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5 伝説の武器と防具を作るところで

【5】 伝説の武器と防具を作るところで


「伝説の武器と防具を作りたい。ここには、まだ[あれ]が残っているかな?」

「ああ...[あれ]でございますね。承知しました。在庫があるか確認してまいります。」

ルシフェルとライミが、当たり前のように日常レベルの会話をしている。ここは、ダンジョンであるが、人間の見ている、いやすでに過去形として見ていた世界観ではなく、まさに舞台裏だった。知らぬは人間ばかりなり...

グルグルと考えを巡らしすぎて、疲れた顔をしたリリアが、ふと次なる疑問が湧いてきた。


「ルシフェル、あなた今、伝説の武器や防具を作る...とかなんとか言わなかった?」

「はい言いました、確かに。」

人間の姿をした魔族が、しれっと無表情で、まったく悪気のない態度が、逆に悪意すら感じさせるなとリリアは思った。だが、ここでくじけると意味が分からないので、めげずに追及することとした。


「ふーん。伝説の...って私の知っている定義と、ルシフェルの知っている定義との間には、もしかしてとんでもない差があるのかしら?普通、伝説の武器や防具は、とても難しくて人の手に入らないような場所にあって、作るという概念ではないんじゃなくて...」

「ふむ、そうかもしれませんな。」

カツカツとルシフェルは、部屋の中を歩いていると両の手を打った。何かを思いついたようだ。

「リリア殿に頼みたいことが。ちょっと力仕事になるのですが、リリア殿であれば大丈夫でしょう。いかがですか?」

「別に何もしてないから...いいわ。どんなこと。」

「そうですな、この隣に、ちょっとした小部屋があるのですが、そこから材料を取ってきてほしいのですが。」

「何の?」

「ですから伝説の武器と防具の...」

二人の視線はぶつかり、しばらく凝視し合ったまま固まった。


ルシフェルに指示された6本足の小さな低級魔族に、リリアは案内されついていく。

案内された場所は小部屋で、ゴゴゴと重く引きずるような石の扉が開くと、中は小さな石のブロックを積み上げられ作られた部屋になっていた。いわゆるピラミッドの玄室という場所だろうか。廊下は明るいのだが、中は暗くて、目が慣れていないので、何があるのかリリアにはわからなかった。

リリアが部屋に入り、一歩動くと...ざざっと何かが一斉に動いた。大きなものではない。だが一つや二つではない。集団である。

そして足元で、バリっと音がした。見ると、それは人の頭蓋骨であった。


イッーヤーーーー!!!!


「ルーシーフェールーーーーー!!!!うりゃぁ――――!」

リリアが高速で走ってきて、聖剣を抜いてルシフェルへと切りかかった。

ルシフェルも、やはり高速で移動してかわすと、その剣はダンジョン内の固い床に大きな亀裂を作った。砕けた石礫が周りの壁に突き刺さり、大きな石がルシフェルの顔面に飛んできたが、それをそっと握って地面に転がした。


「どうしましたリリア殿、そんなに血相を変えて?」

「あんたねー!よくも、あんなとこにわたしを行かせるなんて!わたしを殺す気か!」

ルシフェルは一旦考えこむように、額に指をあてた。

「いえ、おそらくこのダンジョン内の魔族で、リリア殿に敵うものなどおりません。何よりも魔王軍でわたしより強いものがおらず、そのわたしと互角に戦えるのは、全世界にただ1人リリア殿だけです。そのリリア殿を倒せるものなど、どこに…」

