第1話 俺入れ替わりした説
この作品は、初めての投稿作品です。温かい目でご閲覧ください。
一話3分で読めるくらいの少しずつの進行です。
… 俺は、劇的な出会いが欲しかった。少女マンガが好きなわけじゃないけれど、『曲がり角でぶつかった女の子と恋に落ちる』みたいな。
どんなのでも良かったんだ。劇的ならば、どんなのでも一向に構わない。心踊る恋愛ができればそれでよかった。
第一、俺がしたいのは運命的な恋愛なのだ。運命に身を任せ、結末がハッピーでもアンハッピーでも、なんでもよかった。
“心が通じ合えれば”良かった。俺はずっとそう思ってたんだ。それこそ、小学校入る前くらいから。
………どんなのでも良かったはずなんだけどな………
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『俺は』って言うくらいなんだから、俺は男なんだ。なかなかオレっ娘っていないよね。てか、現実にいたら、結果腫れ物扱いされる気がする。
俺は今、なぜかピンクの壁、ピンクの棚、ピンクのパジャマ、ピンクの……に囲まれている。目が痛くなるほどのピンクだ。ピンク一年分くらいである。
状況としてはよくわからない。こんなにトリッキーな拉致監禁もなさそうだし。もしそうなのであるならば、なんだか緊張感に欠ける。
そして、この部屋の中の唯一木である机の上には小学生と思われる少女のツーショットの写真が置いてある。2人とも、眩しいほどのとびっきりの笑顔をしている。
1人の女の子は眼鏡をかけていて、もう1人は、端正な顔立ちの、可愛らしい少女。俺が同級生なら、好きになっていたかもしれない。
だがそこに俺はいない。その写真は、俺が撮ったものだというわけでもない。もちろん、何か俺に関係する写真というわけでもない。
いや、いないというわけじゃない。そうじゃないんだよ。否定はしきれないし、肯定もしきれない。
『俺じゃない俺』がそこにいるんだ。体と心が分裂して、体だけがその写真の中にいる。
……………どういう事か聞きたい?
<昨日>
もうすぐ9時になってしまうのもあって、俺は急いでいた。中学生で9時って行ったらちょい遅いよね。あたりはもう真っ暗であり、所々に点在する街灯が、夜道を不気味に照らしていた。
俺はそのとき、自転車で帰ってたんだ。
でさ?俺ん家の辺りって急な坂があるわけ。だからさ、点けると重くなるライトを点けてなかったんだ。じゃないと俺は、登りきれないから。
そして、曲がり角に差し掛かった時に、気付いた時には、体は浮いていた。俺の成長しきってない体躯は、夜の冷たい大気の中に放り出され、物を投げた時のように放物線を描いてとんだ。
そして俺の体は思いもよらない方向に飛んでいき、ギリギリ視界の端に捉えた女の子に、投げ出された体はどんどんは近づいていって、電池が切れてしまったかのように、バンッと暗転した。
その時俺、ケガする事よりも、これから起こりうるであろう恋愛ドラマに内心期待していたんだ。この女の子と、もしかしたら知り合えて、そして友達からいい感じになっていって、いずれは付き合うのでは、と。
だって、自転車同士とはいえ、劇的な出会いではあるから。俺の想像していた理想の恋では、あるから。
………………まぁ、恋愛なんて通り越してしまったのだけれど。
<現在>
……………ああ、恋愛、したかったなぁー。
今さらながら、意味ないとわかっていながら、心の中で嘆く。嘆きは喉までせり上がってきて、ため息となって出ていった。
そういえば、ぶつかった直後、俺は気絶していたはずだよな?なんで室内にいるんだ?あの女の子が運べると思えないし、どういうことだ?
まさか、本当に拉致監禁されたのか!?だとしたら犯人は……………誰?
