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グリーンオイルストーリー ~空の少年たち~  作者: 久川智子
第三十一章 月夜の後悔 1
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第三十一章 月夜の後悔 1

レインは月明かりがまぶしいときは、部屋に閉じこもってしまっていた。あのホテルマンを思い出すからだ。まだ、満月ではないというのに、やけに月がまぶしい。ノックの音がした。

「ジリアンだけど、入ってもいい。」

「うん。いいよ。」

布団に包まって、ベッドに横たわったいたレインが上半身を起こしていた。

「あのことを思い出しちゃうの?」

「ああ。忘れて欠けていたんだけど、ドックにもどってから、やけに月夜を意識しちゃって。」

ベッドから這い上がって、ジリアンに椅子を差し出した。

「明日のこと?」

「うん。レオンを迎えにいくのは僕でいいのかなって。」

「そのほうがいいかなって。できるだけ、人目につかないほうがいいかもしれない。コリンに似てるからってわざわざ紹介するまでもないからね。」

「でも、こんなに早くこっちに来ちゃうなんて思ってなかったよ。」

「うん。しかし、父さんたちがこっちに来るって言ったら、間があったのが気になる。」

ジリアンはレオンの気持ちがよくわかると思った。あの二人をガラファンドランド・ドックで目の当たりにしたのなら、一緒にすごしたくないって思うだろうと察した。

「やっぱり、嫌なのかなぁ。」

「明日、あったら、それとなく聞いておくよ。」

「そうだね。レオンはドックに来てたがってたって父さんが言ってたけど、その後どうするかを心配していたしね。」

「確か、診療所に先に行ったのはコーディが探し物をしたいからって話だよね。」

「うん、クレアさんが残したもので依頼されていたものがあるとかで。」

「その話に首を突っ込むのは、だめなんだろうね。」

「気になるの?」

「うん、ちょっとね。レインは気にならないの?キャスのこととか?」

「キャス?!そうだよね。」

ジリアンは目を細めてレインをみた。呆れてものが言えなかった。

「そんな顔をしないでよ、ジル。」

おとぼけなのは、今に始まったわけではないことくらいわかっていた。ジリアンは行方不明のカスター=ペドロのことを思わない日がなかったから、レインを思うといらだたしかった。

「キャスとなにか関係あるの?」

「ないと思ってるの?」

黙っていて何もいえないレインの姿をみて言った。

「呆れた。クレアさんの死を目撃したというか立ち会ったのはキャスだよ。なにか言われていて行方をくらましているかもしれないじゃないか。」

「まぁ、そうかもしれないけど。僕たちが調べたところでなにかわかるわけでもないだろう。」

「そうだけどさ。なんか、もどかしくて。」

レインはため息をついた。

「わかっているよ。いまだにクレアさんの死を受け入れることができない。なぜクレアさんが死ななければいけないのか納得できないというか。」

「死に意味なんて、求めなているわけじゃないよ。キャスが心配なんだ。」

「グリーンエメラルダ号から離れるときは、何も問題ないと思ったけど。」

「そういうもんだよね。僕たちが知らないことばかりあって・・・。イリアのことだって・・・。」

レインは窓から差し込む月明かりに向かった。

「キャスを置いていくべきではなかったのだろうか。」


レオン=ゴールデンローブは悩んでいた。スタンドフィールド・ドックでレインたちと一緒にいたいと思っていたのだが、ロブとレテシアがドックにもどってくると聞いたからだ。あの二人とほかのドックのクルーと一緒に過ごす自信がなかった。顔を両手で覆って、入院用のベッドでうずくまっていた。

一方、コーディはクレアが残していたという遺品みたいな箱の中身を調べていた。しかし、目当てのものはなかった。少し考え込んでから、マークに頼んで、診療室に入らせてもらった。一通り見渡して、気になるものがあった。造花のマーガレットだった。それをまじまじと見ていて気がついた。青いベルベットの装丁の本があることに。造花が差した瓶を寄せて取り出し、中をぺらぺらとめくった。中から折りたたんだ紙が出てきた。中身を読んで確信した。

「これだわ。」

コーディに付き添ってマークは心配そうに除きこんできた。

「何か見つかったのかい。」

「ええ。」

マークには知られたくなかった。おそらくは何も知らされていないだろうと思った。

「クレアのことなら、少しでも知りたいのだが。」

「いいえ、おそらくはダン先生のです。クレアさんの筆跡ではありません。」

「アンから、頼まれたのか。」

「そうですね。熱心に研究されていることをクレアさんも追従されていたようですから。」

マークはわかったような顔をしたが、口にはしなかった。コーディが察して気を悪くするのを避けたかったからだ。半日一緒にいるだけでコーディの性格を理解できたマークはクレアの相棒にうってつけの人物だと思ったからだ。

「お手間をとらせて申し訳ありませんでした。」

「いやいや、かまわないよ。クレアを娘のように思っていたからね。時間があるのなら、クレアの話を聞かせてもらいたいね。」

「そうですね。時間がないわけじゃないですから。」

コーディは見つけ出した紙を大事にポケットに仕舞うと、台所にむかった。

「ミランダさんのお手伝いをしてきますね。ありがとございました。」

マークは笑顔を向けた。

登場人物


レイン=スタンドフィールド(主人公・愛称レイニー)15歳

ジリアン=スタンドフィールド(主人公の弟<従弟>・愛称ジル)13歳

ロブ=スタンドフィールド(主人公の兄<実父>)30歳

レテシア=ハートランド(主人公の実母)33歳

カスター=ペドロ(ドックのクルー、通信士。愛称キャス)26歳

ディゴ (ドックのクルー、板金工)35歳

ジゼル(ドックの料理人、ディゴの妻)30歳

ステファノ(ドックのクルー、北の民族)24歳


マーク=テレンス(タンディン診療所の医者)

ミランダ=テレンス(マークの妻、診療所の看護士兼医療事務員)


レオン=ゴールデンローブ(ジョイスと呼ばれていた少年)


コーディ=ヴェッキア(元介護士)

イリア(白髪の少女、レテシアの元相棒)

セリーヌ=マルキナ(グリーンオイル財団理事長の第六秘書)

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