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1 あるひあるところで

1 あるひあるところで


ガキン


「受けてみろ!この聖剣を!」


ボワーーー


「ほおーさすが勇者だな!だがこの地獄の爆炎をしのげるかな!」



「辞めた!」

「えっ何何?どした?何が?」

「もう勇者辞めた!」

「辞めたっていわれましても…勇者的にそれでいいのですか?」

「あー、もーいーよ!馬鹿馬鹿しくってやってられないっつーか。煮るなり焼くなりあなたの好きにしなさい!」

「うーんと、お聞きするのですが…あなたは人間界最強の戦士、勇者リリア・ムーンルージュではないのですか?」

「そうだよ何か?恥ずかしいけど最初にそう名乗ったでしょう!」

「えーと、恥ずかしいならなぜ名乗りを?」

「だって仕方ないでしょう!王様とか大臣がそう言えと言うから!戦う時に最初に言えば、だんだん勝っていくと相手がビビるし、なんか知らないけどグッズが売れるからなんだって!」

「何の?グッズ?」

「わたしのグッズよ!リリアンとかブリリアントとか、勝手に指輪とかアクセサリーとかにされてるし!挙げ句の果てには食べ物でリリアンパンとか商品化されて…しかも印税もない。」

「そうなのですね。肖像権の侵害で訴えてみられたら?」

「あなた…人間界に詳しいのね。」

「ええ、魔王様直々に、かれこれ200年ほど前に人間界について研究して、随時報告せよと勅命をいただいていまして…」



200年前の回想から…

「よく来たルシフェル・メフィストファレス…長いからルシフェルで良いかの?それともメフィストかな?」

「恐れ多い。魔王様、わたしはどんな呼び名でも…」

「そうか、じゃあとりあえず今回はメフィスト…としておこうか。次回までに、わしがとっときのニックネームを考えてやろう!」

「はっ!ありがたき幸せ!」

魔王の玉座の側に、魔王の片腕ともいわれる側近中の側近、魔王軍大参謀のベリアル・ド・ドレイクが立っている。冷たい冷酷な視線と声で、ルシフェルに言った。

「ルシフェル・メフィストファレスよ。」

「はっ!」

「お前は先ごろ、人間の大勇者ソロモン王によって倒された数々の我が大魔族の眷属たちの血を元に、我が悪魔博士ファウストによって作られし者だ。恐らくは古今東西に比類なき、まさに最強の名を欲しいままにする魔神となって生まれ変わったのだ。魔王様に忠義を果たせよ!」

「ははっ!」


199年前のルシフェルの回想…

「おお、ルシフェルか!よく来た、お主はよく働くなあ。して戦況は?」

「はっ!伝説の戦士オルトナ、聖騎士ボートン、剣聖ギラント、大賢者エルドラド、王国第二近衛師団を壊滅させました。」

「おお、良くやったな!いずれも名のある勇者ばかりだな。それは大変だったろう!」

「いえ!全然歯ごたえのない敵でした!」

「何?」

「嘘をつくならもう少しマシな嘘をつくが良い、ルシフェル・メフィストファレスよ。」

相変わらず冷たい眼光のベリアルが言い放った。

「いえ!強い強いとお聞きしていたのですが、戦士たちはわたしの指一本で遥か彼方にそれぞれ吹き飛ばしまして、近衛師団は数が多いのでちょっとだけ時間がかかりましたが、近くの大きな川に全員放り込みました。」

「ほおーそれはすごいなあ。まったく相手にならじゃないか!これで人間界も恐れを為して早々攻めてこんじゃろう!」

「魔王様、それでは手ぬるいですぞ!良いかルシフェル・メフィストファレス。人間の特に勇者はその血筋を絶たねばいかん。子孫から勇者が誕生するからだ!!それこそが厄介!良いな、必ず止めを刺すのだ!そしてその近くに村々があれば焼き払い蹂躙せよ!魔王様の力を世に示すのだ。」

「はは!」


199年前のルシフェルの回想…

「よく来たルーシー!ルーシー聞くのじゃ!」

「はっ!」

ニックネームがいつの間にかルーシーとなっていた。

「大参謀のベリアルが、お主の評価方法を変えて以来、業績が上げられんようだが何か悩みがあるのか?」

「はっ、そのようなものは何も!わたしの努力不足です。」

「いかんいかん…そんなことでは。上司として、部下の気持ちがわからんのは良くない。わしに恥をかかせるな。ちゃんと言うてみよ!」

「それでは恐れながら。人間は弱い…とても弱い生き物です。名を馳せた勇者といっても、わたしの敵にすらなりません。」

「そ、そうか。そうなのだな。お主からしたら、そうなのかもしれん。」

魔王の脳裏に、凶悪で最強だった魔族の顔が10体以上かけ巡った。

「もし…わたしが人間全部を滅ぼしてしまったら、わたしの存在価値はあるのかと自問自答しだしたら夜も寝られなくなりまして…そうなるとつい人間を殺す気が持てないのです。それに…」

「それに、なんだ?」

「この間、人間の街を蹂躙した時に拾ったものです。」

「何だこれは?」

「人間の本、書物です。ただし、わたしが人間の言葉だったものを魔族の言葉に翻訳して転写したものです。」

「これが何だというのじゃ?」

「いえ、もしお読みいただければと。」

「そうか。ちと読んでみよう。読んだらお主の気持ちがわかるというのだな?よし、それぞれで良いとして、ベリアルにも話しておかねばな。今度は同席させよう。」

「ありがたき幸せ!魔王様にお願いがございます!」

「何だ?」

「その本には続きがありましてすぐには準備できかねますので、平にお待ちください。」

「よくわからんが…わかった。それにしても結構分厚い本だな。わしもまあまあ忙しい身。そうだな1週間…秘書に申しつたえておくゆえ、今日から1週間後に会おうぞ!そのときはベリアルも同席させる!」

