窓辺の眼差し
何のために華は咲くのか
肥えた土から甘い水を吸って
種もつけずに枯れていくのは寂しいじゃないか
何のために波は立つのか
遠い異国の港で生まれ風に逆らい海を渡って
閑かな浜辺に溶けていくのは怖いじゃないか
何のために豚は死ぬのか
生来「餌」としか呼びようのない穀物ばかりを口にして
脂ののった焼肉の味も知らずに死んでいくのは悔しいじゃないか
何のために水をやるのか
毎日毎日台所の蛇口を捻って
如雨露の鼻を指で押さえて
寝起きに降りたばかりの階段をそろりそろりと
夏でも梅雨でも冬が来ようと
海を見下ろす窓辺に立ち
鉢の土にまいた養分を溶かしてやり
今日もそれで満足するのか
明日も華を愛でるだけか
ふやけて腐ったはなびらが
小洒落た窓辺に降り積もる