6 お店を始めたところで
6 お店を始めたところで
「これは一体?」
オルフェオが、店いっぱいに、たった一夜にして集められた山のような武器と防具を見て呆然とした。数にして数百点はある。
「一体どこからこんなに?」
「えーと…まあそれは…いろいろ。えへへへ。」
「それにしても、この黄金の輝き…刀身に刻みこまれた古代文字。まるで伝説の剣や防具のようじゃー。」
そう言いながら、オルフェオが確かめるために剣の1つに手を伸ばそうとした。
「オルフェオさん、待って!手に取らないで!」
「なぜ?ちょっと確かめさせてもらおうと思っただけなんじゃが…」
「いいではありませんか、リリア殿。少しぐらいのことです。」
起き抜けたばかりの、まだ緑色の粘液が頭に付着したまま、爽やかに階段を降りてきたルシフェルが言った。肩には、相変わらず蜘蛛が付いていた。
リリアは、手に持っていた広報用のチラシの束で、ルシフェルの頭を思い切り叩き、肩の蜘蛛を取って全力でルシフェルの部屋へと投げ入れた。蜘蛛は繭にくっついた。
「あんたは、また繭を!繭禁止っつったろ!」
「あ、すみません。何十年かの習慣でつい…」
「いま、ルシフェル君の肩になにか大きな蜘蛛みたいなのが、くっついたていたような…」
「気のせいよ気のせい…お年のせいかしらねぇ。アハハハハ…と、とにかくここにある剣とか防具は慎重に扱わないといけないものなので…触らないようにお願いします!」
「そうかすまなかったな、何か手伝おうと思ったんじゃが。年寄りは邪魔じゃな。」
「い…いいええ、決してそういうことではなく…」
「すまんすまん、年寄りがでしゃばってはいかんな…ハハハハハ。」
オルフェオは笑って出て行った。
「リリア殿…」
「何?」
「ちょっとひどいのでは?あれではオルフェオ殿の立つ瀬がないのでは?」
あんたがいうなーーー!!!
「あれ、この武器防具屋…珍しく開いてるぞ。」
「あーここな。確か3年前ぐらいから閉まってた気がするんだが…」
「たかが街の武器と防具屋にそんなにいいものは置いてないと思うが。」
「まあ暇つぶし程度に、冷やかしで覗いて行くかー」
10分後ー
「え、ええええーーーー!!!」
「こここ、これ、全部。伝説の武器と防具じゃないですか!」
「しししし、しかも…出土したダンジョンの地図までついている!」
「それに見ろ!このほとんどがまだ発見されていない隠しダンジョンの在り方じゃないか!」
「だとしても、この値段設定…」
「安すぎるうーーーーーー」
人が人を呼び、店の中は初日だがごった返した。
だが…
「ルシフェル…」
「なんですか、リリア殿。たくさんお客が来て良かったですね。」
「ちっがーう!誰も買わないじゃない!やっぱり偽物だとばれてるんじゃない?だから、嫌だったのに…」
「おかしいですね、別にこれまで人間に提供してきたものと何ら変わらないものなのですが…」
「でも買われなきゃ一緒よ!」
「じゃあ値段を下げますか…」
ルシフェルは、あらためて張り紙を作り、全ての商品をレジにて全品半額にする、という内容で張り出した。店内はさらにどよめき、ヒートアップした。
「ちょっとあんた!」
「わたしのことでしょうか?」
「そうだよ、あんちゃん!」
「なんでございましょうお客様。」
ルシフェルが軽快に、呼びかけられた冒険者の男に返した。
「あんた、なんぼなんでもやりすぎだ!」
「あっ、高すぎました?ではもう少し…」
「いいいいや!そうじゃねえ!逆だよ逆!どうしてこんな貴重なものを、こんな金額で売れるんだ?」
「どうしてもと言われましても…あえて言うなら、弊社の企業秘密、特別のルートから産地直送いたしてまして!」
「産地直送?変な言い回しだが…それにこの隠しダンジョンの地図まで。なんでそんな誰も知らないような情報も知ってるんだ?」
「それは…作った当事者…」
「おっとととと、地図を作ったのはこの店の当事者の私たちですが、その情報は勇者から聞いたものですので。」
もがもがと言いかけているルシフェルの口を塞いで、リリアが代わりに説明した。
「おーー勇者リリア・ムーンルージュが?」
「でもどうも信憑性がない。」
「だが本物としたらすごいことだが…」
「ここか!」
大声の主の方を全員が一斉に注視した。
誰かがギルドのスタッフを呼んだようだ。そして、衛士も3人連れて店の玄関前で立っている。
「ここか!伝説の武器と防具と偽って…しかも隠しダンジョンの地図まで合わせて、とんでもない低価格で大量に販売しているという悪質な店は!店の主、一体どこにいる?事情を聴取したい。」
今度は一斉にルシフェルとリリアの方にへと視線が集まった。
「これは…ま、まずいことになったわね。どうするルシフェル?」
「ふっ…」
ルシフェルが少し笑った。
「ルシフェルあなたね、この大変な時に!」
「いやいや大丈夫ご心配なく…もうスグですよ。もうスグ。」
「え、なにが?」
その時だった
「大変だあーーーー!!!!」
「魔物だーーー魔物が現れたぞ!!!!」
「それもとんでもない数の大群であちこちから押し寄せてきたぞ!」
ナニーーーーー!!!!!!
