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王国征服計画

「仮に――俺が魔法王スターウェイ=ランキャスターだとする。こうして復活したわけだが、さて何をしたらいいんだ?」

「まだ本調子ではないのですね。嘆かわしいことです……。スターウェイ様」

「あーあのさ、そのスターウェイ様っての長くない? コイドって呼んでくれない?」

「なんですか? そのコイドというのは」

「ニックネームだよ」


 本当は本名だけどね。小井戸浩平っていうんだよ、俺。


「わかったよコイド!」

「そうそう」

「この無礼者! 魔法王に対してその口の利き方は――」

「まあまあ。 ――ほら、俺って封印されてたじゃん。復活したことをあんなり知られたら良くないでしょ? だから、偽名ってことでコイドって呼んでよ」

「な、なるほど! 素晴らしいお考えですスターウェ……コイド様」

「うんうん」


 俺たち三人は、リビングの床に座って会話を始めていた。ようやく落ち着いたって感じだ。

 俺は黒い学生服みたいな衣装を着ている。アーネが用意してくれたものだ。それはいいとして、この馬鹿みたいに長い髪をどうにかしないとなあ。引きずるので歩くのも難しい。

 アーネはローブを脱いで、俺の隣で正座している。王の前で顔を晒すなどはしたない――とか言ってローブを脱ぐのを嫌がったけど、強制的に脱がせた。だって顔みたいじゃん。すると、フードの下からかなりのベッピンさんが出てきた。髪は短めで色は黒。目が鋭くて、キリっとした美人系だが、幸薄そうな印象。

 メシアの縄と目隠しは外された。俺に精神を操られている体なので、アーネはもう拷問するとか言わなかった。


「話を戻そう。これからどうするかだ」

「そんなの決まっています。魔法都市を再建し五大国全てを滅ぼすのです」


 さらっと凄いこと言うな……。

 戦争をしよう、そのために兵隊を集めようってかい。


「そんなの無理に決まってるじゃん。五大国ってエレドペリ王国のことでしょ?」

「エレドペリ?」

「うん、魔法都市を倒すために集まった五大国が、一つの国になったの。それがエレドペリ王国」

「へえ」

「メシア、無理とはどういう意味ですか? 復活したスターウェ……コイド様の力を見くびっているのか?」


 アーネがキッとメシアを睨む。今にも飛びかかりそうな勢いだ。


「そうじゃないけど――エレドペリはすっごく大きいよ? 昔に比べて魔法技術だって進歩してるんだから、いくらコイドだって太刀打ちできないでしょ」

「貴様! コイド様が負けるというのか!?」

「まあまあ」


 いよいよ片膝立ちになったアーネを止めつつ俺は考える。

 このままじゃ本当に危ない方向に話が進んでしまう。なにか提案しないと――要するに、これからどうするかって話なんだから、どうしたいか言えばいいじゃないか。俺がやりたいことか……。


「あ、あのさ。この世界に学校ってあるのかな」

「学校? それって人がいっぱい集まって勉強するところだよね。私知ってるよ」

「ホント?」

「うん。たしか、エレドペリ王都の近くにルドラカンドっていう小さな城塞都市があって、そこが全部学校になってるらしいよ。おばーちゃんが言ってた」


 城塞都市が全部学校……? なにそれ、すっげ! 


「王立ルドラカンド学園は貴族や権力者の通う学校です。独自の社交界を形成し各国、領間の結びつきを強める目的で作られたのだとか。国の安全性を象徴する広告塔の役目も担っているようです」

「詳しいんだねアーネ」

「いずれ滅ぼす敵ですから」


 そ、そうですか。

 俺が想像してたのとはちょっと違うけど、それはそれで興味があるというか、めちゃくちゃ楽しそうだ!


「あのさ、そのルドラカンド学園に通うことはできないかな?」

「それいいね。楽しそう!」


 そうだろうメシア。


「何を馬鹿な――い、いえ失礼しました。コイド様、ルドラカンドは敵の本拠地といっても過言ではない場所です。そこに所属するなどあり得ません!」


 やっぱりそうなります? 

 でも行きたいんだよなあ……どう説得したものか。


「分かってないなあ、アーネちゃんは」


 メシアは含み笑いを浮かべながら、アーネのほうを見た。アーネは「ち、ちゃん……?」と変なところで動揺していた。


「コイドは、そんなこと百も承知で学校に通いたいって言ったんだよ。ちゃんと言葉の裏を読まなきゃだめだよアーネちゃん」

「ま、またちゃんて……! いや、お前は何が言いたいんだ。言葉の裏を読むだと? 分かったような口をきいて――」

「敵が強いなら、内側から崩せばいい――そうい言ってるんだよコイドは。そうでしょ?」

「え? いやべつに――」

「そうか! 将来国の中心人物となる権力者や貴族の子供たちを篭絡することで、侵略を有利に進めようということですね」

「は?」


 置いてきぼりを食らったような心境で、話の流れを作った犯人メシアのほうを見ると、彼女はウインクして見せた。合わせろ――って? そうか、彼女も学校に行きたいんだな。だからトスを上げてくれたんだ。よし分かった、俺がスパイクを決めるぞ。


「そ、そうだ。虎穴に入らずんば虎子を得ずというだろう――」

「初めて聞いたよ」

「それは! 古代魔法の呪文ですか?」

「……つ、つまりだな。こちらから危険に身を投じずして手柄は得られない――と言っているのだ。なにも焦る必要はない。時間を惜しまず、より確実な方法で目的を果たす。それが私のやり方だ!」

「おおー。コイドかっこいい!」


 ありがとうメシア。でも、白々しいぞ。


「ああ、コイド様……素晴らしいです」


 アーネは頬を赤らめ、とろけきった顔で身悶えしている。大丈夫かそれ……エロいし危ない感じだぞ。


「そうと決まれば、早速ルドラカンド学園に行こうじゃないか。さあ準備を始めよう」


 俺は立ち上がって拳を天に突き上げた。メシアも同じように「オー!」と元気よく跳ねた。


「コイド様――あのですね、学校に通うのは良いのですが……その、学費が」

「え? お金ないの」

「……あまり」

「私もないよ」

「…………」

 

 学校はまだ遠い……。


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