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第十二章 旅立ちのとき 3

登場人物


レイン=スタンドフィールド(主人公・愛称レイニー)

ジリアン=スタンドフィールド(主人公の弟<従弟>・愛称ジル)

ロブ=スタンドフィールド(主人公の兄<実父>)

カスター=ペドロ(スタンドフィールド・ドックのクルーでメインは通信士・愛称キャス)

ディゴ (スタンドフィールド・ドックのクルーで板金工)

クレア=ポーター(医者)

コーディ=ヴェッキア(看護士)

アルバート(愛称アル)


エミリア=サンジョベーゼ(スカイロード上官育成学校1回生。皇女殿下のルームメイト)

スカイロード上官育成学校、校長室にて、学生がひとり入室した。

「一回生のエミリア=サンジョベーゼ上等兵です。」

ダークブランの毛先に丸みが帯びたショートヘアーの色白の女性がそこには立っていた。

校長はエミリアへソファに座るように支持をした。

「サンジョベーゼ上等兵、いや、エミリア君と呼ばせてもらおう。

君には先日、グリーンオイル財団慈善事業人命救助隊出発式の誘導空挺部隊のメンバーであることは聞いていると思う。」

「はい。」

「同時に手渡していた資料に記載できない事項をここで述べておくので、口外しないようにしてもらいたい。」

校長から直々に話をされることについて、エミリアは神妙な面持ちで聞いていた。

誘導空挺部隊とは、スカイロード上官育成学校の学生が力量を発揮させる場として設けられたものだった。

しかし、今回は、式典に皇女殿下が参加することで皇女殿下のルームメイトであるエミリアが選ばれた。

校長の話す内容は、この皇女殿下の身の危険をエミリアが防御してもらう目的があったからだというものだった。

エミリアは幼いころに母親をなくし、父と兄が軍人で、自立するためにも航空士を希望して、スカイロード上官育成学校に入隊した。

入隊直後に、兄は殉職したが、物心ついたときから、一緒に暮らしていないので兄への思いはあまりなく、兄を失った実感がなかった。

エミリアの成績は特別良いというものではなかったが、冷静さが特徴的で、順応性に優れている点で、教師である上官から覚えが良かった。

「君は、皇女殿下との親交が深く、信頼も厚いと聞いている。

女性らしい細やかな気遣いのできる人物だと私は認識をしている。」

「校長からそのような言葉をいただき、光栄に思います。」

「皇女殿下の身に危険が生じれば、誘導空挺部隊の任務は遂行せず、皇女殿下の安全確保を重視してくれたまえ。」

「了解しました。」

「そして、常々申していることだが、皇女殿下に関するプライベートな事柄は一切口外しないように、そして、口を挟まないように。」

「心得ております。」

校長は物思いをふけるように、間を置いた。そして口を開いた。

「君の父上は、残された娘を危険な目にあわせるのはこころが痛い思いがするだろうね。」

「そのようなことは、仕方ないことであります。」

エミリアは困った様子で言葉を返した。

「皇帝は皇女殿下に強くなってもらいたい一心でこの学校へ入隊させられたと聞いて、不憫に思ってね。」

「皇女殿下は入隊時に比べて変わられました。皇帝の思いを受けてお強くなられたと思います。」

「君の支えもあっただろうね。わたしは君のそういう心根の優しいところもすばらしいと思っているよ。」

「身に余る光栄であります。」

「優秀な兄を亡くした女生徒が前にもいたんだが。」

校長は、天井を見上げ、物思いにふけるように言った。

「なにか。」

「嫌、なんでもない。」

エミリアの反応に、我に返り校長は言いかけた話をやめた。

「話は以上だ。これからも、皇女殿下のことを支えてもらいたい。」

「皇女殿下をお守りすることは、国を守ることでもあります。当然のこととし、これからも良き友人として皇女殿下とともに訓練を受けていく所存です。」

エミリアは立ち上がり、校長に礼をした。

「ありがとございました。」

エミリアはその場から立ち去ろうとしたが、校長室の書棚に飾られているトロフィのなかに、女性の写真が飾られているのが見えた。

エミリアは写真を一瞬みただけで、目をそらし、室内から出ようとした。

「失礼いたします。」

校長は深くうなづいて微笑んだ。


「うわぁ~っ。」

カスターが叫んだ。

カスターは対人格闘の際、攻撃して受け止められた腕をアルバートに舌で舐められた。

油断に乗じて、アルバートがカスターの顔にめがけて拳を出すと、カスターは反り返って避けた。

「ああ~、危ない。」

「ちっ」

(油断も好きもない。体舐めるって、どんな戦法だよ。)