だがそんなことは絶対にない。頭の奥底の神経がそう言っている。俺なんとなく、この現象の答えわかっていたのだから。
俺、こういう系統よ漫画とかラノベとか好きだったんだ。結構よんだし、密かに憧れもしたよ。寝る前にこんな風にならないかなぁって思いながら寝てたし、そうするとぐっすり眠れる。
驚いてないわけじゃない。むしろ、こんな非現実的な状況、夢なんじゃないかって思ってるよ。待ち望んでもいた。
だけど何度も、俺は自分に嘘ではないかと語りかけた。だけど返ってきた答えは、ノー。
俺は重い足取りで、一歩ずつ足を前に出す。俺の体はどんよりとした空気をまとっており、俺の周りの気温は2度くらい下がっていたと思う。
大怪獣になったような気持ちで姿見に近づいていく。最大まで近くまで、俺は下を向いていた。
足先が、ガラスにぶつかる。どうやら姿見にたどり着いたようだ。なら躊躇はしない。
頭をあげて、光景を目に焼き付ける。
俺の体は、ぶつかった女の子の体になっていた。
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俺は、心ここにあらず、といった感じで、部屋の中の姿見の前で立ち尽くしていた。
ただ、そんな俺も、少しおばさん臭い女の人の声で現実世界へ戻って来る。
「香ー!早くご飯食べなさいー!冷めちゃうわよー!」
香?誰のことだろうか?そう思い、自分ではありませんようにと心に祈りながら返事もしないでいると、階段を勢いよく上がってくる音がする。音がしたかと思うと、勢いよくドアが開いた。
「香?起きてるなら早く返事しなさい!それとも、具合でも悪いの?」
この部屋にきて、俺に向かって香と呼んだということは、俺の名前は香なのである。というか、この体の主の名前が、香なのである。
つまりこの人はこの香ちゃんの家族なのであるということか。
しかも口ぶりからしてお母さんだろう。声も見た目も、中学生のお母さんにしては、少し老けている。だが見た目は、姿見に映る香ちゃんに、どことなく似ていた。
ということは、だ。この女の人には、返事をすべきであると考えられる。
もし、お母さんに話しかけられて無視するなら反抗期ということになるが、この香ちゃんが反抗期かどうかなんて俺には皆目見当がつかない。
ただ、お母さんが普通に話しかけてきてる辺り、反抗期というわけでは無いような気がする。 まぁ、お母さんが『反抗期の娘に普通に接してくる親』だとしたら、まだわからないけど…………
とりあえず、普通に返事してみる。この香ちゃんの人生を俺の一存で変えるわけにはいかないからな。
「だ、大丈夫だよ、き、聞こえなかっただけだから、心配、しないで。次からは、ちゃんとするから」
声の高さにびっくりして、少々たどたどしい感じになってしまう。これでは疑われてしまわないだろうか………?
「?ふーんそう。じゃ、早く降りてらっしゃいね」
「は、はーい」
だが心配も意味なく、 大丈夫だったようだ。
ならばこの少しの時間の間に、一応、この香ちゃんという女の子の情報を出来る限り集めておこう。
一ノ瀬 香 戸間中学2年4組5番
家は、俺の学区の隣の学区で、俺の学区の人と一緒の公立中学校である。
一人称は、日記を見る限り、私。
『俺』って言わないようにしないと。
見た目は眼鏡に黒髪長髪、髪はふわふわサラサラで髪型は、ストレート。パーマも無し。
だが、見た目の暗い感じを見る限り、クラスに一人はいる『毎放課トイレ行くか移動するか読書するかしかしてないぼっちじゃないけど陰キャ』みたいな感じである。
ほとんど日記の中身の内容ではあるが、日記というのはその人の人生の歴史書みたいなものだ。この情報は、ほとんど間違いではないと思う。
そんなことを考えていると、またお母さんらしき人から声がかかる。声が少し怒り気味で、慌てて部屋を出るのであった。
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部屋を出ると、先程のピンクワンダーランドとは打って変わって、普通の家だった。白い壁、明るい印象を受ける木の階段、モデルハウスのような光景であった。
香ちゃんの感性が異常なのかもしれない。けど俺自身、女の子の部屋なんてなかなか入った事が無いから、あの部屋が異常かどうかなんてわからない。もしかしたら、香ちゃんが普通なのかもしれない。
木目調の階段を降りてリビングに近づくと、温かいご飯の香りが鼻腔をくすぐる。ドア越しなのに、いい匂いが廊下まで漂っていた。香りが全身に染み渡り、充足感に満たされる。
リビングのドアを開けようとドアノブに手をかけた時に気がつく。中から深みのある渋い声と、さっき聞いたお母さんの声と、声変わり前だけど何故か男の子だとわかる三人の声がしているのだ。
…………やばい!
全身が警戒のサイレンを鳴らす。頭の中でけたたましいサイレンが響いて、頭が痛くなるほどだ。
普通の人が見たら普通の朝ごはんの光景なのだが、俺はいま普通の状態じゃない。普通じゃあ考えられないほど、異常な状態なのだ。
この家族は、俺の家族じゃない。その事実が、不安感に満たされた俺の脳内で、ぐるぐると渦巻く。
人は多ければ多いほどバレる確率が上がる。三人ならば、三倍である。
心にバレないことを祈って、ドアノブをまわす。ドアを開けると、そこには、大柄の強面のおじさんと、お母さんと、声に合わない高身長の男の子がご飯を食べていた。
さぁ、試合開始である。耳の奥で、試合開始のゴングが鳴った気がした。
書きだめはあまりしていませんが、2、3日で更新していくつもりです!
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