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第五章  セシリア 5

登場人物


ロブ=スタンドフィールド(主人公の兄)

ゴメス=スタンドフィールド(主人公の父)


ダン=ポーター(前タイディン診療所の医者)

クレア=ポーター(ダンの養女。医者)


セシリア=デ=ドレイファス(皇帝マルティンの妹。愛称セシル)


セシリアが13歳の頃、皇帝ジョアンの時代。

コン・ラ・ジェンタ皇国のラ・ベレッツィア宮殿に、脅しとして黒衣の民族が襲撃をした。

黒衣の民族は花火や火薬やらで騒ぎを起こしただけだったが、その様子に怯えることなくセシリアは黒衣の民族の一人を捕まえて、連れて行ってほしいとお願いをしたのだ。

捕まえられたのは、白い長髪の人間でセシリアをみて面白そうだからと連れ帰った。

宮殿ではセシリアを拉致されたと思われたが、国の防衛の脆さを露呈されるだけでなくて、失望と恐怖を国民に与えかねないと、攻撃の際に皇帝ジョアンの皇女は犠牲のもと亡くなったことになった。

セシリアは宮殿を空挺で運び出され、知らぬ土地へ着た事に、興奮していた。

セシリアは国の防衛にかけて助けに来てもらえると安易に思っていたが、連れ去った白長髪の人間はセシリアに皇国が死亡したと国民に報せた事実を伝えた。

セシリア死亡と報せの後に、皇帝ジョアンは持病により、崩御し、セシリアの兄・マルティンが即位した。

セシリアいわく、白長髪の人間は黒衣の民族の中で、魔術師という特殊な役割をもった人物で名前をタカシといい、特徴的にオッドアイだと。

連れ去られた後、奴隷のように扱われて絶望していたセシリアは毎晩泣きはらしたが、厳が族長の息子・一男カズオに取り入ることができれば奴隷ではなくなると言われ、自らそうした。

族長の息子・一男は皇国の皇女に好かれても嬉しくなかったが、民族の女たち比べて、肌が柔らかく物腰が魅力的だったため、セシリアを次第に魅了されてしまった。

セシリアは妊娠したのを期に、一男を黒衣の民族を見捨てて逃避行するようにとそそのかした。

その結果、追撃してきたのは境界線を警備する皇国の軍で、墜落した後、一男を追って黒衣の民族が追跡にきていたのが白長髪の厳だった。


ダンはセシリアを退行催眠から開放し、しばらく眠りにつくようにした。

セシリアを病室に残し、3人は、診察室に向かった。

「生まれた赤子の父親は、族長の息子だったか。」

「跡継ぎを返せというのは、族長の息子のことではなくて、赤子のことでしょうか。」

ロブは、ダンが秘密にしておくように言われた内容を確認した。

「たぶんそうだろう。魔術師が関わっていることはお腹の子の性別がわかっているのではないかと思う。」

「先生、魔術師ってどんな役割なのですか。俺がみたアクロバット飛行の戦死がその魔術師・厳だと思うのですが。」

「そうだなぁ。魔術師という役割は、幻術をつかってあたかも不思議な力を持っていると思わせて威厳を持つ人物のことらしい。」

「威厳ですか。」

「神に仕える司祭みたいな役割だと思う。戦士ともなれば、手下を連れて、細かい作戦を専攻することぐらいはするかもしれない。」

ダンは、スワン村で読んだ内容を思い出すように言った。

「オッドアイとなれば、神がかり的に信望する人間もいたのだろうか。」

クレアは、自分が知る限りのものを口にしようとした。

「白い長髪、オッドアイって目立ちますね。戦士なら、空挺でも見分けがつく。」

「黒衣の民族は、瞳は茶色か黒で、髪の色も黒が多い。

厳は年寄りではないな。セシリアの話から若くて端正な顔立ちらしいから、見た目でやばい戦士だとわかるが、性格が良いと親しみを持ってしまうかもしれない。」

ダンはそういって、次に魔術師の怖さを二人に話した。

幻術は、アヘンという麻薬で幻想を見させている。言葉巧みにありえないものを見せつければ、魔術を使ったように思わせることが出来る。

だが、黒衣の民族の魔術師は、心理戦術を得意として、仕掛けてやることは精神的にやられてしまうことをする。

また、アヘンを使い幻想をみさせて人間の内面に入り込んで人格破壊をするといったことを語った。

そのことを二人に語ったのは、クレアには医術の面で必要となるだろうということと、ロブには危険な行動をとらせない為だった。

「ロブ、重ねて注意しておく。黒衣の民族に捕まるようなことにならないように。」

「はい。しかし、赤子を返せとしつこく追われてしまった場合はどうすれば・・・。」

「だから、お前たちには赤子がどうなったは言わない。知らないとなれば、殺す必要はないだろうから。

フレッドには、待ち合わせの教会まできてもらっただけで、その後は、一緒に行かなかったから、知らないはずなのだ。」

「そうですか。本当に知らないことでいいのでしょうか。」

「跡継ぎといわれても、子供はそのことを望んでいるとは思えない。ましてや、皇族の血を引く身だぞ。そのことが世間に知られるようなことはなんとも避けなければいけないだろう。」

「それは国の立場ですね。父さん。」

「黒衣の民族が、その子供をどう扱うかは目に見えるようじゃないか。」

「そうですね。」

クレアは、そう言いながら、別のことを考えていた。

「これから、彼女をどうするのですか。」

ロブがこう切り出すと、クレアは言った。

「皇族に連絡するのは危険ですよ。事情を知ってしまっている我々だけでなくて、ドックの人間にも。」

「ゴメスとセシリアのことを話したが、当分はドックで預かることになると思う。」

「え、ドックでですか。」

「ああ、マーサには面倒をかけるかもしれないが、女手が足りないからという話だ。」

「父さん、彼女はわがままな皇女だった人ですよ。」

「生きていくためには、やらなければならないことを学ばなければならない。

もう死んだことになっていることは知ってるのだからね。」

クレアは別のことを考えていたことに、思いついてつながりつけて言った。

「父さん、その魔術師は、わざと族長の息子と彼女を結び付けようとしたのではないですか。」

ダンは少し考えてから、口にした。

「そうかもしれないな。だったら、なおさら、赤子の生死は隠し通さねばならない。皇族に対してもだ。」


セシリアは麻薬中毒の治療を診療所で続けて、完治とまでは言わない程度でドックでみんなと生活するようになった。

セシリアの事情を知っているのは、ダン、クレア、ゴメス、マーサ、フレッド、ロブの6人だけで、そのほかのものは知らされていなかった。

BGM:「溺れる青い鳥」高鈴



第五章の登場人物の年齢

ロブ=スタンドフィールド(15歳)

フレッド=スタンドフィールド(20歳)

ディゴ (20歳)

ゴメス=スタンドフィールド(62歳)

ダン=ポーター(42歳)

クレア=ポーター(20歳)


セシリア=デ=ドレイファス(18歳)


一男(21歳)

厳(22歳)

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