「えっ?1週間?1週間も良いのですか?」

「ああ、わしは忙しいから、それでも直近の予定だ。本の続き、準備というよりも、むしろお主を大事に思うが故じゃ。よく覚えておくが良い。」

「ははっ!1週間もいただけましたら何とか!」


199年前の次の日の回想…

「ルーシー!ルーシー!よくぞ来てくれたルーシーよ!」

「魔王様、お早いお呼びで!わずかまだ1日しか経っておりませんが。それでご用件は?」

「この本の、この本の続きは?この続きはどーなる?い、いや言うな!ネタバレ禁止じゃ!」

「えっと…つまりは…」

「そうじゃ、君といつかはハッピーラブ魔法やっぱ空飛ぶホウキは2人でね!の第2巻じゃ!純な勇者ロビンとエルフのシルキーのドタバタ学園ラブコメの続きだ。」

「魔王様、そう思いましてこれに!」

「おお、それは?」

「第2巻から第4巻でございます。夕べあれから貫徹して、第4巻を書き上げました。」

「そ、そうか!でかした!おーこれこれ!おっおほん!ところで4巻か4巻で終わりなのか?」

「いえ、今のところ5巻です。今とりかかっておりました!」

「ならば、全力で書きあげよ!」

「はっ!」


199年前の次の次の次の後日の回想…

「ルーシーよく来た!何だこれは!」

「そう申されますと?」

「何重にも関係が行ったり来たり…やきもきするではないか!」

「はっそれがラブコメの王道かと!」

「そんな言葉どうでも良い!」

「とにかく続きだ!」

「はっこれに!」

「どうだ?これで終わるのか?」

「この5巻では…」

「いやいやいやいや、おまあ今言いかけたやろ!そりゃタブーってこと!あっぶねーアブねーわまったく!ネタバレ禁止じゃ!じゃが終わってしまうと淋しいような…いやハッピーエンドが良いな!」

「よし、また明日じゃ!」

秘書のハービーが横から口を挟んだ。

「魔王様、リスケが多くてスケジュールがたいへん遅れております。」

「わかったわかった!」

魔王はふたたび最初のスケジュールに来るようにルシフェルに指示した。


だが…


コンコン…ガチャ

「メフィストファレス様、夜半に申し訳ありません!」

「どうかされましたか秘書殿?」

「魔王様がすぐに来いと!あんな恐ろしいお顔をした魔王様は初めてです!大気まで震えています!」

「そうか…それでこの城も鳴動していたのか。ところでベリアル様は?」

「はい、魔王様のお怒りを感じて、今は急用と言って席を外されております。城からいないと思われます。魔王様は、とにかくメフィストファレス様にすぐ来るようにと!」

「わかりました。恐らくは自分が人間界の本などを魔王様にバカみたいに御照会したためかと…潔く処罰を受けます!」


「おお、来たか!待っておったぞ!ルーシー、いやルシフェル・メフィストファレスよ!」

言葉に威厳があり、空間全体が振動した。だがルシフェルは平気で立っている。

「ベリアルがな…」

「はい!」

「ベリアルが、お主が先日蹂躙した村にいき、村全体を焼いてしまったのだ!」

「はっ?」

「そこに…そこにハピラブの作者はおるのか!それともおらんのか!」

「ハピラブ?あー、君といつかで…のですね?」

「タイトルの略など良い…それよりも作者はあの村に住んでおるのか居らんのか?」

「ご安心くださりませ!住んではおりませぬ!作者は王都におります。原文の本には、そのように書いておりました。」

「ほー良かった!」

大気や城の振動がピタリと止まった。

「だが、あの本には続きがあるのだな?」

「はい、そうです。」

「それを入手するのだ!それと、今回と同じことを繰り返してはならん。どうしたら良い?」

「人間全部を殺さなくとも?」

「馬鹿者!人間全部を殺してはならん!特に作者はな!」

「それでは、私以外の魔族はまず人間界に魔王様の許可なく進軍しない掟をお定めくださりませ。それと、ベリアル様には魔王城以外にダンジョンをたくさん作っていただき、主だった部下の方にはそこを守って外には出ないでいただくようにします。」

「ほおそれで…」

「まずダンジョンの場所は、森の中、岩山の頂上、海の神殿、滝の裏など1つ1つを作るのに、かなり難しい場所をご指定いただいて、年月と労力が必ず必要になるようにするのです。」

「それは面白い!だがそれでも、いずれはできてしまうぞ。」

「はい、ですので、時々ダンジョンから伝説の武器や防具、お金、次のダンジョンへの地図や魔王城への道のヒントが見つかる、というようなアトラクションのスタイルにして、とにかくダンジョンをグルグルと回るようなスタンプラリー形式のようにすれば、どうしても集めたくなるのが人情かと…そしてゴールにもたどり着けない仕組みにします。」

「おお!お主、ベリアルより知恵者だな。あやつは頭は切れるが情がない。わしも時々困っておる。わしが弱ったらどうなるか…それよりもわかった。とにかくそうしよう!お主はこれから、魔王軍の中の3番の位、魔王の直下の第一の部下として独立した立場とする。人間界の調査研究をしつつ、魔族に文化をもたらすのだ!」

「はっ!ありがたき幸せ!」



「長い回想ありがとう。で?どうするの?」

「そうなのです、だから私もあなたとは、いえ人間たちとは元々戦いたくはないのです。」

「そう、わかったわ!じゃ決まりね!」

「えっ?」



「決まってんでしょ!2人でバックれますか!」






















最弱の勇者の最強のパーティー 第1章完結、第2章連載中です。

どうぞよろしくお願いいたします。

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