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Face of the Surface (小説版)  作者: 悟飯 粒
鏡にキスを編
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まぁイリナだもんなぁ……

 重役とは勇者領における最上位役職である。平均年齢は50歳。年齢から分かる通り、数々の功績を残し歴史的な偉業を成し遂げた者にしかその役職に就くことはできないのだ。豊富な経験と比肩するものがないほどの頭脳を認められ、彼らは勇者領の各機関のトップに在籍する。


 また彼らには得意分野があり、飯田狩虎が倒そうとしているラグエルは財政分野が得意だ。勇者領は長年にわたる戦争により財政は毎年赤字だったのだが、ラグエルが経済省に就任してからは毎年黒字へと好転。今まで流れていた国債の半分を回収し、さらには軍事力を上げることに繋がった。


 人々はラグエルを経済の天才と呼ぶ。だからまぁ、兵法とかには疎そうだからなんとかなるんじゃない?と俺は思い、特に何も考えずに奇襲をかけようとしたら………


 「逆になーんで奇襲かけられてんの」


 俺とイリナは街の中を走って逃げ回っていた。ラグエルがよく滞在している街に乗り込んだ途端、大量の勇者からの襲撃を受けてしまった。これはあれだね、奇襲がバレてたね。


 「相手が賢かったってことだろ」


 おかしいな、イグノーヴァさんには[飯田狩虎を殺した]と報告してもらってたのに…………会話の中から異変を察知したのだろうか。兵法に疎かろうと地頭がよければ、戦闘における根幹部分を理解し最適な戦法をとることはできる。…………もしかしたら知らない方が逆にいいのかもしれない。常に最適解をだせるのならば、テンプレや定石と呼ばれるものは思考の邪魔にしかならないのかもしれないな。


 「流石は重役だな」

 「そうやってまーた褒めるんだから。君を拒絶している1番の敵なんだからさぁ………」

 「正しいんだからしょうがないだろ?正しいことを否定するなんて馬鹿げている」


 正直な話、相手を倒すだけならイリナが1人で暴れるだけで全てが解決する。いくら勇者が束になってもイリナを止めることはできないだろう。ただそれだとイリナの評判に関わるんだよなぁ。なるべく戦闘は避けたいんだけど…………


 「お待たせしましたぁ。仕事が思ったよりも長引いちゃいましたよぉ」

 「うぃーっす、黒垓君だよぉ」


 黒垓君と染島さんが白色の扉から現れた。2人とも眠たそうだ。仕事が大変だったのだろう。


 「おーー2人ともベストタイミングですよ!黒垓君!ラグエルさんのところに俺達をワープしてくれない?」

 「ラグエルって重役の?」

 「当然!」

 「はーー。まーた変なことに頭突っ込んでんすね。わかったっす、やりますよ…………あっ、無理っすねこれ」

 「黒垓君でも無理なことあるの!?」

 「魔力禁止空間にいるっぽいっすね。これじゃあオラと梅雨美の魔力じゃ干渉できないっすよぉ」


 梅雨美って………どんだけ親しくなってんだこの2人。俺はそのツッコミをグッと我慢し、現状を考える。ワープやテレパシーなどの遠距離系の魔力を嫌っているのか。倒すには直接乗り込むしかない?


 「黒垓君の魔力で敵を1人ずつ遠くに飛ばしていくか。戦うの面倒だし」

 「私は別にいいけど、そっちの方が面倒じゃない?」

 「のちのち楽でしょ、こっちの方が」


 俺達は逃げ回るのをやめ、今来た方向へと踵を返した!そして俺達を追いかけていた勇者を発見すると、そいつを持ち上げてぶん投げる!ぶん投げた先に白いの扉が出現し勇者を飲み込むとどこかに消えていった。


 「白色の扉は何個作れるんだっけ?」

 「全身入れるぐらいだと3個っすかね」

 「十分。んじゃあ全員ぶん投げるか」


 イリナが先陣をきって飛び出した!勇者最速最強であるイリナをどうにかできる者などおらず、目にも止まらぬ速さで勇者達をぶん投げ、まるで嵐に巻き込まれたみたいに人々が宙を舞って消えていく!ていうか腕力ありすぎて握ってないね。小指一本を服に引っ掛けて投げ飛ばしてるね。どうなってんの。


 「あっ、てか触らなくていいじゃんこれ」


 そんなこと言いながらイリナが腕を振り上げると竜巻が発生して勇者達を吹き飛ばしていく!これが究極の脳筋ですか。すごいねー。ストリートファイターとかの格闘ゲームの遠距離攻撃もこんな理屈なんだろうな。俺は戦っているふりをしてサボりながら、イリナの戦いっぷりに絶句していた。


 「うおぉぉおお!なめるなっ!!」


 しかし敵の1人が機械を持ちながら息巻き、炎を身に纏って突撃してくる!なのにイリナは躊躇うことなく炎に手を突っ込み、焼かれながら敵を掴むとぶん投げた!その風圧で炎が吹き飛び、現れたイリナの身体は火傷の一つもない。

 元々イリナは雷を扱うから熱への耐性がかなり高い。俺の炎があまりにも特殊すぎただけで、本来なら炎の使い手にはかなり強くでれるのだ。それに俺との戦いを経て感覚も戻ったな。…………ここからだな。


 「あれが姫崎さんが言ってた機械か。敵の魔力が強くなってる感覚あった?」

 「ごめん、弱すぎてよくわかんなかった」

 「ああうん、お前はそういうやつだ。期待はしてないから気にすんな」


 階級差を飛び越えるほどの魔力の拡張はないのか?…………どちらにしろ、今のイリナを止められるほどのものではないってことだ。さっきの炎の敵を皮切りに、機械を持つ敵がチラホラと現れ始めた。


 ビタっ!