全員が店の外を出て、プリマドンナの街の正門へと駆け出した。
リリアも一緒にその群衆に混じって走り出した。
本当であれば、勇者である自分が人々と街を守るために戦わなければならないと思ったためである。手元のすぐ近くにあった伝説の剣[鋼の剣]を一振り持って街の正門にやってきた。
すると、およそ数千から一万体ほどの大小様々の魔物たちの群れが押し寄せてくるのが見えた。
とても1人では勝ち目のない数だ。
「も、もうーおしまいだーーーー!」
「俺たち殺される!」
「う、うわーーーーーー!」
人々が助けを求めてパニック状態にある時、リリアは1人、魔物の群れの方へとゆっくりと歩みだした。そして、街の正門と魔物の群れの中間の位置で立ち止まり、剣を抜いて地面へと突き刺し腕組みをした。たった1人の勇者であるが、溢れ出るオーラは魔物の群れを十分圧倒した。そして、魔物の群れの進行が一斉に止まった。
「わたしは、リリア!リリア・ムーンルージュ!この王国の勇者よ!この街を守るため、一歩もこの剣より先には行かせない!命が惜しければ立ち去れ!」
「おお、勇者だ!」
「あの月の光のように金色に輝く髪は、勇者リリアだ!」
「リリアー!リリアーーーー!!!」
リリアに声援が飛ぶ。
すると、はるか上空から黒い物体が高速で飛来して、リリアの手前5メートルほどの場所に落下した。衝撃で、周りに土煙が舞い上がった。そしてしばらくするとそれが晴れて見えてくると、リリアの二倍はあろうかという大きさの黒い魔族が立っていた。
「…えーと、何してるのそこでルシフェル?」
黒い魔族は、本当の姿のルシフェル・メフィストファレスだった。
「リリア殿!少し小芝居をお願いします。とりあえずちょっとわたしと戦っていただいて、右手の方にあります、あのグレーの大岩の上に立ってください。良いですね、あとは指示に従ってください。」
「え?何、何なの?」
ルシフェルがそう言うと、大きな爪のある手で襲いかかってきた。腕にうっすらと擦り傷ができ、血が流れた。訳も分からずリリアは応戦した。確かに本気ではない戦いぶりだが、まともに受ければ怪我は免れない。リリアは剣を使いながら、爪を防いだ。
「その調子です!では!」
メフィストが後方に大きくジャンプして、リリアと距離を大きく開けた。
「聞け!人間どもよ!」
とてつもなく大きい声だった。
「わが名は魔王様直属その第一の部下…魔王軍最強の魔神メフィストファレスだ!勇者リリアよ!」
「は、はい!」
ーなんで、わたし素直に返事してるのよ?ー
「貴様よくも、人間界に存在する隠しダンジョンの500箇所を探し出し、あろうことか伝説の武器や防具の数々を持ち出すとは!さすがは勇者というところか!」
「そうか…リリアが隠しダンジョンのありかを見つけたのは本当だったんだ。」
「伝説の武器と防具はリリアが持ち帰ったのか。」
「リリア今だ、岩の上に…早く!」
「は、はい!」
ーだからなんで、わたしは?ー
ルシフェルの指示でリリアは岩の上に立った。
岩は近くに来ると、ハリボテだとわかった。
「よっ勇者。今回はうちの魔族のエキストラの数がハンパないんだ。失敗したんじゃコスパが悪い。ルシフェル様も、もう少し物分かりのいい勇者と組めばいいのに。こんなダイコン役者のお前でも、うまく役ができるよう俺が指示してやるから、失敗すんじゃねーぞ!!」
プリマドンナからは見えないように、岩の中は空洞で、ミイラのライミが待機していた。
つまりは例のアレを衆人環視の中でヤル!ということを、リリアはやっと理解した。つまりこれは、伝説の武器と防具の実演販売、そのためのエキシビションだったのだ。
次の日…
「いやあ売れた!売れましたぞリリア殿!さすがですなリリア殿!」
「あっそ…そうよね。うまくいったわね…」
最弱の勇者が率いる最強のパーティー 〜実は、仲間にした7人全員がかつて魔物の王を1度以上討伐した勇者たちだった!!そうと知らない僕は魔王を倒すため、勇者を目指すことにした
第2章48話まで掲載中です。