表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/88

48話 特訓という名のデート・4

 今日は日曜日。

 でも、愛ちゃんの特訓があるから、休んでなんていられない。

 私がなんとかしてあげないと!


 意気込みながら、私は事前に指定しておいた集合場所に移動した。




――――――――――




 たくさんの人たちが行き交い、みんな、楽しそうな笑顔を浮かべている。

 その奥に見えるのは、ジェットコースター、メリーゴーランド、観覧車……色々なアトラクションの数々。


 そう、ここは遊園地だ。


「というわけで、ここで、愛ちゃんの特訓をするよ!」


 みんなの前で、私はビシッと言った。


 愛ちゃんが、不思議そうに問いかけてくる。


「遊園地でなにをするの? デート?」

「愛ちゃん、正解」

「えっ、ホントにデートをするの?」


 適当に言ったみたいで、発言した張本人が驚いていた。


「デートということは、私の案と似たようなことをするのでしょうか?」

「うん。橘さんのプランを参考にしたんだ」

「しかし、風祭くんは男装(?)していませんが……?」

「男装はしないよ」

「そこまでイヤなのですか? 似合っているのに……」

「イヤだからしないなんて、駿河先輩のためにがんばろう、っていう気合が感じられないわね」

「別に、私がイヤだから、っていう理由じゃないよ? これも、ちゃんと考えた上での結論なんだから」

「ふむ? よくわからないが、葵はどんな考えを経て、この結論に至ったのだ?」


 よくぞ聞いてくれました。

 私はピンと人差し指を立てて、授業の講義をするように語る。


「みんなの特訓を見ていて思い直したんだ。愛ちゃんは男性恐怖症だけど、それを克服したいわけじゃないんだよね、って」

「え? どういうことですか? 克服したくないという風には見えませんが……」

「正確には違うんだよ。私たちみんな、そこを勘違いしていたの」

「む? どういうことだ?」

「うぬぼれだったら、すっごい恥ずかしい発言になるんだけど……愛ちゃんは、男性恐怖症を克服するよりも、私と触れ合えるようになりたいんだよね?」


 それが、あれこれ考えた末に出した結論だ。


 愛ちゃんは、男性恐怖症を克服したいと思っている。

 これは間違いない。


 でも、その理由は?

 今まで放っておいたのに、どうして、そう思うように?


 きっかけは、私が本当は男の子だということに気づいた、あの日。

 あの日以来、愛ちゃんは私と触れ合うことができなくなって……

 再び、元の関係に戻れるように特訓を始めた。


 つまり、前提が間違っていたんだ。


 ただ単純に、男性恐怖症を克服したいわけじゃなくて……

 私と触れ合いたいから、男性恐怖症を克服したい。


「……っていうわけ」


 私なりの答えを口にすると、当の本人が、なにやら感心した様子でうんうんと頷いていた。


「うん、そうだね。私、男性恐怖症を克服するよりも、あーちゃんと触れ合うことができない方が辛くて……あーちゃんのことばかり考えていたかも」

「だから、男性恐怖症の克服は後回し! まずは、ありのままの私と一緒に過ごして、前みたいに普通に接することができるようになろう……というわけで、今回の特訓を思いついたの」

「へぇー、なるほどね。風祭のくせに、よく考えてるじゃない。幼馴染の愛、っていうやつ?」

「ほのか……つまらないことばかり言うと、捻りますよ?」

「ご、ごめんねっ、お姉ちゃん」


 最近、橘さんがヤンデレ化してきているような気がするんだけど、それは……?


