2ー2
俺の異能力は文字通り様々な武器を精製する力。武器の製造方法を理解することで、何もない空間から出現、消失させることが出来る。
そして今、俺の手に刃渡り20㎝のコンバットナイフが握られている。
「・・・だーはっはっはっは!なんだそりゃダッセェ!異能者かと思ってたらただナイフ出すだけかよ、手品と変わんねえな!」
「んーっ!んーーーーーーっ!!!」
男は高笑いしているが、そのせいでナイフが首筋に当たって僅かに出血している。
女性は体を硬直させて目で何かを訴えている。・・・なんとかして助けてよ!ってとこか。言われるまでもないんだが。
正直、この女性が死のうがどうでもいい、この女性が死ねば楽に捕縛できるし。
でもそれは出来ない。人質を助けろ、と。それが出来なければ手伝いは認めないというのが条件の一つだったから。
「さあ始めるか。」
勝負は一瞬だ。男のナイフが彼女の首筋に刺さり、頸動脈を傷つける一瞬先にナイフを弾くしかない。
下半身に力を溜めてその一瞬に放出。ガッとコンクリートを蹴り砕き、態勢を低くして細い路地をジグザグに高速で移動し男に接近する。
「な、なんだ?!ひっ・・・!」
接近した瞬間、コンバットナイフで男のナイフを弾き、火花とギンッ!と鈍い音とともに男のナイフは地面に転がって動きを止めた。同時に仮面も外れて男の顔と対面した。思っていたより若いな。
「あんた弱すぎ。よくそれで強盗なんてやろうと思ったな。ひったくりがいいとこだろ」
男は少し距離を取りながらこちらを睨みつけている。
人質がいるというのにナイフが弾かれたことで自衛に切り替えたのか。自由になった彼女は俺の横を通りすぎて逃げていった。
「うるさいうるさいうるさい!!!テメェに俺の何がわかんだよ!・・・無能者で学もない俺に稼げる仕事なんてなにもない!だったらあ!こんなことでもしないと金を得られないんだよぉおおお!!!」
男はポケットに手を入れて何かを取り出した。黒のカプセル・・・?
「これはなあ、無能者の俺に力を与えてくれる素晴らしいクスリだ!念の為にもう一個買っといてよかったぜ・・・!」
そう言うとカプセルを口に含み、飲み込んだ。
「おおおおおおおおおおおおおお!!!!キタキタキタキタキタキタ!!!!!」
男は頭を抱えて体を捩らせて苦しそうなのに恍惚の表情を浮かべている。
俺はこのクスリを知っている。以前に少し先輩が言っていた、無能者に異能を与えるクスリがあると!
だがそんなものはありえない、都市伝説だろうと先輩自身がそれを否定していたのに・・・
「いくぜゴルァアアアアアア!!!≪異能力 自在爆破≫」
爆破、爆破、爆破。空気が俺の周りで振動し爆破を繰り返していく。
ちっ、思わず舌打ちする。これじゃまともに進めやしないむしろ回避するだけで手一杯になりつつある。
右に左にバックステップしても爆発は追いかけてくる。
威力は大したことないが掠るだけでも火傷する程度の火力はある為無視は出来ない。
出来ないが・・・!
「こんなもん、痛くも痒くも無いんだよ!」
「っバカな!」
俺は猛スピードでジグザグに男に向かって前進する。
爆破を身に受けながらだが、火傷や出血しても致命傷にならなければ問題ない!