表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
196/253

枢軸への旅 16



 ルーを仲間に加えた浩平の足取りは、それまで以上に軽くなった。僅か数日のうちに九十階層突破を達成した。

 そして、九十階層ボスを倒したその時、目の前に数字が現れた。

――九十九から百へ。

 レベルカウントがストップした瞬間である。


「ねーねー、スキル見せてよ。三つ目なんだからきっと強いんでしょ?」


 ルーの嬉々とした催促に促された浩平はスキル名を発声した。


氷剣アイスソード


 すると、彼の眼の前の空間に氷が現れる。細く鋭い刀身、同じく繊細な鍔と柄――それは、眺めてこそ真価を発揮すると言わんばかりに可憐な剣だった。


「すっごい、綺麗だね」


 ルーは透明な氷以上に光り輝く瞳で氷剣を見つめていた。しかし、


――パアァン


 浩平は氷剣を地面に打ち付けて割ってしまった。


「やはり使えんな」


 フィラカルティーはせせら笑いを浮かべて言った。


「そういえば言ってなかったが、魂の世界ここで授かるスキルってのは、ソイツが元の世界で歩んできた時間によって決められるらしいぜ」

「ええ、そうなの? 初耳なんだけど――私、腕が硬くなるような生き方してたってことになるけど……ピンとこない」


 ルーは自分の腕を抱えて首を傾げた。


「硬化は“守る”ことを指示しておる。心当たりがあるんじゃないか?」

「え? ええと……ちょっと忘れちゃったかな」

「金属を超える硬度を誇る結晶――明らかに尋常ではない意思があったはずだが、本当に忘れたのか?」

「う、うん」


 ピンと来ていて、あえて恍けている。そんな態が見え見えだったが、フィラカルティーはそれ以上追及しなかった。


「氷をテーマとした一連のスキル群――これは、実は珍しいのだぞ」


 話を振られた浩平は、チラとそちらを見ただけに留まった。聞き返す気はないが、話したいなら勝手に話せ、という感じだ。


「それこそ結晶と比べれば氷など脆弱極まりない。先ほどの氷剣が簡単に割れてしまったようにな。しかし、氷の本質とは、これもまた“守る”ことを意味している。水よりは氷の方が硬い訳だからな」

「生前の意思の強さでスキルの強さが変わるってことなら、浩平の“守る”って言う意思はそこまで強くなかった――ってことになるのかな?」

「最終的な硬度を見れば、そう思えなくない。しかし“差“という点を考慮すれば、あながちそうとも言えんかもしれない。

 生身の腕から結晶――無形の水から氷――どちらも決定的な変質だと言えるからな」

「じゃあ、浩平は元がダメダメだったんだ!」


 バカにするようなセリフであるが、彼女は話を理解できたことを喜んで言っただけなのだった。

 フィラカルティーはガハハと豪快に笑った。


「ああ、その通りだな。こいつはな、愚鈍として最初の死を迎え、そして、魔法王として新たな生を受けたのだ。劇的な変化を経験したというのも、元が低レベルだったというのも、まさしくその通りだ」

「魔法王?」

「世界で一番強かった男さ」

「へえ――じゃあ、浩平は、実は凄い強い人間だったんだね」


 少女の突拍子の無い発言に、これまで話に加わっていなかった浩平が口を開いた。


「強いのは体だけだ。何を聞いていたんだ」


 ルーは至極真面目に反論に反論する。


「えー、ちゃんと聞いてたよ。私が言いたいのはさ、突然強い力を手に入れちゃった人って、絶対おかしくなるってことだよ。ほら、お金とか権力とかさ、そういうのって簡単に人を変えちゃうじゃん? でも浩平は変わって無いみたい。だから強いなって思ったの」

「オレは生まれ変わって変わった」

「嘘だぁ。だって、浩平は今でもダメダメじゃん」


 さすがの浩平も相手を睨んだ。

 しかし、少女は飄々と、


「ほら、すっごい真面目だもの。怒っちゃったりしてさ。なんか、普通なんだよね浩平って――凄い強さとか、何でもできる権利とか、そういう物の味を知ってる人間はさ、真面目に怒ったり、悲しんだりできなくなるものだよ。

 だから、浩平は凄く強いんだよ――今だって、復讐のために行動してるんでしょ? そんなによく知りもしない女の子を殺されたからって、そんな殺人鬼みたいな風を装って、何気なく人を殺している風でいて、相手が罪人だって言い訳がなきゃ殺せなくて――」

「オレが無理しているみたいな言い分だ」

「“みたい“じゃないでしょうが」


 険悪なムードが漂い出した。


「まあ、お譲ちゃんの言うことは一理あるかもしれんな。殺人鬼というのは誰しも破たんしているものだ――ボウズもまたそうだ。ただし、欠損している部分が希有なのだろう。だから、氷などという貧弱なスキルをもらってしまった」

「欠損している部分?」


 少女は真面目に考え始めた。が、すぐに諦めたらしく肩をすくめた。


「おしえて、おじさん。それはなに?」


 素直に問うルーだった。

 フィラカルティーもまた素直に答える。


「それは――“賢さ”だろうさ」

「…………ぷっ」


 盛大に笑いだす二人。


「そんなことより、フィラカルティー。スキルがもう一つ増えているぞ」


 浩平が何気なく言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