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15話 記憶と忘れたもの

「はあ……」


 空を見上げると、鮮やかな夕焼けが一面に広がっていた。雨は夕立ちだったらしく、とっくに止んでいる。

 橘さんの家を後にした私は、ため息をこぼしながら帰路を歩いていた。


「まさか、あそこで意識を失うなんて……」


 お風呂で湯あたりして……

 気がついたら、リビングのソファーに寝かされていた。橘さんに迷惑をかけてしまったことが申し訳ない。


 ただ、それ以上に……


「見られちゃったのかな……見られちゃったよね……」


 気がついた時には、私は服を着ていた。


 つまり、誰かに服を着せてもらったわけで……

 そして、それは橘さん以外にいないわけで……

 要約すると、色々と見られてしまったわけで……


「はうううううっ!」


 とてつもない羞恥心を覚えて、その場で転げ回りたい衝動に駆られた。


 死にたい!

 もしくは、今すぐ記憶をなくしてしまいたい!


「……はあ」


 お風呂に入って体はすっきりしたけど、心は限りなくダウンしてしまった。


「私ってば、なんであんな醜態を……」


 考えれば考えるほど落ち込んでしまう。

 って、ダメだダメだ。こういう時は、なにか別のことを考えて気を紛らわさないと。


「別のこと、別のこと……」


 念仏のように唱えて……

 そして、とあるやりとりを思い出した。



『……私は、風祭くんにとても大切なものをもらいました』



 懐かしい思い出を語るように、大事な思い出を語るように、そう言った橘さん。


「大切なもの、か……」


 私と橘さんの間にはなにかがあった。とても大事ななにかが。

 でも、わからない。思い出せない。


「……」


 心の奥底に忘れ去られたものを拾い上げるように、目を閉じて集中する。


 私はなにを忘れているんだろう?

 橘さんはなにを言いたかったんだろう?


 必死になって考える。

 考える……けど。


「……ダメだ、わからないや」


 深い霧の中を進んでいるように私の記憶は曖昧で、なにかを思い出せる気がしない。


「思い出したいのに……」


 思い出せない。

 もどかしい。

 悔しい。


 私は、知らず知らずのうちに手を握りしめていた。


「いったい、どういうことなんだろう……誰か、私に教えて……」


 空に向かって手を伸ばした。

 でも、なにも掴むことはできなかった。

基本的に、毎日更新していきます。

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