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83話 ツンデレ娘の心変わり

「わぁっ……すごい綺麗だね」

「こんなに魚がいっぱい……みんなで列を作って泳いでいて、すごいわね」

「群れを作ることで、外敵から身を守っているんだね」

「外敵なんて、迎え撃てばいいじゃない。これだけいれば勝てるわ」

「無茶苦茶言うね、ほのかちゃんは……」


 翌週の土曜日。


 私とほのかちゃんは、水族館を訪れていた。


 先日の一件で、お礼がしたいって言われた。

 私は気にしないでいいよ、って言ったんだけど、ほのかちゃんは納得してくれなくて……

 それならということで、遠慮せず、私は前々から行ってみたいと思っていた水族館で遊びたい、と言った。


 そうしたら、ほのかちゃんはすぐにチケットを手配してくれて……

 そのまま一緒に水族館に行くことになった、っていうわけ。


「そういえば、橘さんを誘わなくてよかったの?」

「え? あ、いや、お姉ちゃんは、その……今日は忙しいみたい!」

「家の用事とか?」

「そうそう! 家の用事よ。朝から晩まで、びっちりスケジュールがつまっているの」

「そうなんだ。土曜日なのに、大変なんだね」


 橘さんは長女だから、色々とあるのかもしれない。


 一瞬、家のしがらみに捕らわれているのかな? なんてことを思うけれど……

 すぐに、それはないか、と考え直した。


 今の幸三さんなら、娘を不幸にするような真似はしないだろう。

 ほのかちゃんの話によると、橘さんに対して、無理に私と付き合うことはない、って言ったらしいからね。

 変われば変わるものだ。


 そして、ここにも一人、変わった人が。


「ねえねえ、葵。もうすぐイルカのショーがあるみたいだから、見に行かない?」

「……」

「どうしたの、変な顔して?」

「いやー……ほのかちゃんに名前で呼ばれるの、なんか慣れなくて」

「な、なによ……名前で呼んだらいけないの? ……ダメ?」


 ほのかちゃんは、子供のように不安そうな顔で私の様子をうかがう。

 いつも自信たっぷりで、常に前を見てきた印象があるから、こういう表情はとても新鮮だ。


「ダメじゃないよ。むしろ、うれしいかも」

「ほ、ホントっ?」

「うん。ほのかちゃんと仲良くなれた気がするから」

「そ、そうね。今回のことで、けっこう見直したから……もうちょっと、仲良くしてあげてもいいわよ? ふふんっ、特別なんだからね」

「あ、無理に仲良くしなくてもいいよ。そういうことなら、今まで通り、橘さんを巡るライバルでいようか」

「えっ、そんな……」


 あからさまに落ち込むほのかちゃん。

 ちょっと悪いけど、見ていて楽しい。


「ごめんね、冗談だから」

「そ、そうなの?」

「これからも、仲良くしてくれるとうれしいな」

「し、仕方ないわね。そこまで言われたら、助けてもらった恩もあるし、仲良くしてあげるわ」


 すぐに元気を取り戻して、ほのかちゃんはうれしそうにした。

 うーん、すごくわかりやすい子だなあ。


 やっぱり、先日の一件が効いているのかな?


 今まではツンツンしてばかりなのに……

 あれから、ずいぶんと態度が柔らかくなった。

 名前で呼んでくれるようになったし、なにかと一緒にいるようになったし……


 ほのかちゃん、デレた?


「ショーを見たら、いい時間になるわね。なにか食べましょ?」

「じゃあ、ファミレスでも行こうか」

「えっと、その……せっかくの……デート……なんだから、ファミレスはちょっと寂しいっていうか……」

「ダメ? なら、牛丼にしようか」

「ランクダウンしてるじゃない!」

「じゃあ、ハンバーガー」

「変わらないわよ!」

「フレンチフルコースで」

「急激なランクアップ!? 落差が激しすぎない!?」

「ゴチになります」

「あたしが払うの!?」

「お金足りない? なら、仕方ないなあ……念入りに準備運動をして、いつでもベストコンディションで全力で走れるようにしておいてね」

「食い逃げ前提!?」


 打てば響くというか……

 相変わらず、面白い子だなあ。


 それはさておき。


「ねえ、ほのかちゃん」

「なによ?」

「今、幸せ?」

「……そんなこと、いきなり聞かれてもよくわからないわよ」


 『ただ』と挟んでから、ほのかちゃんは言葉を続ける。


「楽しい、って……そう思うわ」

「そっか」


 ほのかちゃんは、満面の笑みを私に見せた。

 以前なら、絶対にそんな顔は見せてくれなかった。


 それが意味するところは……まあ、なんとなくわかる。


 わりと高い確率で、ほのかちゃんから好かれたんだろうなあ……

 お見合いの一件で、私、色々とやらかしちゃったんだけど……ほのかちゃんの目には、

逆に、私が大活躍したように見えたらしい。


 あの日以来、態度が大きく変わって……

 私を見る目も変わって……

 気がついたら、今みたいになっていた。


 うーん……嫌われているよりはいいんだけど、これはこれで、色々とトラブルを招きそうな予感。


「……まあ、いっか」


 とりあえず、そういうことは今は考えないようにしよう。

 ほのかちゃんが、また、楽しく笑えるようになった。今は、それで十分。


「ほら、いくわよ。葵!」

「うんっ」


 ほのかちゃんと一緒に、おもいきり遊んで……とても楽しい時間を過ごした。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

今回で、ほのかの話は終了です。3部終了?

やりたいことをやってしまったので、

次からはまとめに入ります。

もうちょっとだけお付き合いいただけるとうれしいです。

次回は、15日更新予定です。

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