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――――――おい!生きてるか!
誰だ?誰かそこにいるのか?
――――――息してんじゃねぇか!しっかりしろ!
そうか、息してるのか俺。生きて・・・いる・・・
「おいこらガキ目を覚ませ!・・・脈はあるな。ったくなんなんだこの施設は!非人道的にも程があるぞ!」
俺は滝 英二30歳 バツイチ。この春から警察内部で組織された‘’異能力犯罪対策課‘’の警部補である。目には目を歯には歯を、異能力には異能力をということで組織されたこの組織の初出動が捕らえられている子供の救出というわけだ。
最近、異能力者の誘拐の多発し僅かな目撃情報を足掛かりにして漸くアジトを見つけたと思ったらまさか‘’研究所‘’関連とはな。運がいいやら悪いやら・・・
よっこいせ!と心で呟いて少年を背中に背負う。
歩きながら少年を見つける前のことを少し思い出す。
「一体、ここでなにがあったんだ・・・」
さっき俺がここに着いたとき、少年を中心に何か爆発でも起こったかのように部屋は崩壊していた。
彼の近くには人間が入るくらいあっただろうカプセルの残骸と何かの装置。
そして、バラバラになった惨い死体が2つ。今推測したところで意味はないだろう。生存している人間がいるのだから彼の回復を待って事情を聴くしかないか。
腕時計を見ると異能力のインターバルが丁度終わったようだ。
俺の異能力『超高速移動』は発動から5分の間文字通り超高速移動が使えるが5分のインターバルが必要になる異能力だ。
「ったく、便利なんだか不便なんだか!≪異能力 超高速移動≫」
瓦礫の山を飛び越えて元来た道を高速で戻りながら無線で生存者の確認と担当捜査エリアの終了を司令部の板柳課長に告げた。その後すぐに、捜査にあたったメンバーは引き上げの指示が出された。
俺は外に出てすぐに救出した少年を後輩に預けて板柳課長の元へと報告に向かった。
「おう、タッキーおつかれさ~ん!報告よろ~」
タッキーはやめてくれ。
まるで地元のノリの良い友達みたいな喋り方をしていて糸目なこの人が板柳 要課長である。たまに切迫した雰囲気でこれをやられるとイラっとするのだが、一度だけ本気モードの板柳課長を目にしたときには、とりあえず逆らうのはやめておこうと思わせるほどの異能力者だ。
「はい。まず潜入した施設は地上1階地下2階で地下2階の半分は牢屋になっていました。建物の様子から約1~2年しか経っていないので、仮に‘’研究所‘’関連だとしても本拠地ではないですね。保護した少年は身分証など所持していなかったので身元はわかりませんが、意識が戻り次第話を聞きたいと思います。」
「な~るほどね~最近、研究所もだいぶ力をつけてきたよな~。でもおかしいね、研究所の怪しい動きは4.5年前からあったけど余りに資金を持ちすぎている気がするんだよなあ!・・・ここだけの話、上が研究所と繋がりがあるって噂もあるんだよねぇ」
そんなバカな!と言葉が先に出そうになったが否定はしきれない。繋がりがあるとも断定はできないものの研究所が関連している事件はほぼ全てが捜査打ち切りになる異様さはあった。
「そもそも研究所の存在も明るみになってるのに、一斉捜査が行われないのも不自然ですね。」
「そなんだよね!それそれ!まあこういう犯罪行為がある一方で、異能者に必要な薬の作成方法を独占されてるせいで踏み込めないっつうのも原因なんよな~・・・ってやめとこやめとこ!これ以上は想像で話していい話じゃないわ!」
「そう、ですね・・・」
俺の返事を聞くと板柳課長は手を2回叩き話を切り上げ、所轄へ戻るための指示出しを各員にしていく。
この事件をきっかけにして世の中は変動していく。後にこの事件はネクスト・チャイルド事件と呼ばれ、歴史の小さな一つの分岐点となり、滝 英二と鐵 虎徹は世界を揺るがす事件に巻き込まれていくことになる。






