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24話 デート、そして・・・

 楽しい時間はあっという間に過ぎた。


 あれから、クレーンゲームで遊んで、レースゲームで競争して、クイズゲームで対戦して……

 色々なゲームで遊んで、気がついたら夕方になっていた。ずっと屋内にいたせいか、外に出ると夕陽が眩しい。


「今、何時でしょうか?」

「えっと……ちょうど五時だね」

「これで終わり、というには少し早い時間ですね」


 遠回しにもうちょっと一緒にいたい、っていう意味でいいんだよね、これは。

 私も、これでばいばいするっていうのは、ちょっと寂しいと思う。かといって、今から別の場所で遊ぶには時間が遅い。


 うーん、どうしよう?


『葵』


 迷っていると、桜から連絡が入った。


『どうした? なぜ動かない?』

「次はどうしようかな、って迷っていたところ」

『なるほど……それなら、桜に考えがある。デートを締めくくるにふさわしい場所を知っているぞ』

「ふさわしい場所?」

『ラブホテル』


 コケそうになった。

 というか、コケた。


「そんなところに行けるわけないでしょう!」

『なぜだ?』

「常識で考えてよ、常識で!」

『なるほど、屋内ではなくて野外が好みだ……と?』

「桜に常識を求めた私がバカだったよ!」

『冗談だから、本気にしないでほしい。まったく、こんな冗談を真に受けるなんて、葵はもうちょっと冷静になった方がいい』

「あのね……」


 この子、殴りたい。グーで殴りたい。


「とにかく、時間も時間だから、この後どうしようかな、って迷っていたところ」

『……いや、どうやら迷う必要はないみたいだ』

「え?」

『決着の時が来た』


 桜の声が消えて……代わりに、足音が聞こえてきた。

 振り返ると、不機嫌そうな顔をしたほのかちゃん。


「二人のデート、一部始終、見届けさせてもらったわ」


 私たちが足を止めたことで、デートが終わりだと思ったらしく、ほのかちゃんはそんな言葉を口にした。

 まだデートは終わってなくて、ほのかちゃんの早とちりなんだけど……

 なんて言いかけたけど、止めた。

 そんなことを言うと、このシリアスな空気をぶち壊してしまう。私、とんでもなく空気が読めない存在になってしまう。


 それに、桜の言うとおり、決着の時が来たんだ。なら、逃げる必要はない。あえて真正面から受けて立つまでだ。


「それで、ほのかちゃんはどう思ったかな?」


 納得してくれたかな?

 少しだけそんな期待を抱いたけど、すぐに思い直した。ほのかちゃんの不機嫌そうな様子を見る限り、私たちが望む答えは返ってきそうにない。


 事実、


「ふんっ……あたしの意見は変わらないわ。あんたなんか、お姉ちゃんにふさわしくないんだから!」


 ほのかちゃんの口から出たのは、私たちを否定する言葉だった。


「ほのか、どうしてそんなことを言うんですか? 今日の私たちは、どこからどう見てもお似合いのベストカップルだったと思うのですが」


 私も橘さんと同意見だ。

 今日のデートはうまくいったと思う。楽しい時間を過ごすことができて、橘さんは終始笑顔を浮かべていた。

 それなのに、いったいどこがダメだったんだろう?


「確かに、今日のお姉ちゃんは楽しそうに見えた。あんなに笑っているお姉ちゃんを見たのは久しぶりだった」

「なら、なんで?」

「……恋人らしくない」

「え?」

「なんていうか、楽しそうに笑っていたけど、二人の間に流れる空気は甘いものじゃなくて……恋人っていうより、普通の友達に見えた」


 鋭い。

 私は、橘さんをまだ恋愛対象として見ていない。その辺りの微妙な空気をほのかちゃんは感じ取ったんだろう。


「性格はなよなよしていて頼りないし、へらへらしているところが気に食わないし、そもそも女装する変態野郎なんかどうかと思うけど……まあ、友達としてなら、お姉ちゃんの傍にいても構わないと思う」


 構わないというわりには、とても不本意そうだった。あと、私、ものすごいけなされていた。

 私、そんなになよなよしているかなあ?


「でも、恋人としては認められないわ」


 きっぱり断言して、ほのかちゃんは私たちを否定した。


「あたしがお姉ちゃんを想う気持ちは、こいつに負けてない。だから、お姉ちゃんを渡すわけにはいかない。それが、あたしの結論よ」


 困った。これじゃあ、ほのかちゃんを諦めさせることができない。

 逆に、橘さんに私のことを諦めてもらう、という手もあるんだけど……

 橘さんとの繋がりがなくなるのは……なんか、イヤだった。うまく言葉にできないけど、イヤだ。


「うーん、まいったなあ……どうしたら、私たちのことを認めてくれるの?」


 ちょっとわざとらしいセリフを口にして、遠回しに桜に助言を求めてみた。


『恋人らしい雰囲気が足りない、想う気持ちで負けている……そういうことなら、目の前でホテルに入ってみせたらいいんじゃないか?』

「いい加減、ホテルから離れなさい!」

「ホテル? いきなりなに言ってるの、あんた」

「あ、ううんっ、なんでもない。こっちの話だから」

「変なヤツ」


 ほのかちゃんの視線が、ますますきついものになってしまった。


 どうしよう?

基本的に、毎日更新していきます。

気に入っていただけましたら、ブクマや評価などをどうぞよろしくお願いします!

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