64話 我に秘策アリ
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
一通り、みんなの案を試してみた。
その結果は……
「むぅ……」
隣に立つと、ほのかちゃんが微妙な顔をしてしまう。
最初の頃に比べたら緩和はされているけれど、まだまだ恋人とはいえない、っていう感じかなあ? うーん、難しいね。
「そういえば、また肝心なことを聞き忘れていたんだけど、お見合いはいつなの?」
「まだ確定じゃないんだけど、一ヶ月後くらい……6月後半、ってところかしら」
「一ヶ月か……それだけあるなら、なんとかなるかな?」
ただ、無策で挑むわけにはいかない。ちゃんと計画を立てないと、無駄に時間を過ごしちゃうことになりそう。
うーん、どうしたものかな?
「ここは桜の出番だな」
「橘さん、なにか良いアイディアはない?」
「桜に良いアイディアがあるぞ」
「愛ちゃんも、何か思いついたらどんどん言ってね」
「ていっ」
「ひゃうっ!?」
バチコーンッと輪ゴムを飛ばされて、額に直撃した。
「桜を無視するな。殺すぞ」
「物騒極まりない!?」
「言い間違えた。地獄に叩き落とすぞ」
「それ意味変わらないよね!?」
桜をからかうと10倍……ううん、100倍の勢いで仕返しをされるから、気をつけた方がいいかも。
普段、私のことはからかうくせに、自分のことになると腹を立てるんだから。わがままな子だよね。まったく。
「それで、桜のアイディアって?」
「亀甲縛りでSMプレイをしろ」
「桜の頭を縛ってあげようか? 少しはマシになるかもよ?」
「冗談だ。こんな話を真に受けるなんて、葵は心に余裕がないな」
桜だから本気にしたんだけどね……
「もうすぐ体育祭があるだろう?」
ウチの学校は、6月の半ばに体育祭が開催されるんだよね。
昔は、スポーツの秋ということで、9月や10月に開催されていたみたいだけど……
秋は他に学園祭もあるし、三年生は受験で忙しくなるし……ということで、いつからか6月に開催されるようになったみたい。
ちなみに、今は6月の初めだから、あと10日ほどだ。
その後は中間試験が控えていて……うーん、これから忙しくなりそう。
「体育祭がどうかしたの?」
「確か、ウチのクラスと橘妹のクラスは、同じ赤組だろう?」
「そうね。お姉ちゃんと一緒なのはうれしいけど、風祭と一緒なのは微妙ね」
ほのかちゃん、欲望に正直。
あと、そういう態度をとるから、恋人のフリがうまくいかないと思うんだけど。もうちょっと、なんとかしてみようね?
「組対抗で、学年の枠を越えて行われる、赤組白組対抗、二人三脚障害物レースを知っているか?」
「なにそれ? 障害物、って……普通の二人三脚じゃないの?」
一年で、今年初めてウチの学校の体育祭に参加するほのかちゃんは、不思議そうな顔をした。
転校生組の橘さんと愛ちゃんも、同じような顔をしている。
「ウチの名物競技だよ。その名前の通り、二人三脚と障害物レースを合体させたものかな。ただ、けっこうガチで作り込んでいて、毎年、怪我人だけじゃなくて、行方不明者が出るとかなんとか……」
「行方不明!? それ、普通に事件じゃない!?」
「校庭にある校長先生の銅像は、行方不明者の魂を慰めるために建てられたんだ」
「あんなもので慰められるの!?」
「まあ、冗談だけどね」
「わかってるわよ」
「えっ!?」
「なによっ、その『あたしなら信じていたに違いない』っていうような顔は!?」
「ほのかちゃんだし」
「よし、殴るわ。あたし、今から風祭が泣くまで殴るのをやめないわ」
ほのかちゃんの目が座る。まずい、さすがにからかいすぎた。
「お、落ち着いて。冗談だから」
「むぅ……」
「まあ、わりと本格的な競技があるんだ。ほら、テレビでたまにやっている、高難易度のアスレチックコースを制覇する番組、あるじゃない? あれの二人三脚バージョン、って思ってもらえたら」
