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Face of the Surface (小説版)  作者: 悟飯 粒
魔王との邂逅編
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俺の話を聞いてくれ!

飯田(いいだ)狩虎(かこ):主人公らしい。

・イリナ:最強の勇者。

 「どうしたんですかイリナさんこんなところで。別の依頼を受けてませんでした?」


 やっぱり間違ってたんじゃんこいつ。俺はイリナの後ろに隠れながら2人のやりとりを眺める。


 「いやーーはははっ、畑荒らしの方だとちょっと歯応えがなくてさ、こっちの危険度が高そうな方に来たんだよ!はははっ!」

 「そうだったんですね!流石イリナさん!格が違うなぁ!僕なんてこいつを倒すのに5分もかかってしまって………」

 「ま、まぁ!?私がやれば5秒も要らなかったのは間違いないね!」

 「流石イリナさん!…………それで、その後ろの方は?」


 イリナが振り返って俺の方を見た。俺も振り返ってこの住処に続く道を眺める。


 「人?…………どこにもいないですよね。俺はイリナさんの奴隷、下僕ですから人扱いされてないですし………まさか幽霊でも見えてます?」

 「君は一体いつの時代の人間なの?君だよ君。自己紹介しなよ」

 「あっ、どーもー。新人の飯田狩虎って言いますー。戦闘はからっきしで、今はイリナさんの腰巾着をやらせてもらっております!よろしくお願いしますー」


 俺は両手をスリスリと擦り付け、さらに全力でペコペコと頭を下げながら目の前の勇者さんに挨拶をする。


 「……………イリナさん?」

 「な、なにかな?」

 「こんなのをそばに置いておくんですか?危険ですよ、色々と。信用ならないし」

 「なにいきなり言うのさ!私が大丈夫だって言うんだから大丈夫なんだよ!」

 「いや!この人の言う通りだイリナ!」


 俺はイリナの背後から出ることなく大声をあげる!


 「お前はもっと懐疑心を持った方がいい!俺のこの感じのどこが大丈夫なんだ!どう見たってヘタレだし雑魚だし怪しさ満点だろ!騙されてるぞお前!」


 顔を隠しながら大声をあげる!


 「俺がお前を騙す敵だったらどうするつもりなんだ!食事の時とかに毒入れられるかもしれないぞ!世の中善人ばかりじゃないんだから怪しめ俺を!」


 あげる!!


 「…………………」

 「…………………」

 「…………………」


 俺は深呼吸をしたが、ここの臭いのキツさにむせ返り鼻と口を両手で覆った。


 「…………ひとまずここから出ようか」

 「そ、そうですね」


 魔物の住処から出た俺たちは木に寄りかかり自己紹介を改めてした。


 「サミエル・シンシュールです。階級は聖騎士長です!イリナさんに憧れて尊敬してます!」

 「飯田狩虎です。階級は分かりません。魔力もよく分かってません。この世界のこともよく分かってません。助けてください」

 「……………イリナさん?」

 「ま、まだ2日目だからね!よく分かってないのは当然のことだよ!」


 サミエルさんもようやく俺がイリナに振り回されているのだと理解してきたようだ。よかったよかった。


 「その、飯田さんの方は合意の上でイリナさんに着いてきてるんですか?もし無理矢理ならハッキリと断った方が…………」

 「断ってる!俺断ってるの!でもこの人がぁっ、イリナって人がさぁ!俺をカイかその関係者だってずっと言ってきてさぁ!」


 しかし俺のその言葉のせいでサミエルさんの態度が急変した!


