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第二十章 暗闇に閃光 9

閃光は、レインたちがいた家を直撃した。

地下道では地響きがして、天井から小石がパラパラと落ちてきた。

音がいったん止むと、「急げ!」という叫び声がところどころでしていた。

ジョイスたちも立ち上がって、みんなが行く方向へ向かって走っていた。

レインとジリアンはわけがわからないままに、ジョイスについて行った。


起き上がったいたカスターだったが、爆音が轟いたので尻餅をついた。

「いったい、なにが起きたんだ。」

身構えたアルバートは、立ち上がり窓に手をついて、外をみた。

閃光が落ちたであろう場所が赤く燃え上がっていた。

レインたちがいてる場所ではないだろうかと考えていたが、下からトラックのクラクションが聞こえた。

「アル~、キャス、急いで下におりてトラックに乗ってちょうだい。」

クレアが叫んでいた。

二人は急いでとるものもとりあえず、降りた。

そして、二人はトラックの荷台に乗せられた。

運転しているのはクレアで、助手席にはウィンディが乗っていた。

荷台には、ほかに施設にいてた軍人たちが乗っていた。

「いったい、なにが起きたんですが。」

カスターが尋ねても、なにもしゃべろうとしなかった。

「話せないようなことが起きているのですか、内部事情ですか。」

「黙れ!」

カスターの言葉に我慢できないと言った風に軍人のひとりが言ったが、他の者に「よせ。」と止められた。

張り詰めた空気がトラックの荷台に漂っていた。

アルバートが上を見上げていると、また赤い筋が飛んでくるのが見えた。

「あ!」

叫んだ瞬間、さっきまでいてた施設が爆発した。

そして、荷台にいた軍人とアルバートは一斉に身構えた。

爆風が周囲を包んで、走り去るトラックにも及んだ。

身構えていなかったカスターは、爆風にまぎれた砂埃に目をやられてしまい、叫んだ。

「痛い!」

叫ぶことによって、口の中に砂が入り、喉を詰まらせた。

「ゲホッゲホッ」

トラックの荷台は砂だらけになった。


爆音は、SAFにいてたクルーたちにも聞こえた。

軍の施設から、レインたちがいる場所をみると、赤い炎があり、そこから黒煙が立ち上っていた。

「何が起きたんだ。」

SAFのそばには軍人がいたが、ロブが尋ねても答えようとしなかった。

「黙認とは、内部のトラブルか。」

軍人に聞こえないようにつぶやくと、その言葉にディゴが反応した。

「冷静にそういう事を言うなよ。レインたちがやられてるかもしれないんだぞ。」

ロブは無言で走り出し、パジェロブルーに向かった。

ディゴもあとについていき、パジェロブルーの発進の準備を始めた。

軍人は制止したが、「何が起きたか言わないのなら、現場を見に行く事を黙認するんだ!」とロブが怒鳴った。

ジョナサンがその軍人に言った。

「パジェロブルーは武器を取り付けられていない。飛んでいっても支障はないだろう。」

ジョナサンの言葉に軍人は発進許可を出した。

ロブはジョナサンの言葉に一抹の不安を覚えた。

(丸腰のパジェロブルーは攻撃されても反撃できないということじゃないか。)


赤々と燃える住居の上を飛ぶパジェロブルー、ロブは操縦席から下を見ていた。

炎から逃げ惑う人たちが見えたが、子供たちの姿は見えない。

施設にいた大勢の子供たちはこの住居一帯にいてるはずなのに、ひとりもみかけなかった。

黒煙をさけて、ロブは一台の走るトラックを発見した。

トラックに乗っていた軍人は、パジェロブルーを見つけると、ウィンディに合図を送った。

ウィンディは窓から顔を出し、上を見上げた。

「なにか飛んでいるらしいわ。」

「パジェロブルーかもしれない。後ろの二人に確認させて。」

ウィンディが軍人に伝えると、カスターは見上げることすら出来ないので、アルバートが見上げた。

「パジェロブルーだ。ロブかもしれないね。」


レインたちは、地下道を抜けて、河川敷に出た。

あたりは懐中電灯を手にした子供たちで埋め尽くされていた。

河川敷の周りは森で覆われていたが、森を少し行ったところに建屋があり、そこから、子供たちは布を持ち出した。

その布をまとい、子供たちは眠りに着こうとしていた。

それはまるで最初からこの惨事が起きる事を知っていて、用意され行動するように指示されていたかのようだった。

レインとジリアンはうろたえていたが、ジョイスたちは布を受け取らずに、建屋にあった武器を手にもった。

「見張り役なんだ。皆が寝ている間に、獣たちや侵入者に襲われないようにするために。」

しばらくすると、月明かりに影が差したので、レインは上を見上げた。

「パジェロブルーだ!」

そして、そこへトラックがやってきた。

荷台から砂だらけの軍人たちが降りてきて、運転席からクレアが出てきた。

「クレアさん!」

レインたちはクレアに飛びついた。

「無事だったな。良かった。」

クレアがレインたちを抱き寄せると、後方でカスターが言った。

「無事じゃないですよ、ゲホッゲホッ。」

パジェロブルーが降りてくる様子をみて、ジリアンはクレアに尋ねた。

「何が起きたんですか。」

クレアはしばらく黙っていた。

周囲にいている者は、クレアが次に口にする言葉を待っていた。

「赤い閃光。グリーンオイル財団研究所で開発されたレッドオイルの爆弾なのさ。」

軍人たちは、とうとう言ってしまったという感じでクレアの様子をあきれて見ていた。

「研究所が攻撃してきたのですか。」

レインが言うと、ジリアンが肘で衝いた。

「軍だろう。派閥が出来ていて、牽制けんせいし合っている話を聞いていたんだ。

シヴェジリアンドの軍の施設は、皇帝とは反する勢力に属しているので狙われた。」

「だったら、軍の施設にあるSAFが危険じゃないですか。」

カスターが目をこすりながら、言った。

「軍の施設は狙わない。大義名分がないからね。診療所を狙ったのよ。」

ウィンディが言うと、ジョイスが駆け寄ってきて言った。

「違う。ジリアンたちが狙われたんだ。」

周囲の人たちがジョイスの方へ一斉に向いた。

ジリアンはうつむいた。

パジェロブルーを子供たちから遠ざかって河川敷に着陸させたロブがそこにあらわれた。

「無事だったか。」

レインたちの姿をみつけて、そういったが、命を狙われたことはまだ、知らなかった。

知ることで、暗闇に赤い閃光が走るさまが、ロブのこころに起きることとなった。

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