第9話 全員見返してやろうと思った説
時計を見ると、今度は七時二十分になっていた。
八時には家を出るから、もうそろそろ着替えないといけない。
だから、お腹を空かせながら、ゆっくりと階段を登って行く。やがて、部屋についた。
二日目の着替えである。またも目隠しをして、服を脱いでいく。
服を纏うと、不思議と学校へ行く気になる。
俺は報復の為に、情報を集めていかないといけな
い。
……………誰に聞こうかな。
竜司にするか?
でもあいつの隣にいると心臓がうるさくてまともに顔も見れない。
何故か、あいつに顔を見せるのが恥ずかしい。
……………だったらあの幼馴染か?
そういえば、あいつの名前、聞いてなかった。聞き忘れていた。
……………ちょっと気になるな。
学校行ったら、あいつ探すか。
こうして、話を聞く相手をあの幼馴染にし、学校へと向かうのだった。
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通学路は、もう覚えた。だからその覚えたみちをただただ歩いていたら、あいつを見つけた。
…………やばいっ!
何故か竜司は、近づくと俺に気づく。だから多分、体が変わった今でも、それは変わらないだろう。
……………一人か………
話かけるなら今のうちだな。話しかけようかな、どうしようかな……………
て、おい、目的を見失うな俺!こいつはダメなんだ!胸が、苦しくなって、でも、何故か嫌じゃなくて、とにかく、ダメなんだ!
竜司の十歩後ろ、でも竜司が見える所を維持して歩き続けていた。
曲がり角に差し掛かった時、ドンッと柔らかい壁にぶつかった。
大きな、逞しい壁だった。小学校の頃とは違う、大きな体。
ギシギシと音を立てるように顔を上に向けると、ニヤリと笑った竜司の顔があった。
「お・は・よーう、香ちゃぁん?」
絶句。そして、
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
悲鳴。
俺の女の子としか思えない悲鳴が朝の住宅街にこだまする。
「い、いや、ちょっと待って!別にそんなに怖がらないで、誤解を生んじゃうから!ねぇ、その恐怖の目をやめて!」
怖がって、俺は曲がり角の角の所に隠れる。
…………びっくりして、全力で悲鳴を上げてしまった。
いや、別に嫌じゃ無いんだ!
そう言いたいけど、またもや声が出ない。
…………竜司の体、でっかかったな………
竜司の顔を見たとき、呼吸の仕方を忘れて、ただ叫んだ。
俺が竜司の事嫌いって、誤解されてしまったかな……………。
「だ、だだだだ大丈夫、だから、早く学校、行ってくれない!?」
「そ、そうか、ごめん………」
竜司はそう言ってトボトボと歩いていった。
まだドキドキが止まらない。
またもやまともに話す機会が無くなった。
別に話したく無いわけじゃないんだ。でもなんでか竜司の顔がまともに見られないんだ。
……………ごめん、竜司!
かくして、学校に着いた。
玄関まで歩いて行き、下駄箱へ着いた。昨日は気付かなかったけど、色々な人から好奇の視線で見られている。
……………ホントに、怖がられているのか。
まぁ、別に人に嫌われてようが知ったこっちゃねえがな。
下駄箱へ行くと、昨日とは違い、靴に落書きと、ゴミが沢山入って、靴から溢れ出ていた。
落書きは『死ね!』とか『キモい』だとか『学校くんな!』だとか書いてあった。
凄い、とてつもなくありがちないじめだ。こんなの漫画以外でホントにする奴いたんだ。ちょっと感動。
靴は履かずに、スタスタと歩いて行く。廊下の冷たさが直に伝わってきた。たまには、こういうものもいい。
2年4組の教室に入ると、俺の席はすぐにわかった。あからさまに目立っていた。
これまた漫画でしか見ないようなもの凄いありがちないじめだ。
花瓶が置いてあって、机の上に『死ね』やら『ブスキモい』やら書いてある。
俺の机の方を見て、端っこの方で女子が笑っている。
「クスクス、アイツきもーい、死んじゃえば良いのにー」
「なんで学校来てるのかなぁー?」
とか、聞こえてきそうである。
しかし、そんな声も何も感じないほどに、このいじめに、興奮していた。
伝説級のいじめである。このいじめを受けられてむしろ光栄なくらいだ。
「ふんふふ〜ん」
鼻歌を歌いながら花瓶と机を片付けていく。
机も、綺麗に拭いてゆく。
さっきまで嘲笑うような視線だったのが、驚きの視線に変わってゆくのがわかる。
…………よしよし、この調子この調子!
でも、やり過ぎてもダメだ。俺が考えた作戦を決行するには、香ちゃんの溜めた分の感情を全てぶちまけないといけない。
それには、俺の頭脳が必要なのだ。
作戦はこうだ。
まずは先生ごとの授業方式を集める。
次に、その授業に合わせた部分の教科書を丸暗記する。
最後に、それを授業で披露する!
これで、教科書を全部捨てた奴らは真っ青である。
あ、教科書は全部落書きして捨てられてあったんだ。
この作戦をする為の情報が必要という訳だ。
……………とりあえず、ロッカーの中の教科書だけでも覚えようかな。
そう思って、廊下に出て、ロッカーを開ける。
落書きされた教科書が、雪崩の様に落ちてきた。そして、ロッカーのなかも、びっしりと落書きされていた。
驚愕の視線が、見下しの視線に変わる。
流石の俺も、プツリと何か切れた。
…………作戦変更。即刻こいつらを見返してやる。