「ちっがーう!あそこにはね!いるのよ!」

ふたたびルシフェルが考え込む。

その頭の中は、ドラゴンや魔王などの姿が思い浮かんでいる。

「うーん、魔王様がいるわけないですし…ドラゴンでもおりましたか?」

「違う違う、いたのよあれが!」

「あれとは?」

「あれは…あれよ…」

「なので、あれとは?何のことで?」

「Gよ…」

「今何と?」

「もういい!言いたくない!考えただけでも気分が悪くなるわ!とにかくあそこは何なの?」

「ああ、あそこはダンジョンの外で、ここを見つけられなかった冒険者たちの遺体を、回収して安置する安置所です。それが、どうしました…か?リリア殿?」

リリアは両手を床についてうなだれた。

「なんでもない…ただ早く言って欲しかっただけ…」


2人がやり取りしていると、ライミが戻ってきた。

手には何か透明のシートを何枚か持っていた。

「メフィストファレス様、ありましたよ!…なんかありました?」


あーなんでも… ルシフェル


あるわよ!!! リリア



「ところでそれ何?」

「これですか?おってご説明します。その前に。おい、ライミ。適当な武器はここにあるか?」

「はい、これでいかがでしょう?」

ライミは一振りの鋼の剣を差し出した。ルシフェルは刃こぼれがないか念入りに確かめると、剣に少し魔力を込めた。

剣は黄金色に輝きだした。


「それ…すごい!」

リリアが驚いていると、今度は剣を地面に置いて、透明なシートから一部引き剥がした。シールのようだ。

「ま、これでいいか。どうだ?ライミよ。」

「はい、この辺りが妥当なところでしょう。」

2人はうなずくと、仕上がった黄金色の剣の刀身にそのシールを貼った。

シールは文字のようだった。

全体的に見るとその剣は、黄金色に輝くまさに伝説の武器で、いかにもラスボスさえも一撃で倒せそうなものだった。

「よし、全員を呼べ!」

「かしこまりました!」

「ど、どうするの?」

そうこうするうちに、ダンジョン内のおおよそ数百という魔物たちが集まった。

まさに圧巻である。リリアはちょっと引き気味である。


「リリア殿。」

「な、何?」

「この武器は、伝説の剣…そうですね…ソード・タケヅナ・ニウートキテです。」

「何それ?長ったらしい、ややこしい名前ね。タケヅナね、わかったわ。それでどんな感じなの?」

「この剣は相手に触れずして一気に打ち倒す、必殺の武器。数百の敵も瞬殺できる業物です。」

「そ、そんなすごい武器なの?」

「はい。でも使い方があります。」

「どんな?」

「まず剣を頭上に掲げて、わたしの言う通りに後に続けて復唱を。」

「わかったわ!伝説の武器によくある発動条件ね。でも、いいの?あなたの部下たちでしょ?全滅させちゃうのよ。」

「では…若干力を抜いて…」

「いいわ!」


2人が準備できたとなると、ライミが指を鳴らした。するとさっきまでの緩んだ空気が一瞬にして殺気立ったピリピリした緊張感の高い空気へと変貌した。そして、部屋も暗転し、まさに戦いの場になった。

「これは…本気なの?ルシフェル!」

「ええ。では、剣を掲げて…」

「こ、こう?」

「もう少し左に傾けて…ああそうです。ちょっとお待ちを。」

すると刀剣の上から剣が光を放ち最後は剣全体が黄金色に輝きだした。

「すごい…すごい力を感じるわ!ほんとに伝説の武器をあなたは作れてしまうのね?」

「…では、わたしの後に続いて…太陽と海と…」

「はい!太陽と海と…」

「空と大地の精霊よ!続けてください…」

「空と大地の精霊よ!」

「我に力を!行くぞ、タケヅナ、ダーソウ!」

「ん?変な言葉ね。まっいいか!タケヅナ、ダーソウ!」

リリアがそう言いながら、緩やかに剣を振り下ろした。すると…


う、うわーーーー

うげーーーーーーーー

し、しんだーーーーーーー!


その場の全員が倒れた。

すると隣のルシフェルも、ミイラのライミも倒れてしまった。

「え?え?どうして?ルシフェル?大丈夫、ルシフェル?しっかりして!」

必死にリリアがルシフェルを介抱すると、ルシフェルはぱかっと目を開けて、そしてむくりと起き上がった。


「よし、お前たちもういいぞ!」


あーーーーやれやれ

お疲れお疲れ


お前早いんだよ!

いやいや、あんな切れの悪い剣さばきで合わせられんだろ、下手なんだよあの勇者!


どーだった俺?

あんた最高!

今夜はこのまま…なっ?

もう馬鹿ね…


ザワザワザワザワ


「とまあ、こんなところです。」

「うーんと、どゆこと?」

「つまりは、この剣はただの鋼の剣です。」

「うんうんそれで?」

「剣にわたしが黄金色のメッキを魔法で付与します。そして、このシールを貼ります。」

「見てたからわかるよ…」

「このシールは魔族の言葉が書いてあります。内容は、剣を高く上げたら止まって動くな!振り下ろしたら思い切り倒れろ!です。」

「へっ?」

「そして、魔族のお約束で黄金に光るメッキには、これを当てろと…」

そうルシフェルが説明すると、ライミがカチカチと魔道具のスポットライトのスイッチを入れた。

「上から光を下ろすのがコツです。」『ライミ様うまいもんなーあれ』

「そして、みんなが一斉に倒れた…そういう仕組みです。」


「えーとえっと。」

「つまりは、我我が作った伝説の武器や防具には、魔族の言葉、指示の入ったシールが貼ってありまして、それに合わせて、全員がやられたフリをする。要は、魔族は勝たないように演技するので誰でも人間は、その武器を手に入れたら強くなれる、そんなアイテムが、このシリーズの特徴です。」

「わ、わからない…」

「あ、そうそう反対に読んでみて下さい。剣の名を。」

「テキトーニ、ナヅケタ、ソード、剣のこと…ウソーダ…」

「そういうことです。つまりはこれを大量に作って売れば儲けられるはずです!」


「今日は上手くいったな。」

「いやあ今日は久しぶりだったんで。でもあの合図かっこわるいですね?この勇者真剣に言っちゃって恥ずかしー。ほんとどーかと思いました、アハハハハ。」

「奥の冒険者たちの亡骸についている防具や武器を回収してくれ。どんどん伝説シリーズを作るからな。」

「わかりました。」

「ところで気をつけろよ。」

「なにがですか?」

「あそこにどうもドラゴンか何か強力な何か生物が住み着いたようだ。」

「えっそんなはないと…」

「いや、リリア殿がほんとに怖がられているぐらいだ。並ではない、気をつけよ!」

「は、はい。メフィストファレス様がおっしゃるなら…でも、この人ほんとに勇者ですかね?かなりダメダメに見えますが…演技の素質ないですね、全然。」

「そういうな…この方は勇者なのだ、演技の下手さはやむを得ん。こちらでカバーして差し上げねばな。あとはアドリブでお前たちの演技力にかかっている。」

「はい!それにしてもメフィストファレス様はお優しい、それに引き換え…」


…ラ


「何かリリア殿?小さくて聞き取れずすみません…」



テメーラ、ゼーイン、ブットバース!!!!!


できましたら拡散をお願いできましたら。頑張って書いていきます。

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