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第三十六章 黒い森 2

「どうして僕が女装しなくちゃいけないんだよ!」

 怒るのも無理もない。「経緯上いきさつじょうそうなった。」とだけステファノは言った。

「別にいいじゃないか。借りてきた猫みたいにタキシード着こなしたこともあるし。」

「へぇ~、そんなことがあったんだ。」

 ジリアンの言葉にレオンが相槌を打つと、やり場の無いレインは泣きそうな顔をするしかなかった。

「あたしがちゃんと、綺麗にしてあげるからさ。」

 ニコラがレインの頭を撫でると、その手を振り払って反抗した。

「悪いが、レインしかないと思う。」

 キャプテンテオはジリアンとレオンを見てから、レインをみた。その目線を嫌って、ジリアンは目をそらしていた。レオンはニヤついてばかりいた。

「ほら、レイン。ステファノだって、このあごのラインと頬のラインじゃメイクしたって隠し切れないんだよ。」

 ニコラはステファノのあごを手で抑えていた。無抵抗なまま、ステファノは話をつづけた。

「なにもそのまま、売られて来いって言ってるわけじゃないんだ。」

「わかってるよ。」

「レインを買い取ったその人物を捕らえて、棲家ってやつを突き止めるだけなんだ。」

「それにさ、ステファノが護衛で着いていくから大丈夫なんだよ。」

 店にいたときと今と様子が違うニコラのことが気になっていたが、今はレインを説得することに集中していたかった。

「ニコラじゃだめなの?」

「浅黒いオンナはだめなんだ。・・・って痛い!」

 ニコラはステファノのあごをつかんでそのままあげて、手を離した。

「うぐぅ。それに、黒い森には、助っ人が忍び込んでくれている。」

「おや、初耳。」

「手引きしてもらう手はずだし、なにかあったら首尾よく逃げ出せるようになっている。」

「な、安心だろ、レイン。」

 ニコラの陽気さに釈然としないのはステファノやレインだけでなく、レオンも感じていた。

「ほんとに、そうでもしないと情報って手に入らないの?」

「なに言ってるのさ。正体不明なんだよ。あんたたちだって知っているんでしょ。理事長さえ、素性がわかならいんだから。」

 話を向けられてジリアンは困った顔をした。

「いや、素性を知らないわけじゃなくて、親戚だから素性ぐらいは知っている。名前を知らない上にあったこともないという話なんだ。」

 ジリアンはセシリアの葬式にグリーンオイル会社の社長が来なかったことをそれとなく聞いていた。そして、理事長のデュークが話したがらなかったことをよく覚えていた。


 黒い森の館に商品を送り込む手はずをしていた者がパトリックの指示で口利きをしてくれるというので会いに行った。打ち合わせの内容は、潜入捜査の手引きまでしたことに始まり、商品を送り込んだら、二度とその棲家から出ることはないことなど説明がされた。

「で、その浅黒いオンナは商品にならないわけだし、おまえさんじゃ、あっちは目をつけてくれないぜ。」

「そうだろうなぁ。」

 ステファノはニコラを一瞥して、うなづいた。ニコラはわかったことを口にするなと声をださずに口を動かしていた。

「レテシア=ハートランドを知っているだろうか。」

 相手はすこし、身を乗り出した。

「ああ、ロックフォードファミリーにそういう名前の女の子がいたな。」

「そっくりな少年がいてるんだが。」

「ほう。」

「素のまま出すわけにいかない。身元がばれては困るから。」

「女装させるのか。」

「できたら、そうしたい。」

「まぁ、試しに女装させてみさせてもらってからだな。下手に粗悪なものを売りつけようものなら、出入りに禁止になってしまうだけじゃ済まない商いなんだ。」

 ステファノはこれで話をつけれそうだと思った。話をしている少しの間だけで、情報を手に入れる手段を考えていた。ひとまず、買い付け人に棲家を吐かせよう。その手口はこの仲介人には内緒にしないとだめだと思った。

 ニコラは、唇をかみしめていた。思惑通りの展開になって、より一層こころを傷めていた。

 話が終わったあと、ステファノとニコラのふたりっきりになったとき、手段の話を始めた。ニコラは「いいアイデアだ。」と賛同した振りをしたが、そんな浅いやり方では手に入らないばかりか、命を危険にさらすと思っていた。たとえそれが、後で知る助っ人がいてたとしても。

 パトリック=クロスの支持では、レインを餌にして、喰らいつかせ、棲家までたどり着かせる。そのあと、グリーンオイル財団の社長がレインに接触したとき、事が起きるようにセッティングを施す予定で、思惑通りにいけば、社長の正体が判明し居所もつかめるというのがパトリックの計画だった。




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