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第二十四章 傷を癒す 1

自失茫然としていた。手を強くにぎられていて、話している言葉が耳に入ってこない。

「僕の軽率な行動が、こんな悲惨なでぎごとを招いてしまったの?」

泣きながら話すジリアン。ジリアンの言葉が遠くで聞こえている感じがして、なにを言っているのかもわからない。

肩を強く抱きしめられた。

「お前たちのせいじゃない。クレアは覚悟して行動していた。お前たちがパジェロブルーに乗らなくても、同じことが起きていたんだ。」

大きな腕で囲むように抱きしめるディゴ。肩を抱きしめるその強さがわからなくて、気が遠くなっていく感じがした。

「レイン、大丈夫?」

悲しい顔を向けられて、ゆっくりとうなづくことしかできなかった。

顔を上げると、涙がこぼれた。泣いてはいけないはずなのに。涙がとめどなく出てきた。

ジリアンが左脇から抱きしめる。

「兄さんは大丈夫。何度も死ぬような目にあってきたけど、ちゃんと元気になってもどってきたんだもの。」

「ああ、わかってるよ、ジリアン・・・。」

生返事をするしかなかった。力が入らない。ただ、立っているだけが精一杯だった。

どうして、クレアさんが死んで、パジェロブルーとスカイエンジェルフィッシュ号が爆破して散ってしまったのか。


クレアが息を引き取ったあと、カスターは精神状態を錯乱させて、叫び声をあげまくった。

「うわぁーっ。」

クレアを抱きしめたまま、声が枯れるくらい叫びつづけた。

操縦室は赤いランプを点灯させ、緊急事態を報せた。

カスターは我に帰った。操縦席に行き、スイッチを押した。

「スカイエンジェルフィッシュ号はあと20分で完全破壊してしまいます。至急非難してください。」

アナウンスが流れた。とめどなく涙が出てくるものの、これから何をするべきか思考しなくてはいけなかった。

クレアのなきがらを見て、ショックを受けた。横の髪が左右の長さがちがっていたからだ。

あきらかに切った様子に、死を覚悟していたのを知った。

自分の口でクレアの髪の束をくわえ、片手でナイフを取り出して、髪を切った。

思いつくまま、切った髪をポケットの中に押し込んだ。

自分の唇をクレアの唇にあわせ、クレアの頬に涙をこぼした。

そして、操縦室の出入り口に立ち、クレアに別れを告げた。

「さようなら。そして、来世で会いましょう。クレアさん。」

急いで走り、救命胴衣やパラシュートの装備の場所まで来た。

装備には、メンバー分のものがあるはずなのに、残っているのは二人分だった。

深く考えている場合じゃないと、自分に言い聞かせ、二人分取り、ロブがいてる場所に向かった。

ロブは黒煙のしたにうずくまっていた。焼け焦げた臭いがするので、カスターは首もとの脈を取った。

「生きている。」

今は生きている状態かもしれないがと思いつつ、ロブに救命胴衣をつけた。パラシュートを付け、準備をととのえて炎の方に向かった。

SAFの後方が下に傾き、パジェロブルーの残骸が落下していく。その残骸と同じように、カスターはロブを抱えて、落下していった。

無我夢中だった。地上には雑木林が広がっていて、着地するのには丁度良かった。草木がクッションになり、無事に地上にたどり着いた。

上を見上げると、黒煙を吐き、元の形が保てないまま、飛行するSAFの姿が見えた。

そして、炎が噴出し、爆音と共に爆発し、木っ端微塵に破壊して、散っていった。

ただただ、その様子を眺めていることしかできなかった。

通信機で助けを求めると、軍が救助にきた。軍人の姿を見て、緊張の糸が切れたのかカスターはまた錯乱状態に陥り、麻酔を打たれた。


ロブは全身の3分の2を火傷して、集中治療室に入った。

レントゲン検査で肋骨が折れているのを確認され、火傷の処置と輸血を受けた。

グリーンオイル財団理事長の第六秘書のセリーヌ=マルキナが急遽、対処しに、訪れた。

クレアの死を知って、多少の動揺があるものの、レインとジリアンには気をしっかり持つようにと言ってきかせた。

集中治療室から医者が出てくると、命の危険からは抜け出せたものの、火傷の治療には時間がかかり、移送するのは難しいと伝えられた。

「一応、移送できる状態になりましたら、軍の病院ではなくて、財団研究所の病院に転移してもらいます。」

ディゴの口から、コーディのことを尋ねた。セリーヌはなにか知っている風だったが、重い口が開いても「捜索いたします。」というだけだった。

「今後のことは、落ち着いてから、話会いましょう。」

そういうと、セリーヌは足早にレインたちの前から去っていった。

病院関係者から、促されて、自分たちの病室に戻ることにした。

ディゴは病室に戻ってから、スタンドフィールドドックとガラファンドドックに連絡を入れた。

ジゼルは声を殺して泣いた。シモンはダンの実母・アニーに伝えるとだけ言った。

受話器を置いて、ディゴはため息をついた。

「レテシアにロブの状況を伝えるべきなのか。」

今までも、何も伝えはしなかった。だが、今回はグリーンエメラルダ号でレインと再会はしている。

そんな時に、靴音を鳴らして、廊下を歩く男が現れた。

テオ少佐だった。

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