カスターはパンチを出しては、交わされるとかがんで足を出して相手の足に攻撃をしかけていた。

アルバートは攻撃を受けて倒れ掛かるも、体をひねって、床を回転していって、カスターから離れた。

両手をついて、その反動で立ち上がった。

立ち上がった途端、カスターが攻撃してきたが、バック転をして、避けた。

「おおお。」

周囲から喚声が上がった。

カスターはアルバートに対して、血の気があがってきて、何としても倒さないとだめだと考えていた。

(僕自身を舐めてる。ちくしょう。)

アルバートも、ディゴに投げ飛ばされて、いい気持ちがしない。カスターに勝たなければと思っていた。

カスターがアルバートの腕を取り、背中に回すと、肘で背中を突いた。

アルバートは床に倒れこんで、カスターはアルバートをうつぶせにしたまま、十字になって自分の体を押し付けた。

アルバートはカスターに乗られて、足と肩で起き上がろうとしたが、それ以上にカスターはのしかかるように体重をかけていて身動きがつかなかった。

「はい、アルバートの負け。」

クレアは言った。

「うっうっ。」

海老のように反り返って、カスターに反撃したアルバートだったが、カスターはクレアの言葉ですぐにアルバートから離れた。

「次は、あたしとレインね。」

「え、僕、クレアさんと対戦するんですか。」

レインがそういうとロブはレインの背中を押し出した。

「いって来い。」

困った顔で、レインは前に出た。

「レイン、構えろ。」

クレアに言われて、仕方なく構えた。

レインは、先ほどカスターとの対戦をみていて、クレアが足で攻撃してくると思って、両肘をつけて、すぐに顔の前にもってこれるように身構えた。

クレアは、右足をあげて、レインの顔めがけて攻撃を仕掛けた。

レインは両肘をつけまげてクレアの足蹴りを受け止めた。骨までジーンと痛みを感じた。

しかし、クレアは攻撃した右足をすぐにもどし、左足をまげてレインに背中を向けしゃがみこむようにして左足をレインのみぞおちにたたきつけた。

「ぐあぁ。」

レインは声をだして、後ろに倒れこんだ。

「ぐぇ、ごほっ」

レインは倒れこみ咳き込みながらも、立ち上がって身構えた。

クレアはその様子を見て、ロブに打たれ強さを叩き込まれたなと考えていた。

クレアが攻撃しようとすると、ロブが待ったをかけた。

ロブはレインのそばによって、耳打ちをした。

「クレアさんの握力は強い。投げ飛ばされるかもしれないから気をつけろ。」

レインはクレアの本気のびびっていたが、ロブの言葉になおさら恐怖感がつのった。

そして、レインはつばを飲み込んだ。

(クレアさんの隙をねらうにはどうしたらいいんだろう。負けた振りをしたほうがいいのかな。)

レインはクレアの足蹴りをかがみこんで交わし続けたが、自分でも攻撃仕掛けないといけないと思い、パンチをだすと、手首をとられた。

手首をとられたとレインが思った瞬間、クレアのもう片方の手がレインの上腕をつかみ、レインは投げ飛ばされた。

レインは投げ飛ばされたが、反り返り、両足が床について、反り返った反動で起き上がった。

「レイン!」

ロブが叫んだ瞬間、すばやくやってきたクレアは片肘をレインにむかって振り下ろそうとしていた。

レインはしゃがみこんで両腕でその肘を受け止めようとした。

が、しかし、クレアは寸前で止めた。

「反射神経はいいようだな、レイン。」

レインはやられると思って冷や汗をかいていた。

クレアが攻撃を止めたにもかかわらず、レインは身動きがつかなかった。

クレアの攻撃は隙がなく、速さもあって、レインには恐怖感がより一層つよく感じていた。

「どうしたレイン。」

クレアは息切れしているレインに手を差し伸べた。

レインは我に返って、クレアの手をとり、立ち上がった。

クレアはレインの肩に手を回し、レインの耳にささやくよう言った。

「怖かったか。」

レインはうなづいた。

「今のままでは自分の身を守るので精一杯だろう。しっかり体を鍛えるんだ。敵は待ったをかけさせてくれないし、子供だからといって容赦はしない。」

レインはクレアの本気は自分のためだと実感した。

「ロブがレインにエアジェットで脅しをかけたのは、やりたくてやったんじゃない。

エアジェットの恐怖をおぼえさせて、知り尽くす必要性があったんだよ。」

レインはクレアに笑顔で返事をした。

「わかりました。」

クレアはレインの頭を撫でた。

コーディとディゴはクレアの様子に大人気ないのではと思った。

ジリアンは驚愕していて、空いた口がふさがらない状態だった。

BGM:「パンドラ」ジン

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