2ー3
「くそっくそっくそっ!」
成る程、爆破は任意の箇所に発生させることが出来るみたいだが、認識できるスピードを上回るとまともに当てることは出来ないようだ。
「これで終わりだ。」
ゼロ距離。羽交い締めにして男の自由を奪い、喉元にコンバットナイフを突きつけた。
いくら任意の箇所に爆破出来たとしてもこれだけ密着していれば迂闊には発動は出来ない。
クスリの使用者が実在したのだ。確保して情報を引き出したい。
「テ、テメェ!・・・離しやがれ!!!」
顔だけをこちらに向けて必死に抵抗する男は目が血走って、その目からは血が流れていた。
副作用か。ノーリスクなわけがない。
「抵抗をやめろ、これ以上は命を縮めるぞ」
忠告した瞬間だった。視界の下方に空気が収束していく気配。まさかこいつ!
爆発音、それは俺の腹部、男にとっては背中に発生した。この男随分無理をする。
だが、瞬時に後ろに下がった為、俺は無傷だ。
しかしこの男の背中は焼け爛れている。呼吸がこちらに聞こえてくるほど息も絶え絶えだ。
「なんで俺ばっかり・・・なんでことになんだよ・・・俺はただ幸せになりたいだけだったのに」
「誰かを犠牲にして得られる幸せなんて大したもんじゃないだろ、犠牲にして幸せを得るなら自分だけにしとけよ。」
「知ったような口聞いてんじゃねぇよ!!!」
どうすればいいってんだ。同情されたいのか、見逃されたいのか。いや、違う。こいつ自身も答えをもっていないのだ。
「あぁ、知らねぇよ。知ったところで何もしてやるつもりもないからな。幸せってなんなんだろうな、俺にはもう見つけられないものだ。」
これ以上この戦いは長引かせることは出来ない。
もう終わらせてやろう。
コンバットナイフを振り上げると男は数歩あとずさる。距離を取ろうとしているが愚策だ。
シュッと空気を切る音とともにコンバットナイフは俺の手を離れて男に向かっていく。こんな無茶苦茶な攻撃はいくら手負いの相手といえ有効ではないが、俺の場合に限っては違う。
「こんなの、当たるかよ!」
男は身構える。
「貫け《異能力 武器精製・変換・投槍》」
コンバットナイフは空中で粒子に分解され一瞬で投槍へと再構築された。
「なっ・・・!ぐぁあああああああっ!」