2ー1
「対象は中肉中背で白の半袖シャツに黒のパンツで鬼の面を被ってる。太田貴金属店から多数の金品を強奪。その後逃走、最後に目撃されたのは斎藤ビルの脇にある裏路地を入ったところを確認されている。武器はピストルとナイフを所持。盗難時に金品を盗む際、手がショーケースを通り抜けたとの情報が入ってる。気をつけろ、鐵。」
無線から聞こえてきた先輩の声に、了解と告げて目標地点へと向かう。斎藤ビルがあるところまで300mを切っているが対象が裏路地に留まる可能性は低い。
建物と建物の隙間を飛び越えながらの最短ルートであれば50mは短縮出来る。
目立つな、とは言われているがまぁ今回はしょうがないだろう。夜だし、服も黒づくめにしているし。
とりあえず言い訳を考え終わり、斎藤ビルを視界に収めたその時だった。
「いやぁあああ!離して!離して!」
女の悲鳴か・・・
裏路地から近い位置だ。対象である可能性は高いと判断し、2時の方向に進路を変えて少し走ったところで揉み合っている男女を発見した。
「てんめぇ黙りやがれクソアマ!殺すぞコラァ!」
特徴は完全に一致している。対象で間違いはないだろうが、金品を強奪している割に荷は無いに等しい。僅かに違和感は感じる。
男は片手で女性の口を塞ぎ首元にナイフを突きつけている。男はかなりの興奮状態だし女性はかなり危険だ。早急に助けなければいけないだろう。
「対象と思われる人物を発見、対処する」
俺は無線で報告した後、建物の上から男の背後に着地した。
「おい、そこのやつ。とりあえず無意味だとは思うが、武器を下ろして投降しろ。」
「どぅわぁああああっ!!!なんだテメェは!どっから出てきた!」
驚いた男はこちらを確認すると、今度は女性の背後に回り込んで首にナイフを当ててこちらを睨みつけてきた。着地するときに音を消したから驚いてるのか・・・
「最後の警告だ、武器を捨て投降しろ。異能者の犯罪は無能者よりも強く取り締められるが、降伏勧告に従えば多少だが考慮する余地も生まれる。」
「ンなこと知ってんだよ!!!それに俺は今は異能者だが無能者なんだ!もう引き返せねぇんだよ、もうあんな生活に戻るわけにいかねぇんだよッ!!!」
‘’今は異能者だが無能者なんだ‘’?何を言ってるんだこいつは。
そんなことはいい。降伏勧告をするのは守った。これで大義名分は成り立ったのだから。
「これより制圧を開始する。≪異能力 武器精製≫」