「おー。そう言われると、なんとなく想像できるかも」
「ですね。私も、頭の中でビジョンが思い浮かびました」
愛ちゃんと橘さんは、ある程度想像できたらしく、うんうんと頷いた。
ほのかちゃんは、さらにその先の展開まで予想できたらしく、微妙な顔をする。
「もしかして……あたしと風祭で、その競技に出ろ……って?」
「うむ、正解だ。橘妹にしては察しがいいな、褒めてやろう」
「上から目線すぎて、褒められている気がぜんぜんしないわ……」
うーん……私とほのかちゃんで、二人三脚障害物レースに出場か……
桜にしては、良いアイディアかもしれない。
二人三脚なら、二人の息を合わせるのにぴったりだ。練習を重ねて重ねて……うまくいけば、本番で抜群のコンビネーションを発揮できるかもしれない。
そんなレベルに達することができたなら、恋人のフリもきっとうまくいくに違いない。
「みんなはどう思う? 私は賛成なんだけど」
「そうですね……二人三脚ということは、当然、肩を組むわけですよね?」
「うん、そうなるかな?」
「なら却下です」
「えぇ!?」
「風祭くんと肩を組むなんて、そんなうらやましいこと、許せませんっ」
「もはや本音を隠そうともしない!?」
日に日に、橘さんが欲望に忠実になっていくような……?
誰の影響かな? 桜かな? 私じゃないよね?
「駿河さんも、許せないでしょう? 風祭くんと肩を組んで密着するなんて、見逃せないでしょう?」
「ん? 私は別にいいよー」
意外な返事が返ってきた。
自分で言うのもなんだけど、愛ちゃんもやだやだー、って言うと思ってたんだけど。
「私は器の広い良い女だからね。ちょっとした火遊びくらい許してあげるよ。最終的に、私のところに戻ってくればいいの」
「懐が広い!」
「まあ、本当に火遊びをしたら、二度と外に出してあげないんだけどね。一生、檻の中で飼ってあげる……うふ、うふふふ」
「本当はとんでもなく狭かった! というか、病んでいる!?」
「冗談だよ、冗談ー」
本気に聞こえたんだけど……私の勘違いだよね? そうだよね?
「ホントは、まあ、引っかかるところはあるけどさー……でも、ほのたんには助けてもらったから、おあいこ。ちょっとくらいあーちゃんとイチャイチャしても、私は我慢するよ?」
大人な愛ちゃんだった。
ちょっと意外、と思ってしまう私は失礼なのかもしれない。愛ちゃん、ごめんなさい。
「篠宮さんは……」
「ん? 桜は、当然、この作戦を推すぞ。発案者なのだからな」
「ですよねー」
孤立無援になる橘さんは、むむむと唸り……しばらくして、ため息をこぼした。
「仕方ないですね……他に良い案もなさそうですし、篠宮さんの案を採用しましょうか。ほのかも、それでいいですか?」
「そうね……うん、それでいいわ。悪くないと思うし、ちょっと密着するくらいは我慢する」
「……我慢ってなんですか? うらやましいくらいなんですか? そんなにイヤなら交代しますか?」
「こ、言葉の綾だから! ホントにイヤってわけじゃないからね!?」
「実は喜んでいるんですか? ほのかも泥棒猫なんですか……?」
「あたしはどう答えればいいわけ!?」
橘さん、たまに面倒な性格になるよね……ほのかちゃん、おつかれさま。
そして、私は巻き込まれたくないから、口を挟みません。
「ほーのーかー……?」
「えっ、いや、だから、その……!?」
……途中、橘さんが暴走するというトラブルが発生したものの、二人三脚の練習をする、ということで話は落ち着いた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
これから、今回の話のヒロインのほのかに焦点が当たっていきます。
最初はかませ犬だったほのかがヒロインに!
どうなるか、見ていただければ幸いです。
これからもよろしくお願いします。
次の更新は7日になります。




