1ー2
「・・・っ冷たい」
俺は床の冷たさに目を覚ました。
横にしている体を半身だけ起こすと牢で閉じ込められ、手錠をつけられていることを理解した。
そして案の定、自分以外にも9人同じ牢屋に捕らえられていた。
彼らもきっと、同じように体を切り裂かれたのだろう。誰一人として口を開こうとせずただ震えているだけだ。
それからはまるで流れ作業のようだった。決まった時間になると食事が運ばれ、食事が終わった後は注射での投薬。投薬の後には少し時間を空けての採血その繰り返しで日々は過ぎていった。
・・・何日が経ったのだろうか、最初は何人いたのだったか8人だったか9人だったか10人だったか。
今はもう2人しか残っていない。
「わたし達死んじゃうのかなあ、きみはどう思う?」
2人きりの牢屋。いつもの投薬に続けて、最近では強制的に異能力を限界まで行使させられているので体力の消耗が激しい。以前は立ったり座ったりは出来たのに今となっては動くことさえ容易ではない。
そんな状態で彼女は声を掛けてきた。無視する事も出来るがちゃんと返答しよう。
俺には何故かそれがとても重要なものに思えた。
「わからない、死ぬまでは。」
俺が答えると彼女はそうだね、と小さく笑った。
「きみはなんて名前?わたしはね、アリサっていうの。」
彼女、アリサは喋るだけで息が切れているがそれは俺もきっと同じだろう。
「虎徹だ。」
「虎徹くんかあ、良い名前だねっ」
アリサはまた少し笑って目を閉じた。
―――――次の日
食事を取った後、俺とアリサは2人とも拘束され目隠しをされたまま大人2人組にそれぞれ運ばれた。
階段を上がり、少し歩いて何回か曲がったあと扉が開く音がした。
俺達は拘束されたままだが目隠しを外された。そしてそこにはあの男がいた。
「ようこそ!私の実験場、そして君達の最後の実験場へ!!!」
その白衣の男は最初の日、俺の体を引き裂いた男だ。
今は、高揚し手を広げて天を仰ぐようにして俺達にそう告げた。
随分印象が違う。最初に見たあの深い沼のような目ではなく爛々と輝いているように見えた。
「本当はね、君達に殺し合いをしてもらおうと思ったんだよ!結局私の目的は果たせなかった・・・しかしぃいいい!それではつまらない。だから君達に力比べをして強い方にもう片方の力をくれてやろうではないか!そうしたら、私の直属の部下としての自由をくれてやる!」
白衣の男は狂ったようにくるくると回るようにダンスした後、人が入る程のカプセルを指差した。
ありえない。異能力は原則として一つしか使えないはずで、それは子供でも知っている常識だ。
この男の言う自由も信用ならない。
「さあ、このカプセルに入り給え!カプセル内で異能力を発動させればエネルギーに変換される仕組みだ!生きたければ全力を尽くせ!」
これは結局殺し合いだ。直接手を出さないだけの殺し合い。
こんなことしたくない!アリサを殺すなんて!