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グリーンオイルストーリー ~空の少年たち~  作者: 久川智子
第三章 ロブ=スタンドフィールド
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第三章  ロブ=スタンドフィールド 1

登場人物


レイン=スタンドフィールド(主人公)

ジリアン=スタンドフィールド(主人公の弟)

ロブ=スタンドフィールド(主人公の兄)

カスター=ペドロ(スタンドフィールド・ドックのクルーでメインは通信士)


マーク=テレンス(タイディン診療所の医者)

ミランダ=テレンス(マークの妻・診療所の看護士と医療事務員)

ダン=ポーター(前タイディン診療所の医者)

クレア=ポーター(ダンの養女・医者)


フレッド=スタンドフィールド(主人公の長兄)

ディゴ (スタンドフィールド・ドックのクルーで板金工)

ジゼル(スタンドフィールド・ドックのクルーで食堂担当。ディゴの妻)

タイディン診療所は小高い丘の上にぽつんとある。

テントウムシを着地させるに十分な広場はある。

前方のライトを照らし、診療所をぐるりと回ってみせたあと、着地した。

ロブは先に運転席から出て、レインの方にまわって、シートベルトをはずしてやった。

建物から、中年の男性が出てきた。

「よう、ロブ、待ってたぜ。」

「こんばんわ、テレンス先生、夜分にすみません。」

「こんばんわ、先生。」

「連絡もらって心配したぞ。暴漢にでも襲われたってな、レイニー。」

「ええ、まぁ。」

「中に入ってから診察するよ。まだ、夜間診療時間内だ。」


タイディン診療所はマーク=テレンスが医者として、妻のミランダが看護士と医療事務を兼ねて夫婦でなりたっていた。

レントゲンをとって、骨の様子を所見されると、治療をされ、、レインは右腕を石膏で固められた。

「2,3日、様子をみよう。レインはここで預かるということで、入院してもらおう。」

「え。僕、ドックに帰れないんですか。」

「石膏が固まるまで、ここにいたほうがいいってことだ。」

ロブはそういって立ち上がった。

「下手に動いて、石膏が砕けてしまったら、骨がまたおかしくなるだろう。」

マークは、ミランダを手招きして、入院の準備をさせた。

ミランダはレインを診察室から連れ出した。

「ロブ、お前に話があるんだがな。」

マークにそういわれて、ロブはいすに座りなおした。

「何ですか、先生。」

「お前、クレアがどこにいてるか知らないか。」

「唐突に何ですか。俺は知らないですよ。」

「お前たち、そういう仲だっただろうよ。」

「え?!違いますよ。そんなわけがない。全然違いますよ、テレンス先生。」

ロブは赤い顔して、膝の上にある両手を握り締めて下を向いて、首を振った。

「クレア・ポーターがお前とふたり、エア・ジェットを乗り回してあっちこっちと医療行為しているって話は有名だったろう。」

「それは、頼まれて運び屋をしていたまでで、クレア先生を運んでいたというか。」

「命がけの飛行で、そこまでやるかって話で、うわさはもちきりだったらしいぞ。」

「誰がそんな話をするんですか。」

ロブは眉間にしわをよせて、ドックのクルーたちだと予想した。

「医療行為を目撃した人間だな。」

「いっぱい、いてわかりません!」

「口々にいう人間は不特定多数だ。」

「先生、話を本題にもどしましょう。クレア先生がどうかしたんですか。」

ロブをからかってしまっていることに気がついたマークは少し考えて、話を始めた。

「お前さんは、ダン・ポーターが悲惨な死をしたのを知っているな。」

「ええ、この診療所で、そのぉ、みせしめのように荒らされようで、人の恨みを買うような人ではないのに・・・。」

ロブは目を泳がせてしどろもどろに答えた。

マークは、ロブの様子を察してそれとなくわからない風に話していた。

「ダンの話をききたいと、わけのわからない連中がきてな。根掘り葉掘りと質問してきた。

胡散臭いんで、知らないわからないと、にべもなく答えて、とっと帰ってもらった。

そいつらは、話のなかで『クレアのほかに養子がいないか。』と聞いてきたんだ。」

ロブは、眉をひそめた。こころあたりがあるのだろうとマークは深読みした。

「ダン先生には、奥さんがいたという話は聞いたことはあったけど、それもクレア先生を養子にする前に別れたという話だし。俺は知りませんよ、その話。」

「そうか。ダンの別れた嫁さんはうちのミランダと今も交流があるので、聞いてみたが、クレアの話すら知らなかったくらいだからな。それに、その嫁さんにもその連中が尋ねてきたらしいから。」

