海
この物語は、実・視点固定になります。
よろしくお願いします。
海水浴シーズンの海は、たくさんのカップルや家族連れで賑わっていた。
「おじさんは家に戻るから、思い切り楽しんでこいよ」
ヒロの叔父さんのアキラさんは、この辺りに住んでいるそうだ。年齢が離れているわりに話しやすくて、ヒロと仲がいい。初めは3人だけで来る予定だったのだが、車の方が楽だろうということで、駅からここまで送ってもらうことになった。
「しっかり遊んだら、俺に連絡しな。晩飯食わせてやっからよ」
「えっ、アキラさん、いいの⁉︎」
「おう。じゃあ、後でな」
かっこいい人だなと思う。それに、優しい。俺の周りにはこういう人はいない。
「さっそく泳ごーぜ」
「あ、荷物どうする?」
「んー、順番でパラソルの下で荷物番すればいいだろ」
「そうだな。……全然考えてなかった」
じゃんけんをして、負けたヒロが最初に荷物番をすることになった。シートの上に寝転んでいるヒロを見ながら、水の中にゆっくりと入る。今日はすごく暑いから、冷たい水の感触が気持ちいい。
「うわっ」
顔に衝撃。口の中がしょっぱい。咄嗟に瞑った目を開けると、悪戯っぽい顔で悟が笑っていた。すぐに、目の前の水を両手ですくう。力いっぱい投げ返すと、バシャン、と大きな音を立てて、悟が後ろに倒れた。
「…………青春感、あるなぁ!」
体半分水に浸かったまま、冗談っぽく言って笑う。
「あるなぁ……!」
言いながら、青春って何だろうとぼんやり考えた。
読んでくださり、ありがとうございます。
アキラさんは、50代だったりします。