66話 ちぐはぐコンビ
いつも読んでいただき、ありがとうございます
日が変わり、翌日の放課後。
いつものように、みんなが集合する。
二人三脚の練習をするから、場所は空き教室じゃなくて中庭だ。
……最近、みんなで集まってなにかをすることが当たり前になっていた。
みんなと一緒に過ごす時間は楽しくて、騒がしいながらも、充実した日々が続いている。こんな日がずっと続いたらいいな、なんて思ってしまう。
「どうした、ぼーっとして」
「ううん、なんでもないよ」
「ふむ。桜には話せないことか? エロ妄想か? それとも鬼畜妄想か?」
「桜は、隙あれば私を乏しめようとするよね……」
「それが桜のアイデンティティだからな」
お願いだから、もっとマシなアイデンティティを獲得してね。
「さあ、特訓よ!」
ほのかちゃんは、やる気たっぷりだ。
まあ、自分の問題だからね。やる気も出るか。
「はい、風祭くん。これをどうぞ」
橘さんから、二人三脚で使うゴムバンドを受け取る。
二人三脚というと、ロープで足を結ぶイメージがあるけど、ウチの学校ではロープじゃなくてゴムバンドを使う。強く力を入れたら解けるようになっていて、転んだりした時に、巻き込まれて転倒するのを防ぐ役割を果たしているんだ。
今の時代、二人三脚も安全思考なんだね。
「ほのかちゃん、足をこっちに」
「ええ」
横に並んで、片足をゴムバンドで固定した。
それから、ほのかちゃんと肩を……
「な、なにすんのよっ!」
「うわわわっ!?」
肩に手を回そうとしたら、ほのかちゃんが急に暴れて……
足を繋いだ状態でそんなことをするものだから、仲良くバランスを崩して、その場に尻もちをついてしまう。
「ほのか、なにをしているんですか……?」
「だ、だって、いきなり触ろうとしてきたから……」
「二人三脚なんだから、肩を組むのは当たり前じゃない? ほのたんは、恥ずかしがり屋だねー」
「うっ……」
二人に言われて、ほのかちゃんはバツが悪そうな顔になった。
チラチラと軽くこちらを見て、小さな声で言う。
「その……悪かったわ」
「ううん、気にしないで。先に、声をかけておけばよかったね」
「あたしが悪いのに、なんでそうやって……」
「ほのかちゃん?」
「……なんでもないわ。今度は平気だから、早く準備をしましょう」
再びゴムバンドで足を固定して、そのまま肩を組む。
「んっ」
ほのかちゃんとぴったり密着した。
ほのかちゃんの体は温かくて、柔らかくて……なんていうか、触れているところが熱を持っているように、じわじわってなる。
それと、ほのかちゃんの髪が触れる。とてもサラサラしていて……あと、これはシャンプーの匂いかな? 気持ちのいい匂いがして、ついつい、もう少しこうしていたいような……
って、変なことは考えないように! これは練習なんだから!
それに、私は女の子。
女の子同士の練習で、こんなことを考えるような子はいないんだからねっ。
「どうしたの?」
「な、なんでもないよ」
「そう? ならいいけど……じゃあ、さっそく練習をしましょうか」
ほのかちゃんは、やる気たっぷりだ。
余計なことは考えないようにして、私もがんばらないと!
「がんばろうね、ほのかちゃん」
「足、引っ張るんじゃないわよ」
かくして、二人三脚の特訓が始められた。
――――――――――
……特訓をすること、約1時間。
結果は散々なものだった。
足並みが揃わなくて転ぶこと14回。
リズムが合わなくてゴムバンドが解けること23回。
私と密着することに耐えられなくなったほのかちゃんが癇癪を起こすこと5回。
そんなこんなで、まともな練習にならない。
1時間の特訓で走った距離は、たぶん、100メートルに届いていないんじゃないかな?
うん。自分で言うのもなんだけど、ひどい結果だ。ひどすぎて目もあてられない。
「ダメですね」
「ダメダメだねー」
「ダメすぎるな」
「「うっ」」
容赦のないみんなの言葉が、私とほのかちゃんの心をグサグサと抉る。
「うぅ……か、風祭! あんたのせいよっ」
「えぇっ、私のせいなの!?」
「そうよ! あんたがトロトロしてるから、何度も何度も失敗したんじゃないっ」
「そこまで言われるほどじゃないような……っていうか、ほのかちゃんが癇癪を起こしたことも悪いような……」
「そ、それは……だって、風祭が密着してくるし……」
「二人三脚はそういう競技だからね? あと、競技とか以前に、これはうまく恋人のフリができるようになるための特訓でもあるんだからね? 体が触れたくらいでアレコレ言っていたら、とてもじゃないけどうまくいかないよ」
「うううぅ……うるさいうるさいうるさーーーいっ!!!」
「逆ギレされた!?」
「風祭が悪いの! そうよっ、この世の中で起きている悪いことは、全部、風祭のせいなんだからっ」
「とんでもない言いがかりをされた!?」
失敗続きでストレスが溜まっていたんだろう。
ほのかちゃんは、子供のようにわーわーと騒いで……
私は必死になってなだめて……
で、そんな私たちを、みんなはやれやれと眺めていた。
「うーん……これ、今まで以上に前途多難な気がするよ……はあっ」
さすがの私も疲れてしまい、ついつい、ため息をこぼしてしまうのだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
気がつけば、この作品、投稿開始して二ヶ月が過ぎました。
マイペースに書いていますが、楽しんでいただけたらうれしいです。
これからもよろしくお願いします。
次の更新は11日になります。