 ……見なかったことにしよう。

 人は、見たくないものに蓋をする生き物なんだ。うん。


「そんなわけだから、今日は私と一緒にデートしよう?」

「あーちゃんとデート……ふへへへぇ」

「愛ちゃんまでヒロインにあるまじき声を!?」

「あっ……ごめんね、あーちゃん。デートが楽しみで、いけないピンク色の妄想をしちゃった、てへっ♪」

「かわいらしいけど、言葉の中身はとんでもない!?」

「あーちゃんの初めて、私がもらうね?」

「私が受け!?」


 思わず、お尻を押さえてしまう。


「むぅー……風祭くんとデート……」


 橘さんはとても不満そうだった。

 ぷっくりと頬を膨らませている。まるでフグだ。


「橘さんは反対?」

「反対ではありませんが、風祭くんとデートなんてずるいです」

「デートという名目の特訓だよ?」

「それでも、デートはデートです」

「じゃあじゃあ、お姉ちゃんは今度あたしとデートするっていうことで……」

「ほのかとしても意味がありません」

「がーんっ!?」


 あっ、ほのかちゃんがノックアウトされた。

 こういう時の橘さんは、容赦ないなあ……


「まあまあ、落ち着け」


 桜がフォローに入ってくれるけど……

 なぜかこちらに背を向けて、会話の内容が聞こえないように、橘さんと小さな声で話をする。


「……逆に考えろ、チャンス……」

「……え? つまり……」

「……恩を売る。そして、後で……」

「……なるほど。がんじがらめにして……」


 ところどころ聞こえてくる不穏な単語に、不安になってしまう。

 お願いだから、橘さんに変なことを教えないでね……?


 ……もう手遅れかな。

 はあ、と私は大きなため息をこぼした。

 人間、諦めが肝心だよね。


「えっと……そんなわけで、私と愛ちゃんはデートをしてくるから。みんなは……」

「もちろん、楽しそうだから様子を見るぞ」

「大丈夫。邪魔はしませんから」

「男はけだものっていうし、あたしがちゃんと見張ってあげる!」

「……だよね」


 みんな、ついてくると思いました。


「じゃあ……愛ちゃん、行こうか?」

「うん!」


 なにはともあれ、特訓が始まる。




――――――――――




「愛ちゃん、最初はどうしようか?」


 ちょっと間を空けて、隣を歩く愛ちゃんに問いかける。


 ちなみに、背中に三人分の視線が痛いくらいに突き刺さるのを感じるけど……

 こういうのは気にしても仕方ないので、無視することにした。


 というか、ただの特訓なのに、みんな興味を出しすぎだから。

 特に、橘さん。

 離れていてもわかるくらい、必死な視線を送ってきている。


「遊園地といえば、ジェットコースター。ジェットコースターといえば、遊園地だよね!」

「そ、そうかな?」


 心なしか、愛ちゃんのテンションが高い。

 遊園地だから、わくわくしているのかな?


「じゃあ、まずはジェットコースターを攻めてみようか?」

「うんっ。れっつごー!」

「わわわっ、愛ちゃん、急に走らないで!」

「あーちゃん、遅いよー。早くしないと、置いて行かれちゃうよ? ジェットコースター、走り去っちゃうよ?」

「確かに走り去るけど、また戻ってくるからね?」


 そのまま置いて行かれたら、ちょっとしたホラーだ。


「わわっ、けっこう並んでいるね」


 乗り場についたら、そこそこの列ができていた。

 三十分待ち、の文字が目に入る。


「三十分か……どうする?」

「もちろん、待つよ! 待っている間も楽しみはいっぱいあるからねっ」

「と、いうと?」

「お話ししたり、遊んだり♪」

「なるほど」

「あ、前の人進んだよ。行こう」

「うん」


 こうしていると、昔、愛ちゃんと遊んだ時のことを思い出す。

 あの頃は楽しかったなあ……


 って、懐かしんでいる場合じゃない。

 あの時と変わらないくらい……ううん。あの時以上に楽しい思い出を作れるように、特訓をがんばらないと!

気に入って頂けたら、評価やブクマで応援をいただけると嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。

※おかげさまで、日刊、ジャンル別ランキングで68位になりました! ありがとうございます。これからも、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