第7話 女の子生活1日目は疲れた説
「ちょっと待ってくれ!香、俺を信じてくれ!俺とお前の仲だろ!?」
そんな事言われましても。貴方との仲はこれが初めてですから。
香ちゃんとの仲と言われても俺香ちゃんじゃないしー。
「は?知らねぇですよ。どんな仲だろうが無防備な女の子にキスしようとするなんて怪しさ満点でしょ?」
「だからあれはキスじゃないって!」
親しき仲にも礼儀ありってわけで、キスを迫ってくる奴にどんな友情だろうが愛情だろうがあったとしても、香ちゃんに悪影響なんで捨てていきまーす。
「香ちゃんもういいじゃない。そんなことよりも、雪島 凛くん。君は確か一ノ瀬さんと小学校一緒だったよね?彼女の治癒力について知ってる事は無いかい?」
まぁ、それは俺も気になってた。キスしようとしたお詫びに教えてもらおうか。
「ええ、確かに知ってますよ。香は昔から傷の回復が常人のそれとは圧倒的に違ったんです。一度足の皮がめくれて血まみれになった事があるんですが、すぐに皮が生えてきて、あっという間に傷が修復したんです。でもなぜか、毎回香が気絶してる間でしか治らないんですよ」
うんうんそうかそうか。だから俺が貧血で気絶した時だけ回復したってのか。
って、待てよ。なんだよ、皮がめくれて血まみれになったって。
「えとー………なんだっけ?血まみれになったって、なんだっけ?」
「は?そんな事も覚えて無いのかよ。ほら、あれじゃん。えーっと……あれ?なんだっけ?」
なんだよ。覚えて無いのか?でもそんな衝撃的な状況になったら普通、忘れないと思うんだけど?
「で?一ノ瀬さんがいじめにあっている理由はなんだい?」
そうだよ。それが一番知りてぇよ。
「あぁ、それですか?それは学校中の全員が香の治癒力の高さを怖がって近づきたく無い感じなんですよ。そしてあの美人ちゃん達は、香の治癒力を使って自分のいじめの欲求を満たしてるってわけなんです。隣の学区なんだから、治癒力の噂が流れるのも早いって訳です。昔は、香が宇宙人だとか、エイリアンだとかの噂が流れて大変だったんですよ」
あぁ、そういうことか。まぁ、そうだね。俺もこんなに治癒力のある女の子が隣の小学校の時にいたら噂流れて来て怖いよなぁ。
………俺隣の学区だったのに知らなかったんですけどー。
「そうか。つまり一ノ瀬さんはこの治癒力のせいでいじめにあってたって事でいい?」
「ええ。大丈夫ですよ」
そうだよなぁ。
とりあえず今日は、帰る事になった。
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帰ってすぐ、お母さんが俺を抱きしめてきた。
「ごめんね、ごめんね、ごめんね、ごめんね。お母さんが貴方をそんな体に産んだばっかりに、貴方にそんな人生を送らせてしまった…………」
お母さんは泣きながら抱きしめてきた。
今さらながら、俺は、香ちゃんじゃ無い。だから、この人が謝っている香ちゃんも、ここにはいない。
本当に、申し訳ない気持ちに苛まれてしまう。
今だけは、強い香ちゃんでいてあげよう。
「大丈夫。私今日あった傷は全部回復したから、ね?今だけは心配しないで」
俺は今はこのお母さんを慰めるのが一番の重要事項である。
「でも、痛みはあるんでしょう?」
そう言われると、今日のあの痛みを思い出してしまう。
皮膚が抉られる感覚、筋肉が裂かれる感覚、神経が断ち切られる感覚。
思い出すだけで、吐き気がして、今にも倒れてしまいそうだ。
だけど、ここで倒れちゃいけない。この人の前だけは倒れられない。
「大丈夫、痛くなんて無い!ほら、この通り元気元気!全然大丈夫だよ。だから安心して?」
うまく喋れてるだろうか、うまく誤魔化せてるだろうか。
しっかりと香ちゃんを演じきれてるだろうか。
はっきり言って、自信は無い。だって、小学校の頃は女の子に脇目も振らず受験勉強だけを頑張ってきたんだ。あんまり関わりはなかった。
けど、俺が培った漫画の知識や少ない女の子との会話を生かして演じている。
それは、肉親には通用し無いのかもしれない。
それは、母親には通用し無いのかもしれない。
けど、元気づけることは出来る。いや、やりきってみせる。
このまま香ちゃんを演じきって、誤魔化しきって、この体を健康なまま返してみせる。
それが今の俺の最終目標。何が何でもいの一番に考えて行動すべき事。
そう思って、お母さんを慰め続けた。
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お母さんが落ち着くまで、俺はお母さんを慰め続けた。
なかなか落ち着いてくれなかったけど、やっと落ち着いてくれた。
まぁ、それだけ香ちゃんが愛されているって事だよなぁ。ちょっと羨ましいかも…………
そして、本日、一番の最難関の関門であるものの手前に来ていた。
着替えよりも難しく、トイレよりもある意味鬼畜のアレである。
いわゆる一日のラスボスである。
「…………お風呂かぁ…………」
そう、お風呂である。裸になって色々な所を触らなければいけない。
いや、色々な所って聞いてなにも想像してないぞ!?大丈夫、ホントに大丈夫だから!
しっかり目隠しして風呂に入りますよ、そりゃ。でも、目隠し風呂の方がいけない絵になる気がするけど置いといて。
制服を脱ぎ、スカートのチャックを下ろし、下着だけになる。
今は冬であるから、凄く寒かった。早く風呂に入らなくては。
ブラジャーを着けてる気がするけど気にしずホックを外し、女の子用のピッチリとしたパンツを履いている気がするけど気にしず脱ぎ、手探りでお風呂のドアを探す。
やがてドアノブが見つかり、それを開けた。
そして、かけ湯をしてお風呂に入る。
「あー。いい湯だー」
このセリフは俺が風呂に入ったら絶対言うセリフなのだが、今は声が圧倒的に高くて、何度目かの『女の子になった自覚』をした。
女の子とは何もかもが違って、声が高くて力が弱くて男が怖くて。
本当に今日は色々あったなぁ。
そして風呂から出て、シャワーで頭を洗う。
俺は髪を女子と一緒の方法で洗ってたから、たぶん、その洗い方でいいだろう。
まずはシャンプーをーーーーーーー
と、シャンプーに手を差し伸ばしたときだった。
シャワーの勢いのあるお湯が目隠しに当たって、目隠しが取れてしまった。
…………やばい!
そう思った時にはもう、手遅れだった。