70話 橘家、訪問
あっという間に時間が過ぎて、翌日になる。
私と桜は、途中で愛ちゃんと合流して、橘家に向かう。
家はわかりやすいところにあって、特に迷うことなく着いた。
「うわーっ、大きいね!」
愛ちゃんが、ぽけーっとしてしまう。
うん。その気持ち、わかるよ。
シンプルながらも、遊び心やこなれ感を感じさせるシンプルモダンな家だ。
ただ、一般的な住宅の二倍、三倍はあろうかというくらいに大きい。
塀に遮られてよく見えないけど、ボール遊びができそうなくらい広い庭も完備されている。
これ、億はくだらないんじゃあ……?
なんて、ついつい俗なことを考えてしまうくらい、すごい家だった。
「よし、葵。この家を燃やすぞ」
「いきなりなにを言っているの!?」
「こういう家を見ていると、『この金持ちめっ、爆発しろ!』って思わないか?」
「思いません!」
「一度、痛い目に合わせたほうがいい。正義の鉄槌だ」
「どう見ても私刑だから! しかも、逆恨み100%の!」
桜がライターを取り出したので、慌てて没収した。
この子、いつ侍女からテロリストに転職したんだろう?
「ぽちっとな」
愛ちゃんはマイペースに、私たちに構うことなくインターホンを鳴らしていた。
「はい、どちらさま?」
「私だよ、私!」
「私? ……私々詐欺!?」
なにそれすごい。新しい詐欺? 一発で看破されそうだね。
「えっと……もしかして、駿河先輩?」
「あったりー!」
「じゃあ、風祭も一緒?」
「うんうん。あーちゃんとさっちゃんも一緒だよ」
「はぁ。紛らわしい言い方しないでよ。一瞬、不審者かと思ったじゃない」
危ない。ほのかちゃんのことだから、下手していたら、ホントに通報されていたかも。
「中に入って。鍵は空いているわ」
「はいはーい」
愛ちゃんを先頭に、私たちは家におじゃました。
「いらっしゃいませ」
「うわーっ、中もひろーい!」
「他に言うことはないんですか、もう」
橘さんとほのかちゃんが出迎えてくれた。
二人とも、この前、お出かけした時と比べるとラフな格好をしている。外出用じゃなくて、これが二人の部屋着なのかな?
初めて見るから、ちょっと新鮮な気分だ。
「……なぜだろう? 二人はいつもと変わらないはずなのに、部屋着になると、ドキドキしてしまう。二人のプライベートに触れている、ということが影響しているのだろうか? 胸が熱くなり、この手で二人の温もりを確かめたくなる。そして私は……
「変なナレーションをしないように!」
「葵の心の声を代弁したまでだ」
「とんでもない言いがかりをされた!?」
「風祭くんなら、私はいつでもいいですよ……ぽっ」
「あんた、お姉ちゃんになにするつもり!?」
「なにもしないっ、しませんっ、できませんっ!」
「おーっ、新しい三段活用?」
……私たちは、いきなり、アクセル全開で突き進むのだった。
こんな調子で、今日は平穏に済むのかな?
……無理か。
――――――――――
一騒動ありつつも、ほのかちゃんの部屋に上がらせてもらう。
「おーっ、部屋も広いね!」
家の外観からイメージする通り、部屋も広い。20畳くらいあるんじゃないかな?
たくさんのゲーム機とゲームソフト。それと、音楽CDとDVDビデオ。
女の子らしくないって言ったら失礼だけど、でも、とてもほのかちゃんらしい部屋だ。
「綺麗に片付いているんだね」
「なによ、散らかっていると思ってたの?」
「実はちょっと」
「失礼なヤツね。あたしは、いつもちゃんと、部屋を綺麗にしているんだから」
「とか言いながら、昨日、部屋の掃除を手伝って、とお願いしてきたのはどこの誰でしたっけ?」
「お、お姉ちゃんっ!」
「ふふ。この子ったら、風祭くんたちが来るからって、一生懸命掃除していたんですよ? 普段は、もうちょっと散らかっていますね」
「そんなこと言わなくたっていいじゃない、もうっ」
なんていうか、こう……見ていて微笑ましくなるくらい、仲の良い姉妹だよね。
橘さんは優しいし、なんだかんだでほのかちゃんは良い子だし……理想的な姉妹なのかな?
二人を見ていると、私も、妹かお姉ちゃんが欲しくなる。
「まあ、部屋の掃除はともかく……自分の部屋だと思ってくつろぎなさい」
「えっと、そういうことは言わない方がいいよ?」
「なんでよ?」
「そこの二人が……」
「二人?」
ほのかちゃんが怪訝そうに振り返ると、
「おーっ、おーっ! これは、初代ファミコソ! それに、こっちは初代ゲームポーイ! すごいすごい、ソフトも一式揃っているよ! これ、オクにかけたらかなりの値がつくんじゃないかな?」
「ふむ。綺麗に整頓されているが……ベッドの下か? いや、当たり前すぎるか。ならば、本棚……辞書のカバーを偽装している可能性が高いな。どれどれ」
愛ちゃんと桜は、遠慮なく家探ししていた。
「ちょっと、なにしてんのよっ!?」
「お宝発掘」
「エロ本探索」
「そんなことしていいなんて言ってないし!」
「でも」
「くつろげと」
「二人のくつろぎ方は、他人の部屋の家探しなの!?」
「「その通り」」
「ああもうっ、この二人は!!!」
この二人を好きにさせたら、色々とまずい。特に桜。
そんな私の忠告を、身を持って経験するほのかちゃんだった。
と、その時。
「ほのか、帰っているのか?」
扉の向こうから、男の人の声が聞こえた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
話が進んでいないようで、ちょっとだけ進んでいます。
特に最後。
次回はボスが現れます。




