第4話 女の子のいじめ怖い説
少し残酷な描写があります。
ご注意ください。
トイレに入れられて、ドアも閉められて、三人に囲まれてしまった。
「なんでアンタ日野くんとしゃべったの?」
そう聞かれた。
逆になんでしゃべっちゃいけないのかこっちが知りたいくらいだ。
「どういうこと?」
無難に、そう聞き返した。
よくよく考えれば分かることだったのかもしれない。
この返事が、彼女達をまた逆上させてしまうということが。
「は?『どういうこと?』って何?やっぱりアンタはアンタよね。そりゃそうだ。アンタだもん。アンタみたいなバカにはわかるわけないわよね」
そう言ってマドンナは俺に近付いて来る。
こうして寄られると、シャンプーだかトリートメントだかのいい匂いがして、鼻の下が伸びてしまう。
このマドンナは俺より身長が数センチ高いので、少し見下すような感じになる。
そう、ホントに見下しているのだ。
「アンタみたいなブスのザコが日野くんに近付くなってことだよ!!」
マドンナは、目を吊り上げて、そう言い放った。
今まで俺は女の子なんか可愛いから怒られても怖くない、なんて思ってたけど、そんな時の俺を殴ってやりたい。
女の子は怖くないなんて訂正。超絶怖い。
「べ、別に、い、いいじゃん、話しかけたって」
怖いけどそんなのは男のプライドで我慢してなんとか言い返す。
この状況で、彼女に言い返すなんてすべきじゃなかった。
俺は全身に大気の抵抗を感じながら、トイレの壁をめがけて飛んで行った。
背中に鈍痛を感じ、思わず「痛っつ…………」と男丸出しの声を上げてしまった。
「は?『べべべべ別にいいじゃんブスの私が日野様に話しかけさせていただいても』だって?は?アンタ調子のってんね。前もしたよね『調教』あれを一回食らってもまだ懲りないの?」
調教、だって?この女の子の調教なんて何されるか分からない。出来ることなら逃げ出したいけど、さっき勢いよく壁にぶつけられすぎたせいで体に力が入らない。
立とうにも体が痺れて動けないんだ。
「あれ貸して」
マドンナはそう言って付き人からカッターナイフを借りた。
……………カッター?まさか、あれを!?
「さあさあ、二度目の調教といきましょうかね」
マドンナは口を三日月型に開けて付き人に俺を押さえておくように指示した。
俺はガッチリと腕と脚をホールドされた。
そしてマドンナは靴下を剥ぎ取った。まだ新しい画鋲の傷が露わになった。
画鋲の傷は両足にある。マドンナは、まず、右足を見た。
そして、足に金属の質感を感じたかと思うと、気付いたときにはもう中に刺さっていた。
足の裏の中の神経全部がカッターの刃を捉えた。
筋肉を突き破る感覚と、神経を切り裂く感覚が足の裏で入り乱れ、痛みとなって脳へ伝えられる。
しかし、そんな痛みなんて序章で、しっかりと刺さるのが確認されると中をぐちゃぐちゃに掻き乱された。
足の裏の中の神経が無差別に切り裂かれ、何者かわからない痛みが脳に伝わり、全身に伝わる。
足の中の神経はほとんど切られてこの世の物とは思えない痛みが絶えず襲ってくる。
突然、手がピタリと止まった。
………………やっと終わった………
そう思ったときだった。脚の指の方目がけて刃が伸びてきた。
『自分達は被害者にならない』そう思っていた神経達も、飛び起き、たちまち切り落とされる。
さっきから、大声で叫ぼうとしているのだが、口を塞がれていて、できない。
「〜!〜〜〜〜!〜〜〜!」
足は完全なる異常事態に暴れているが、そのせいで中の神経が足の中のカッターの刃に刺さってまた暴れだす。
そんな負の連鎖だった。
「あーっはっはっはっはー!足なんてもう動かせなくさせてあげる!全部の神経を切り落として治せないようにしてあげる!!」
そう言っている彼女の右手は真っ赤に染まっている。勿論、全て余すことなく俺の血だ。
今まで、何回香ちゃんをいじめたんだろう。
今まで、何回香ちゃんを泣かせたんだろう。
今まで、何回……………
そんな事を考えていると、右足のカッターは抜き取られた。
「はぁ、はぁ、どうかしら?私に刃向かう気は失せた?」
こんな事されて、いじめが怖く無くならない女の子ばいない。
女の子ならだけど。
「ごめん、なさい、私、もう、逆らいません」
口ではそう言う。
しかし、心では、彼女への“復讐”を誓っていた。
「ふん、そうかしら。ま、今日からの所はこれで許しておいてあげる。感謝しなさい」
彼女達は、そう言ってトイレを後にした。
俺は一人トイレに取り残されていた。もうとっくに朝のHRは始まっている。
俺は、足の血を滴らせながら教室へ向かった。
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教室へ入ると、もう先生がいて、俺の足をみて、
「次からは遅れ無いように」
とだけ言って、俺を席に行くように促した。
「床は後で自分で拭いておけ」
と、冷たい一言も発された。
「……………ど、どうして」
俺はそれだけしか言えなかった。
なんで足の血をみて、平気でいれるのか、なんで大人の癖にいじめを見過ごすのか、なんで俺を見捨ててしまうのか、意味がわからなかった。
「早く!」
そう言い、俺を突き飛ばした。
俺は勢いよく倒れ、血だまりを床につくった。
…………………なんでそんな事出来るんだよ。
心の中で抗議するのが精一杯で、声には出せないし、出さない。
「その床も掃除しておくように」
先生はそう言い放った。
俺は一つだけ空いていた席に座り、吐き気と頭痛とともに、意識を手放した。
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