表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/88

01話 プロローグ

 空を見上げれば、朱色の夕焼け。

 地平線の向こうに、ゆっくりと沈んでいく太陽。

 街を覆うように、鮮やかな赤がどこまでもどこまでも広がっていた。


「えっと……」


 学校の屋上。

 私の前に、見知らぬ男子生徒が立っていた。


「あの……その……」


 男子生徒は、落ち着かない様子で視線をあちこちに飛ばしていた。たぶん、緊張しているんだろう。

 そんな男子生徒を見ていると、私も緊張してしまう。ドキドキする。


「よし!」


 ややあって、男子生徒は私をまっすぐに見つめた。

 瞳に決意の色が宿る。


「風祭先輩のこと、一目見た時から気になってました。風祭先輩は、下級生の俺のことなんて知らないと思うけど……でも」


 一度、そこで言葉を切る。

 心を落ち着けるように、深呼吸を一回。


 そして……残りの言葉を一気に口にする。


「好きです! 俺……風祭先輩のことが好きなんです! 付き合ってください!」

「えっと……その」

「突然のことで悪いって思いますけど、できれば今、返事を聞かせてくれませんか?」


 男子生徒の目は、期待と不安に揺れていた。

 そんな目を見ていると、申し訳なくなる。


 だって……私は、彼の期待に応えないのだから。


「ごめんなさい。あなたと付き合うことはできません」

「あ……」


 断りの言葉と共に、ぺこりと頭を下げた。

 男子生徒は、傷ついたような顔をした。

 反射的に目を逸らしてしまいそうになる。

 でも、我慢した。

 傷ついた彼を見ることは辛いけれど……これは、私が選んだ答えだ。ここで逃げるわけにはいかない。


「ごめんなさい」

「そう……ですか」


 もう一度頭を下げると、男子生徒は唇を噛んだ。

 悔しそうにして、辛そうにして……そして、ふっと体の力を抜いた。


「なんとなく、そんな気はしてたんですけ……やっぱり、ダメですか」

「その……ごめんなさい。本当に」

「そんなに謝らないでください。別に、風祭先輩が悪いわけじゃないですから」


 これ以上謝っても、男子生徒に辛い思いをさせるだけだ。

 私は謝罪を止めて、口を閉じた。


「……」

「……」


 気まずい沈黙が流れた。

 時間が止まったように動くことができない。


 ……だけど、いつまでもこうしていても仕方がない。


 重い空気を振り払うように、私は一歩下がる。


「それじゃあ、私はこれで……」

「あっ……すいません。待ってください!」

「えっと……なんですか?」

「一つだけ教えてくれませんか? その、俺のどこがダメなんですか?」


 告白を断る理由はある。好みじゃないとか気が乗らないとか、そんな曖昧な理由じゃない。


 ……というか、それ以前の問題なのだ。


 たぶん……というか、ほぼ間違いなく、男子生徒は私のことを詳しく知らない。私の素性……本当の姿を知らない。

 学年も違うし、入学してそれほど経っていないから仕方ないと思うけれど……

 男子生徒が私の正体を知れば、きっと驚く。そして、期待を裏切られたような気持ちになってしまうだろう。


 でも、きちんと説明しないと。

 それが、男子生徒に対する誠意だと思うから。


「あのね、あなたは勘違いをしているよ」

「それは、どういう……?」

「実は……私、男なんだ」



 …………



 沈黙が流れた。


 私は苦笑して。

 男子生徒は目を丸くして。

 しばらくの間、なんともいえない空気が辺り一帯を支配する。


 そして……


「えええええぇっ!?」


 男子生徒の驚きの声が屋上に響き渡るのだった。

ラブコメを書いてみたいと思い、普通じゃつまらないので、主人公を男の娘にしてみました!

基本的に、毎日更新していきます。

気に入っていただけましたら、ブクマや評価などをどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