表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
231/247

第三十六章 黒い森 6

 ステファノにウエイター姿の白髪の男ジンが近づいてきた。

「どうかしたのか。」

「いや、トイレ待ち。」

「そうか、中の動きが怪しくなってきた。」

「怪しく?」

「そっちの交渉相手は2階の別室に入ったまま、出てこない。」

「お呼びがかからないと、出向けない。交渉室へいかないと、ことが運べない手はずだが。」

「黒い森の支配人が出入りしている様子がないから、怪しい。それから・・・。」

「それから?」

「暗号めいた言葉が飛び交っていて、『獲物がこちらに。』ということだった。」

 ステファノが首をかしげていると、建物の外から、銃声がした。

「なんだ!」

 ジンはすぐさま、自分の持ち場に戻り、ステファノは女子トイレに向かった。躊躇することなく、中にはいると、赤毛のオンナがステファノを顔めがけて足蹴りをしてきた。それを交わして、後ろに後ずさりして、応戦すると、フロアから煙が入り込んできて、銃声が鳴り響いていた。

「クソッ!」

 赤毛のオンナと格闘を繰り返したが、相手はグリップの鈍器を取り出し、ステファノのこめかみめがけて殴ったので、倒れこんだ。ステファノの後頭部の髪をわしづかみして、壁にたたきつけた。

「ロブの大事な子息を奪取した。」

 「ロブ?」と口にできないままに、なぜこのオンナがそんなことをしたのかと考えようとした。思い当たることがあったが、すぐさま否定になった。

 オンナは拳銃を取り出し、ステファノの右足めがけて打ち込んだ。

「うがぁっっあぁぁぁぁぁ。」

 銃声はあちらこちらで響き渡り、建物は暗闇につつまれていた。

 オンナはステファノの髪をひっぱりあげて、耳に口元を近づけて囁いた。

「あの子をジョナサンのようにしてやるよ。」

 「ジョナサン?誰だ?」という思いがよぎると、ステファノはまた壁に叩きつけられて、今度は気を失った。


 黒い森という館に突入した緑の歩兵はマスクをして催眠弾を打ち込み、ウィンディを探していた。テオ自身はそこにレインとステファノがいてることを知っていたが、うまくことが運べなかったとしても、この騒ぎにまぎれて抜け出してくれるだろうと思っていた。

 あちらこちらで銃声が鳴り響くことに違和感を感じた。進入しているのは緑の歩兵の3人だけで、一方向にしか行けていない。それなのに、侵入者があちらこちらと攻撃を仕掛けているように応戦している様子があった。催眠弾が効かないのか、黒い森の護衛と次から次へと出くわす。逃げ去る者は使用人だろうと思いながら、地下室に連れて行かれたであろうウィンディのところへ向かった。

 一方、ステファノの隠し潜入者のジンは使用人として館に入り込んでいたが、銃声が鳴り止まないことに危機感を覚え、煙が立ち込めるなか、ステファノのところへ戻った。そして、血を流して倒れているステファノを見つけて、生死を確認し、抱きかかえて、連れ出そうとした。ジン自身はこの館の構造を熟知していて、隠し扉の存在を知っていて、そちらに入り、館から出た。館から離れて、振り返ると、館はあちらこちら煙が吹き出し、2階から炎上していた。

「いつの間に。」

 ステファノをおろし、その場で手当てをしようとすると、誰かが近づいてきたので、ジンは胸元から拳銃を取り出し振り返って身構えた。

「ステファノ!」

 そこにはレオンが立っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