった。

パジェロブルー上空を飛行していった。

ジリアンのヘッドセットの通信機にその軍部の空挺から通信が入った。

ジリアンは涙をぬぐって、涙を止めた。

BGM:「瞳の翼」access


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