 敵の行動を封じる魔力でもあったのか、イリナの動きが一瞬だけ止まった!しかしそれはほんの一瞬。見えない拘束を力任せに解き近くの敵へと手を伸ばすが、包囲した敵が一斉に魔力を放つ!機械によって強化された魔力がイリナを襲う!


 「鬱陶しいなぁ!」


 でもまぁ、イリナを止められるわけがないんだよなぁ。腕の一振りで魔力を全て吹き飛ばし、近くにいた敵の胸倉を掴むとそのまま疾走!包囲していた勇者達を全員捕獲しまとめて白色の扉にぶんなげた!


 「たしかに飯田君が期待しちゃうのも納得の強さですねぇ」


 一緒にサボっていた染島さんがイリナを見ながらテレパシーをしてきた。でしょでしょ?第二類勇者の中でもぶっちぎりの天才ですよ。と俺もテレパシーを送って前を向く。………ん?


 「イリナ気をつけろ!」

 「ふん!」


 いままでよりもさらに大きい、右腕に装着された機械から放たれた魔力とイリナのパンチがぶつかり、イリナの腕が弾き飛ばされた!


 「ふっふっふっ!いかにイリナと言えど強化されたこの魔導兵器の敵ではない!」


 そしてもう1発!敵が機械から魔力を放出!しかしイリナはそれをぶん殴り木っ端微塵に打ち砕いた!


 「その通り!そんなおもちゃが私の敵になるわけがない!」


 イリナを倒す為に乱射される魔力。でもイリナは走りながらそれらを全てぶん殴りかき消すと、右腕の機械を殴って破壊して白色の扉にぶん投げた!

 まぁ、イリナが相手だとこうなっちゃうよなぁ。しかしあの機械………大きくなればなるほど魔力を強化できるようだ。手加減していたイリナのパンチと相打ちできるなんて………あれ以上大きな機械が出てきたら流石のイリナもキツいか?


 「よっしゃあイリナ。全員倒したら俺らのこと呼んで。大富豪して遊んでるから」

 「なんで私にだけ働かせて遊ぼうとしてんのさ!3人で大富豪しても楽しくないんだからやめなよ!私を手伝ってよ!」

 「いや2人でだよ。黒垓君はイリナの動きにあわせて魔力使わなきゃいけないからさ」

 「2人ならなおのこと大富豪は無理でしょ!スピードでもしてなよ!じゃなくて私を手伝ってよ!」

 「運動神経ないからスピード好きじゃないんだよなぁ。でも勧められて無碍にするわけにもいかないしなぁ………しょうがない、スピードで遊ぶか」

 「遊ぶかじゃないわアホ!」


 地面に座ってポーチからトランプを出そうとしたらイリナに後頭部を蹴られる!のほぉ!?後頭部への攻撃とか禁止だからやめろマジで!死んじゃうだろ!


 シュァアンン!!


 さっきまでイリナが立っていた場所に光が降り注いだ。光が消えると、その地面にはポッカリと穴が空いていた。半径50mぐらいの大穴だ。


 「……………」

 「……………遊んでる暇はないぞイリナ!逃げるぞ!」

 「まるで私が遊んでたみたいな言い方するのやめてよ!」


 なんか凄まじい攻撃されたんだけど!なにこれ!?えっ!?絶対に食らったらダメなやつだよねこれ!攻撃が飛んできたであろう方向を見てみると、この街で4番目ぐらいに大きい建物が変形して大砲みたくなっていた。あっ……あれ?嫌な予感するな。その予感通りさらに大きな建物が兵器に変形していき俺達にその砲口が向けられる!そして…………放たれた!


 「もしかしてあれも!?」

 「多分な!彼らが言うには魔導兵器か!?あの大きさはかなりまずそうだよな!」


 超巨大魔導兵器の攻撃で地面や建物が消失していく!必死こいて俺達………っていうか身体能力的に劣る俺が命からがらかわしているわけだが、あれはまずいなぁ!


 「というかよくあんな物騒なもの使おうと思ったね!仲間にも当たっちゃうでしょ!」

 「俺達の戦い方を予測してたんだろ!」


 仲間を犠牲にしてもいいと考えている可能性もあるにはあるが…………ないな。もしその作戦に失敗したら味方からの信用を失って更に立場が悪くなる。俺達が勇者を離脱させると予め予測していたと考えるべきだ。くぅーーっ!頭いいねぇ!


 「とにかくあの兵器をどうにかしよう!攻撃をかい潜りながら近づいてぶっ壊すか!?」

 「いや!もっといい方法があるよ!」


 そういうとイリナは雷を纏って空高く跳び上がった!目指すは魔導兵器の砲塔一直線!もちろんただでやられるつもりもない敵はイリナを撃ち落とす為に極太の光のレーザーを発射!それをぶん殴ろうとでもしているのかイリナは右拳を振るうと、その先から雷で出来た巨大な龍が現れレーザーにかぶりつく!レーザーと竜の衝突で破壊の光があちこちに飛んで建物を破壊していく!


 「ゴォォォオオオオアアアアア!!!!」


 レーザー 対 雷龍の衝突は雷龍の勝利で終わりレーザーを飲み干すと、そのままの勢いで魔導兵器に食らいつき破壊した!


 「…………まぁイリナだもんなぁ」


 敵の攻撃が止まった。あんなの見せられたら誰だって諦めムードになるよね。頭おかしいもん。


 「よーし!ようやく体があったまってきた!本気出しちゃうよー!」

 「やめようかイリナ。もう十分だよ」


 イリナが本気で暴れたらこの街が消えそうだな。イリナを宥めた後、俺はこの街で一番大きな施設に意識を向けた。ラグエルさんがどこにいるかは分からないが、ひとまず一番怪しい所に向かうか。

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