 「か、カイさんの関係者なんですか!?そ、そ、それは凄いことじゃないですか!1年前のイリナとカイのコンビの再来!?」

 「頼むから聞いて!?俺はカイの関係者じゃないんだって!!無関係!!ただイリナに連れ回されてるだけ!!」

 「そうと決まればこんな所でダラダラしていたらダメだ!!すぐにでも勇者領に行ってこの情報を拡散させないと!!」

 「聞けぇぇえええ!!!!俺のはなしをっっ聞けぇぇええええ!!!!」


 ~2分後~


 「いいですか、勘違いなんですよ。俺はもう全然、カイとかよく分からないんです。ただ偶然カイと同じ水の魔力が発現して、偶然イリナとカイの記憶を持っているってだけでカイではないんです。別人!」

 「…………改めて聞くと偶然で片付けられないよね」


 昨日起きたことを簡単に説明した。


 「しかし乗りかかった船ってのもあるし、なによりもイリナが炎にトラウマを持ったまま生き続けるのを俺は見たくない。…………今の俺たちの最終目標はイリナが炎帝を倒すこと。その為に俺は自己研鑽をしてるってわけです」


 あわよくばそれを小説に書きたいってのもある。というかほとんどそっちがメインなのだけれども。


 「なるほどなるほど…………わかりました、それならば丁度いいじゃないですか」


 サミエルさんは立ち上がると、剣を引き抜いた。


 「聖騎士長の僕が貴方と戦ってあげましょう!僕なら手加減できますし、殺す心配もない!どうですかイリナさん!」

 「おーーーいいんじゃない?」


 俺は戦うのやだけどね!


ピュピュン………

 

 サミエルさんは剣を振りながら俺に近づいてくる。


 「ひとまず飯田さんがどれほどの力を持っているのか僕に見せてください。全力で構わないですよ」


 …………仕方ないか、それならば俺の全力を見せてやるしかないな!俺もまた立ち上がると、手のひらをサミエルさんに向けた!


 「くらえ!アクアスプラーッシュ!」


ぶしゃあー!


 …………あれ?なんか凄く弱いんだけど。

 蛇口につなげたホースみたいな威力で放たれた水流を、サミエルさんは剣を振るうことでいとも簡単に防ぎ、撒き散らした。


 「…………飯田さん?本気で来てください。」

 「いやいやいや!昨日の感覚でやったんですって!………なぁイリナ!昨日の俺、凄い感じに水操ってたよな!?」

 「う、うん………かなり凄かったよ」

 「………………」


 サミエルさんは剣を収めた。


 「…………よかったですね、この状態で魔物と戦わずに済んで。もし戦っていたら死んでたかもしれませんよ」


 俺もそう思う!なんでか分からないけれど昨日と同じ威力で魔力を操らないのならば勝ち筋が少なすぎる!


 「それじゃあひとまず特訓は終わりますか。この程度じゃあ勇者最弱………騎士レベルですよ。鍛錬する意味がない」

 「確かに!」

 「いや、だからこそむしろやるべきなんじゃないの?」


 イリナが腕を組んで反論する。………イリナさん?


 「私は昨日の彼を見ている。今は騎士レベルかもしれないけれど、いずれ彼は私の地位まで駆け上がれるだけの素質はある。…………騎士レベルなら這い上がればいい。そのための鍛錬でしょ」

 「………時間の無駄ですよ。どんな期待をしているか分かりませんけど、こんな後ろ向きな人間が成長できるなんて僕は思いません。それならもっと別のことに時間を使った方が……………」

 「分かった、分かったよ。OK。それじゃあ君にとびきりの譲歩をしてあげる」

 「な、なぁイリナ。俺なんかのためにそんな無理しなくても…………」

 「今からサミエルと彼が戦って、彼が勝てば彼の特訓をしてあげて」

 「………もし僕が負けたら?」

 「私が作戦に参加してあげるよ。勇者領が近々やろうとしている魔族掃討戦………ずっと無視していたけれど、いいよ、やってあげる」


 その言葉にサミエルの雰囲気が変わった。それはそうだ、魔族掃討戦なんていうのはかなり大規模な作戦だ。それにイリナが参加すれば作戦の成功率はグッと跳ね上がることになる。…………それにイリナの参加を促したということでサミエルの評価も上がり出世に繋がりうる。これはビッグチャンスなのだ。


 「…………分かりました。いいでしょう、その譲歩、利用させていただきます」


 サミエルは再度剣を引き抜いた。しかし先程とは違う雰囲気…………確実に俺を()ろうとする殺気が充満している。


 「来てください飯田さん。10秒で終わらせてあげます」


 彼の剣が怪しく光った。

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