ひとつやふたつ
引き続き、実・視点です。
最後に、3人で海をバックに写真を撮った。3人同時に遊べなかったのが残念だ。そのことを言うと、次回はどうしようかと意見の言い合いが始まり、全員が次回を考えていたことが嬉しかった。
「お前らさー、ほんとラブラブだな」
「……いきなり何?」
「や、別に。……俺、彼女いないじゃん? だから、ちょっと羨ましくなったっていうか」
ヒロがこういうことを言うのは初めてだった。最初に悟とのことを話したときも、特に驚いた様子もなくて、あまり興味がないのかもしれないと勝手に思っていた。
「けど、やっぱりそんなお二人でも、言いたいことの一つや二つ、あるんじゃないですかねー?」
急にふざけた風に言われて、夏休み前に俺が悩んでいたのを気にしてくれているのだと気付いた。気を使わせてしまって申し訳ない。せっかくヒロがきっかけを作ってくれたのだから、ここは積極的にいくべきだろう。
「……あるなら言ってよ?」
「んー……」
「まー、二人のときにでもよく話し合うことです」
「はい、そうします」
ヒロは満足げに頷いたが、悟の微妙な反応にちょっと不安になった。
悟との関係が変化してから、前みたいに言いたいことが言えないことがある。小さいことでも、口にする前に一瞬躊躇う。どこかで、言うのが怖いと思ってしまう。関係が壊れることを想像して、大切に大切にと守るうちに、窮屈になって。悟に嫌われるのが、怖い。信じたいのに、不安な気持ちが消えてくれない。自分だけくよくよと悩んでいるのは嫌だと思うけれど、思っていることを打ち明けて、面倒臭がられるのはもっと嫌だ。
「あ、アキラさん? 俺だけど」
ヒロが、ちょっと甘えた声で電話している。アキラさんの声は聞こえないが、何となく楽しそうな雰囲気だ。本当に仲がいいんだなと思う。
「なぁ、今からアキラさんの家に行くぞ。もうすぐ晩飯、できるらしいぜ」
通話を終えるとヒロは、にかっと笑って言った。
読んでくださり、ありがとうございます。
ちょっと臆病になっている実です。