表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/88

59話 ついつい

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

「ところで、恋人のフリってどうすればいいのかしら?」


 ふと思い出したように、ほのかちゃんは小首を傾げた。


 言われて、私も考えてみる。

 恋人らしいこと……恋人らしいこと……恋人らしいこと……


「やっぱり、デートじゃないかな?」

「あんたと……?」


 虫を見るような目を向けられた。


 あの……いくらなんでも、それは傷つくからね? 私のハート、桜と違って、鋼鉄でできていないからね?


「今、桜に対して失礼なことを考えなかったか?」

「ソンナコトナイヨ」

「ちなみに、桜は考えていたぞ。葵のばーかばーか」

「唐突な暴言!? 桜はなにがしたいの!?」

「葵をいじめたい」

「この子最低だ!」


 ほのかちゃんとタッグを組んで、私をいじめにかかっているのかな? どこかに、私を保護してくれる施設とか機関とかないかな。あれば、全力で駆け込むんだけど。


「あーちゃんとデートなんでずるいー」

「駿河さんは、先日、風祭くんと一緒に遊園地に行ったじゃないですか」

「えっと……それはそれ、これはこれ、っていうやつだよね、うんっ」

「そんな言葉でごまかされませんからね」


 っていうか、今は私のことは関係ないんだけど。


「風祭とデートするくらいなら、抱かれたくないナンバーワン芸人……ううん、カメムシとデートした方がマシね」


 私、カメムシ以下なの……?


「え、えっと……それじゃあ、デートじゃなくて、えっと、えっと……い、一緒に登校する、とか?」

「友だちに見られたら恥ずかしいから」

「いきなり乙女になった!? というか、ネタが古いね!」


 このネタ、わかる人はどれだけいるんだろう?


「っていうか、一緒に登校ならいつもしてるじゃない」

「普段はみんなが一緒でしょう? そうじゃなくて、私たち二人だけで、っていうこと」

「二人きり……」


 パッと状況が思い浮かばないらしい。

 ほのかちゃんは目を閉じて、私と一緒に、二人きりで登校する場面を想像する。


「……」


 おもいきりイヤそうな顔をされた。


「あんた、サイテーね」

「えええっ!?」

「嫌がるあたしに、無理矢理あんなことをするなんて……」

「ほのかちゃんの想像の中の私、いったい何をしたの!?」

「それはもう……ぐすんっ」

「すごい気になる!!!」

「とても口に出せないようなことを……もう、生きていけない」

「よくわからないし、私は悪くないと思うんだけど、とりあえずごめんなさい!」


 訳のわからない罪悪感にかられるまま、ついつい謝罪してしまう。

 ホント、ほのかちゃんはどんな想像を繰り広げたんだろう……?


「えっと……登校がダメなら、一緒にごはん……とか?」

「……外で?」

「そう……かな。休みの日とか、ちょっとしたおしゃれなところで、一緒に……」

「……」


 すごく顔をしかめられた。


「じゃ、じゃあ、学校のお昼でもいいんだけど……」

「……」


 すごく顔を以下略。


「こら、ほのかっ」

「あいたっ」


 ぽこん、と橘さんのげんこつがほのかちゃんに落ちた。


「さっきから見ていれば、その態度はなんですか? せっかく、風祭くんが協力してくれるというのに、ひどいことばかり口にして……そういうことばかり言っていると、私、怒りますよ?」

「あうっ」


 叱られた猫のように、ほのかちゃんは体を小さくした。

 ビクビクと怯えたような感じで橘さんを見る。


「お、お姉ちゃん。なにも、風祭の味方をしなくたって……」

「確かに、ほのかと風祭くん、どちらの味方になるかと問われたら、瞬間も迷うことなく風祭くんを選びます」

「あうっ!?」


 あっ、無自覚な言葉の刃が。


「しかし、今はそういう話をしているのではありません。礼儀、仁義の話をしているんですよ。ほのかの都合に巻き込んでいるのに、協力してもらっているのに、その態度はなんなんですか? 悪いと思わないのですか?」

「うっ……」


 きつい態度という自覚はあったらしく、ほのかちゃんは気まずそうに呻いた。


 まあ、ほのかちゃんも悪気があったわけじゃないと思う。悪気ゼロかというと、ちょっと言葉に迷ってしまうけど……なんだかんだで、良い子だからね。意味もなく人を傷つけるようなことはしない子だ。

 私がライバルだから、どうしても、目の敵にしてしまうんだろう。

 というか、日頃と比べたら、まだずいぶんマシだ。出会った頃と比べても、かなり柔らかくなったと思う。


「橘さん、その辺で……」

「ですが……」


 私がフォローを入れると、橘さんの勢いが弱まる。


「ほのかちゃんも、悪気があるわけじゃないから。それと、私はそんなに気にしてないよ」

「むう」

「私の顔に免じて……ね?」

「……仕方ないですね。ほのか、これ以上失礼なことをしたらいけませんよ?」

「わかっているんだけど……うぅ」


 ほのかちゃんの返事は曖昧だ。自分で自分を制御できるか、自信がないらしい。


「風祭が相手になると、どうしても……なんていうか、勝手に……コントロールが効かないのよね。はあっ、これ、どうにかした方がいいのかしら」

「……ちょっといいか?」


 思い出したような感じで、桜が口を挟んできた。


「葵相手だときつくなってしまうらしいが、そんな状態では、恋人のフリをするなんて不可能ではないか?」



「「……あっ」」



 私とほのかちゃんは、揃って声をあげた。

 言われてみれば、その通りだよね……ケンカみたいなことばかりする私とほのかちゃんを見て、恋人と思う人は、まずいないだろう。また、そんな私たちが恋人のフリをしても、まるで信憑性がない。ゼロだ。


 これ、計画に深刻な影響が出るんじゃあ……?


「なんとかしないといけないね……」

「って、言われても、どうするのよ?」

「そういう時は、特訓だよ!」


 愛ちゃんが意気込んで言う。


「特訓をして、壁を乗り越えるんだよ! 新しい力を手に入れるんだよ!」

「まあ、アリかもしれませんね。このままだと、失敗するのは目に見えていますし、ほのかが変わらないと、私と風祭くんが結婚したら困ったことになりそうですし」


 うん、勝手に人の未来を決めないでね?


「そう、ね……駿河先輩の時みたいに、特訓するしかなさそうね。不本意だけど、風祭と恋人らしく振る舞えるようにならないと」


 こうして、再び特訓をすることになった。


 でも、ほのかちゃんが相手か……

 愛ちゃんの時と比べると、数段、ハードルが上がったような気がする。難易度が、ハードからインフェルノに変更だ。

 なんて、ついつい失礼なことを考えてしまう私だった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

今回は、ちょっとしたネタを入れてみました。

昔は誰もが知っているネタですが、今はどうなんでしょうか?

歳をとったなあ、という実感が湧いてしまいます。

これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「友だち(とか)に見られたら恥ずかしいから」 と○めきメ○リアル(初代)ですね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