60話 みんなでがんばろう
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翌日の放課後。
私たちは、いつかと同じように空き教室に集合した。
「というわけで、特訓よ!」
「テンション高いね」
「やるからには、全力で殺るわ!」
今、字がおかしくなかった?
「と……その前に」
ぺこりと、ほのかちゃんはみんなに向けて頭を下げた。
「お姉ちゃんも先輩たちも、あたしのために集まってくれてありがとう。ホント、感謝しています」
「別にいいよ、気にしないで。私の時も、ほのたんに色々と助けてもらったからね」
「桜は、楽しそうだから参加しているだけだ。気にするな」
「まあ、風祭くんと恋人のフリをするというのは、うらやまけしからんことですが……ですが、妹のためですし、協力くらいしますよ」
「……うん、ありがと」
ちょっとだけ照れくさそうに、ほのかちゃんは顔を赤くした。
おっと、ほのかちゃんの貴重な照れ顔だ。写真に収めておきたいな。まあ、そんなことをしたら、怒られた上に、即効でデータを消されると思うけどね。
「それにしても……風祭くんと恋人のフリですか……風祭くんと……恋人……」
妹の力になると決めたものの、やはり、そこは引っかかってしまうらしい。橘さんは、甘いと思って食べたお菓子がゴーヤのように苦いものだったような、そんな微妙な顔をした。
一応、フォローをしておいた方がいいかな?
「えっと……そんなに深く気にしないで? ほら、あくまでもフリだから」
「そうそう。それに、あたしが好きなのはお姉ちゃんだから。お姉ちゃん一筋よ」
「それは、別にどうでもいいんですけど……」
「適当に流された!?」
「というか、ほのかの愛はいりません。重いです。正直、引きます」
「心からの拒絶!?」
「あっ、風祭くんからの愛は、いつでもウェルカムですからね♪ はい、どうぞ、といつでもどこでも私を差し上げてしまいますね」
「遠慮します」
「今度は私が拒絶されました!?」
あれこれありつつも、橘さんは納得してくれたみたいだ。
まあ、あくまでも『フリ』だからね。そこまで気にすることじゃないよね。
……なんて言うと、橘さんに悪いか。橘さんは、本気なわけだから……軽く見るようなことは言えない。反省。
「橘は納得したみたいだが、駿河はいいのか?」
桜が小首を傾げて、問いかけた。
それに対して、愛ちゃんはにっこりと笑う。
「私は気にしないよ? だって、あーちゃんは、最終的に私のものになるからね♪」
「おぉ……言い切るとは、なかなかやるな」
「ふふーん。それくらいじゃないと、この面子相手にやっていけないからねー」
「大物になる可能性を感じさせるな……うむ。橘も悪くないが、駿河もアリだな。共に、葵の矯正を任せてしまおうか?」
お願いだから、任せないで。愛ちゃんにそんなことをしたら、本気で、全力で、おもいきり取り組んじゃうから。私、平穏な生活が欲しいんです。切に願います。
「とりあえず、みんな納得してくれた……ということでいいかな?」
みんなの顔を見ると、コクリと頷いてくれた。
「それじゃあ、さっそく特訓を始めようか!」
「で、なにをするわけ?」
「……なにをしようか?」
まるで考えてなかった。
「あんたねえ……」
「まあまあ。それは、これからみんなで考えていきましょう」
「仕方ないわね」
「なにか良い案がある者はいるか? いないなら、桜の案を実行するぞ」
「桜はちょっと……」
とんでもないことを言い出しそうだから、できれば遠慮してほしい。
永遠に。
「ならば、対案があるのか?」
「それは……」
「対案もなしに桜の意見に反対したのか? 封殺しようとしたのか? これは、稀に見る暴君だな。やれやれ、わがままな主を持つと困ったものだ」
「むむむっ」
桜が調子に乗っているんだけど、反論できない……
なにか、対案を考えないと。
あるいは、他人任せになっちゃうけど、誰でもいいから、他に思いついてくれないかな?
「うーん」
愛ちゃんは、うーんうーんと唸っている。
残念。愛ちゃんの援護射撃は難しそうだ。
となると、橘さんはどうかな?
「……」
橘さんは、なにやら難しい顔をしている。
対案を考えている……のかな? それにしては、やけに真剣というか、表情が硬いというか……どうしたんだろう?
私の微妙な視線を受けてなのか、橘さんが発言を求めるように手を挙げた。
「ちょっといいですか?」
「どうしたの、お姉ちゃん? なにか良い案が?」
「いえ、案は思いついていないんですが……少し気になることがありまして」
「気になること?」
「はい」
ためらうように、少しの間を置いて、橘さんは口を開いた。
「今更なんですけど……ふと、思ったことがありまして」
「橘さん、それは?」
「ほのかにニセの恋人を作り、見合いを破綻させる……これ、本当にうまくいくんでしょうか?」
……ここに来て、橘さんは根本的な疑問を問いかけてきた。
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