二人は腕組みをして考え込むように話をしていた。

「それから、数日後に、また変な連中がきたなとおもったら、今度は『クレア先生の連絡方法を知りませんか。』とたずねてきたんだ。」

見当もつかないと言った感じで、話をきくロブ。

「数日前の連中といい、気になったから、どういう用件か問い詰めたら、そいつらは自分たちの素性を明かしたんだ。」

ロブは腕組みをといて、話を聴く姿勢をあらためた。

「グリーンオイル財団と名乗ったんだ。」


ロブが診療室から出ると、受付で病院着のレインが立っていた。

「兄さん、ごめんなさい。」

「なんだよ、いきなり。」

「僕、冷静な判断が出来なくて、川を渡ってしまった。」

「自分のことがわかるようになったのなら、それでいいさ。お前たちは無事だったんだから。」

「でも、考えたら、僕がエアバイクを転倒させて、川に落ちたら、僕たちふたりとも・・・。」

「終われ良ければ全て良しとしよう。」

そういって、ロブはレインの頭を撫でた。

「治ったら、喧嘩の練習しようか。昔よくフレッドやディゴに相手してもらって、組み手とかしたんだ。

ジリアンは筋力がついてきてからで、キャスと3人でやろう。」

「え、キャスと?」

「ああ、あいつは退役軍人だから、護身用は訓練受けてるはずだ。組み手ぐらいは出来るだろう。」

「ああ、そうか、キャスは軍人だったんだ。」

レインはホーネットクルーのことを考えていた。キャスに聞けばなにかわかるかもしれないと。

「俺は、レインが兄らしくジリアンを無傷で守ったことに安心したよ。」

その言葉にレインの目から涙がこぼれた。

「一人にされるのが嫌で泣いてる子供みたいだぞ。」

マークが言うと、ミランダがレインの後ろに立っていて、小刻みに首を振った。

レインが涙を拭くと、顔の傷に当たった。

「痛い。」

「綺麗な顔が台無しだな。」

「女じゃないから、大丈夫ですよ、先生。」

「お前の顔も、台無しだな。顔に傷で作ったら、モテなくなるとか。」

「あなた、そこまでにしてちょうだい。」

気が気でないミランダは怒った顔でマークをたしなめた。

「レイン、おとなくして早く治るようにするんだ。」

「うん。」

「ミランダさん、お世話かけますが、よろしくお願いします。」

「ええ、責任をもって、レイニーを預からせもらうわ。」

「先生、明日、キャスを様子みに来させますから。」

「お前の女房みたいだな、キャスは。」

「あはは、やめてくださいよ。」

「あなた。」

ミランダはマークのそばに行って、肩をたたいた。

「これで失礼しますよ。」

ロブがそういうと、レインが声をかけた。

「兄さん。ジゼルが、兄さんの晩御飯を持っていくようにって、シートボックスに入ってるから。」

「ああ、わかったよ。」


月明かりを浴びて、ロブが乗るテントウムシが飛んでいく。

右手で操縦桿をにぎり、左手でハンバーガーを持って食べていた。

「やっぱり、口で言ってもきかないよな。痛い目に合わないとだめなんだな。」

ロブはそうつぶやいた。

BGM:「ひとりごと」BUMP OF CHICKEN


注記:

テントウムシとは、エアバイクのデカイ機体という感じで、半円形上の姿形で空を飛ぶ様子から、「テントウムシ」と呼ばれている。

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