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グリーンオイルストーリー ~空の少年たち~  作者: 久川智子
第二十七章 黄金の紋章
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第二十七章 黄金の紋章 3

青い空から太陽の日差しが降り注ぐ。海上を飛行するグリーンエメラルダ号はより一層輝きを増して紺碧の輝きを放っていた。

キラキラした目の輝きで見つめられていることに気がついてたジリアンはその相手を避けていた。避けられていると知らない相手は、タイミングを計っていた。二人の様子があからさまに見えていたカスターは珍しそうに眺めていた。距離が縮まるとジリアンが気づいて広げていく。それは甲板で繰り広げられていて、エアジェットひまわりを操縦していたレインもその様子を不思議そうに見ていた。

意を決してその相手はジリアンに声を掛けた。

「ねぇ、ジル。あなたは知っているかしら。」

「何をですか、少尉。」

「レインが恋をしていることを。」

その先の言葉は出ない。呆れた顔を見られないようにすることに従事した。しかし、レテシアは執拗にジリアンの表情を確認しようとしていた。

「なにか、知っているのね。」

「いま、そのような話をしている場合ですか。」

「だって、食事時だと、レインがいるし。本人は答えてくれないし。」

「レインに聞いたのですか。」

「え、だめなの?」

「デリカシーがないのですね。」

開いた口がふさがらない思いがした。少々後悔気味に、落胆して見せた。

「レインと少しでもお話がしたくて。恋をしていら、力になりたくてね。」

「レインは女の子じゃないんですから。」

「それはそうなのだけれど。ロブとはそういうお話したりしないでしょう。」

ジリアンが無言で甲板の掃除をしていると、二人の後方からカスターがやって来た。

「そうでもないですよ。」

「あら、キャスはなにか知っているの。」

「レインが話さないものを話すわけがないですよ。でも、ロブはロブでちゃんと父親やってますよ。」

レテシアは少々意外だというような表情をして、考えあぐねていた。

「エアジェットのことでは思うようにコミュニケーションが取れなかったんですね。」

「ご明察です。操縦を楽しんでくれると思っていたのに。」

「ロブ兄さんが徹底的に矯正したのです。」

「矯正?」

「ええ、エアジェットの操縦は一つ間違えれば命取りですし、楽しんで操縦しないようにと矯正したのです。」

「そんな、かわいそうに。」

「ひまわりの風車飛行は操縦能力としては高度だと思います。しかし、危険性が高いので普通にやるべきことではないでしょう。僕は少尉の飛行している様子をみて、ロブ兄さんの考えに納得しました。」

ジリアンの言葉には正当性が含まれていて、耳に痛い思いがした。おそらくは、ロブ自身がレテシアに忠告しておきたかったことだろうが、できないでいたことを今、身に染みた。

「もし、レインの事を心配しているのでしたら。」

「何?ジル。」

「女の子にはよくモテルんですよ。女の子を好きになるということがあまりよくわからないと思います。」

「え?!」

レテシア以外にカスターも驚きが隠せなかった。ジリアンの意外な発言は的を得ているように思えなかった。

「それは、モテ過ぎて誰を好きになっているかわからないことかしら。」

「いえ、好きになることに罪悪感を持ってしまうのです。」

「はぁ~。」

カスターは感心していた。

確かに現状では誰の事を好きでいるのかはわかっている。しかし、モテ過ぎるところから、好きになってしまう相手と別の相手を傷つけてしまうことに罪悪感を持ってしまうと。

「僕は学校にいてるときから、そんなレインの様子を見てきました。それはたぶん、今も変わらないでしょう。」

そういうと、レテシアたちに背を向けて、掃除を終えて立ち去った。

「ジルって、大人びたことを言う子なのね。」

「ええ。正直面食らう時もありますが。」

「人を傷つけないで恋はできないわ。」

悲しそうに言うレテシアの顔をカスターは眺めていた。その言葉の裏に、ロブ以外の男性の存在があるのかと考えていた。ロブにレテシア以外の女性の存在には至らなかったからだが。


レテシアは食事時に、レインの隣に座った。レインは露骨に嫌な顔をしたが、レテシアは笑顔を向けていた。

「ここの食事はおいしいでしょう。ビッグママの料理は栄養満点で愛情がこもっているのよ。」

ジリアンやカスターはレテシアが何をこれから言おうとしているのかわかっていた。

「ええ、とてもおいしいです。ハートランド少尉。」

相変わらず、冷たいもの言いにこころが折れそうになった。

食事を終える前に、レテシアはポケットから何かを取り出して、レインに見せた。

「わたしの大事なものの一つなの。」

それは黄金の獅子に蜂が重なったエンブレムだった。

「これは何ですか。」

「皇族専用空挺部隊ホーネットのワッペンなの。」

手渡された物を手のひらで見入っていて、レインは雷雨の夢を思い出していた。

「蜂を擬人化したマークなら、覚えてますよ。」

「アナペのことね。」

「アナペ?」

「ホーネットのマスコットキャラクターのことをアナペと言っていたの。ホーネットは解散してしまったのだけれどね。」

「ホーネットはパイロットにとって憧れだったのでしょう。軍では良く知らなかったのですが、馴染みのパイロットから聞きました。」

「ええ、そう。キャスが言うように、わたしは憧れていて、ホーネットに入隊させてもらったわ。」

レテシアは、入隊したいきさつを語って聞かせた。

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