第一章 スタンドフィールド・ドック 2
登場人物
レイン=スタンドフィールド(主人公)
ジリアン=スタンドフィールド(主人公の弟)
ロブ=スタンドフィールド(主人公の兄)
カスター=ペドロ(スタンドフィールド・ドックのクルーでメインは通信士)
ラゴネ=コンチネータ(レインたちの叔父・グリーンオイル生産責任者)
ディゴ (スタンドフィールド・ドックのクルーで板金工)
ジェイ(スタンドフィールド・ドックのクルーで塗装工)
テス(スタンドフィールド・ドックのクルーで溶接工)
モナ=ロマーノ(郵便船の船長)
ドックには、食堂があって、そこに汚れた作業着をきた、マッチョな男やら、ビン底めがねをした痩身な男やら、たくさんの男たちがたまっていて、食事をしたり、本を読んだりして休憩するものがいた。
業務連絡のアナウンスが響いて、ストレッチをしていた屈強な男が食堂から出て行った。
道具がいっぱい置かれた部屋にその男が入ると、塗料缶を抱えて部屋の窓から外をのぞく男がいた。
作業着の上に分厚いいろんな色がまじったエプロンをしていた。
「ジェイ、なにが来ている。」
「伝書鳩が来てる。派手にやられてるな。カラスにやられたかな。」
「出目金の伝書鳩か、だったら、どんくさいから、目をつけられたんだろう。逃げ切れたってことは、腕は確かってことか~。」
「ディゴ、俺たちに仕事があるのは、ロブの甘いマスクのおかげなんじゃないのか。」
「あいつは色目使える性質じゃない。あいつの外見で餌がつれるなんて、ロクなもんじゃないだろう。」
ジェイは、色を調合していて、空缶に色をいれて、棒で混ぜていた。
ディゴは、作業着に着替えてて、分厚い手袋はめていた。
自分の腕の太さぐらいのハンマーと鉄の棒をもつと部屋を出て行った。
ドックの展望台に、ロブが電動昇降棒からあがってくると、ジリアンが伝票を持ってあらわれた。
「ジル、お前、練習サボっただろう。」
「濃霧で練習できないと思ったからだよ。レイニーが操縦したがっているんだから、レイニーが練習すればいいんだよ。」
「何度も、言っただろ。お前に度胸があって、レインには度胸が無い。弱虫にアクロバット飛行は向かないんだ。」
ジリアンは11歳で操縦するには体力が追いついていなかった。
ジリアン自身は、練習するのも嫌いなら、体を鍛えるために運動するのも嫌いな少年だった。
息を切らせたカスターが現れた。
「レイニーが練習すれば、度胸だってつくようになるだろう。」
「一瞬の判断間違いが命取りになる。軽量飛行を目的とするアクロバット飛行は一人乗りと決まっている。空を飛ぶだけを楽しむために二人乗りのアクロバット飛行なんてないんだよ。」
ここでのアクロバット飛行には一人乗りと二人乗りがあるが、二人乗りとは一人が操縦席から離れ、機体に体を固定させて作業をする危険な状態で、その必要性は飛行したままの空挺修理や人命救助などがある。
「アレキサンドリアを飛行させれば、黒衣の民族に付きまとわれるのは必須。アクロバット飛行のエアプレーンを配備するのは条件だ。」
「ロブ、まだ、あきらめてないのか。アクロバット飛行の操縦をジルにやらせて、攻撃要員はだれがするんだよ。」
「俺がするさ。」
「アレキサンドリアが撃沈された時、顔に傷つくって、体をぼろぼろしたって言う話じゃないか。今度は命落とすぞ。」
「死んでもおかしくなったが、幼い二人だけ残すわけに行かなかった。俺が生かされたことはこいつらを一人前にすることだろう。」
「お前が生かされたのは、遣り残したことがあるからだろう。」
白髪の老人がレインとともにあらわれた。
「チビたちを一人前にすることだけじゃないさ。」
老人は、ラゴネ・コンチネータというロブたちにとって、叔父にあたるが、ドックではグリーンオイルの生産責任者である。
「じいさま、僕たちをチビっていうの、やめようよ。」
レインは拗ねて言うと、片手に持っていたビンをカスターに渡した。
「じいさま、いつもありがとう。愛してますよん。」
カスターは、持った瓶にほおずりした。
「ロブ、お前さんが13歳のときには、アクロバット飛行の試合勝利者の常連だった。ジリアンにあってレインに才能がないわけはなかろう。試してやってくれないか。」
「ラゴネ、レインに泣きつかれたのか。」
「泣きついてなんかないよ、兄さん。」
ロブは右手の人差し指でレインの顔を指した。
「こいつは、度胸なし、根性なし、弱虫で泣き虫のヘタレなんだ。乗せて下手に死なれたら、親父に顔向けできないんだよ。」
レインは目を見開いて、唇をかんだ。
「ロブ、顔向けできないのは、親父さんじゃないだろう。」
ロブは、それ以上何もいえなくなって、カスターが持っていた瓶を取り上げて、展望台から出て行った。
「ロブ、逃げるのか。返事はなしか。」
続けざまにラゴネがロブに言葉をなげた。
「返事はノーだ。レインは整備士と航空士の技術を身につけさせる。」
ロブは床を強く踏みつけて、音が鳴り響くように、その場から立ち去った。
「ああ、僕のナイトキャップ。じいさまが作ってくれたものしか、飲めないのに。」
カスターは親指を口で噛むと、レインの顔をみた。
涙をこらえてるレインだったが、大きな目から大粒がこぼれ落ちた。
カスターはレインを抱き寄せた。
「ロブの屈折した愛情表現なのよ。理解してあげて。」
カスターは時々、女言葉を使う。
それは、母親代わりののために使っていた。
カスターの抱きしめから離れようと両手で押さえつけるが、カスターはレインを離そうとしなかった。
あきらめたレインは、カスターの胸にうずくまって、泣きじゃくった。
ラゴネはやれやれと思いながら、展望台を出て行こうとした。
「キャス、地下水のレバー開けておいてくれないか。第三タンクを空にした。培養にはいるよ。」
「ラジャー」
まだ、他に言おうとしたそぶりを見せて、ラゴネは出て行った。
ジルは、展望台のフロントから、外を眺めていた。
「さっきまで晴天だったのに、曇ってきたよ。やっぱり雨が降るのかな。」
レインが泣くのをやめた。
「おいおい、こらこら、ジル。」
カスターはジルが何をいいたいのかわかっていた。
レインは、カスターに抱きしめられながら、幼いころの記憶を思い出そうとした。
元気ロケッツ、メレンゲなど、聴きながら、書いてます。