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どうやら魔王は俺と結婚したいらしい  作者: わいず
魔王の配下1 最強ドラゴン娘は色んな意味で最強
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あぁ、疲れた……ん、何が疲れたかって?察してくれ、体力と精神の限界だ、あっ、今はきちんと自分の足で立ってるからほんの少しだけましだ。


「シルクさん、はぁ…はぁ…と淫らでえっちぃ息使いをしていますが、どうしたんですか? 興奮したんですか? ドMはラム1人で充分ですよ?」

「お前眼科と耳鼻科に行け……」


俺のそんな言葉は何処吹く風……にこーと笑うヴァーム、こいつロアよりたち悪いんじゃないか? あの時ずっとお姫様抱っこをされ、それでも振り落とされそうだからヴァームの肩を持ったら、むっ胸に当たって「ふふふ、やっぱり男の娘ですねっ」と嬉しそうに言われ、何を思ったのかヴァームは加速をして「時速80キロまでスピードを上げますね!」なーんて言うから俺は「ゆっくり行け!」と言った、ヴァームは聞き入れてくれなかった……うん、全くもって散々な時間だった。


「早足で来たので速く来れましたね」


にこーっと笑いながら尻尾を足に巻き付けるヴァーム……その捻れた角へし折ってやろうか? 時速80キロは早足とは言わない、高速って言うんだよ!


「あのまま時速50キロでも良かったのですが、シルク様の震える顔が可愛すぎて悪戯しちゃいましたっ」


てへっと舌をぺろんっと出して自分の頭をこつんっと叩く……悪戯レベルじゃないだろうが! ちくしょうっ腹立つ! 生身で80キロと言う速度を体感してみろ! 本当に怖いからっ、ヴァームは分かっていないんだ、いや分かっててやってるかも知れない……こいつなら絶対にやる、間違いない。


玄関の扉の前に立つ俺達、通常よりも遥かにでかい扉をギギギィーーと軽々開けるヴァーム、こっこれが魔王城の玄関扉か、しっかしホールも立派だな、あのシャンデリアは幾らするんだ?


「久し振りの外ですね…」


そう言ってヴァームは歩き始めた、そう言えばそうだな……ずっと室内暮らしだったからな…外に出ても安心は出来ないが、ずっと室内にいるよりかはましだろう、我慢しよう……さっさて外はどうなってるかな? 魔王城の城下町ってどんな物なんだろうな……俺は目の前に広がる城下町を見る、立派な城門の奥には赤レンガ造りの家々、煙突から煙が立ち上がっている、俺の想像ではもっと奇想天外な街並みを想像してたが、以外と普通なんだな……。


「どうですか? 素晴らしいでしょう?」

「まぁ……な、出来れば旅行とかで来たかったよ」


はぁ……俺がため息を出している横で相変わらず笑っているヴァーム、その手にはカメラを持って、俺を撮していた、そのカメラもどうにかしないといけないな……そんな事を考えているとヴァームは俺の肩に触れる。


「ふふふ……さぁシルクさん、初めての商談ですよ」

「カメラをこっちに向けるな」


無駄だと思いながら伝えてみる、結果は言うまでも無い……にこにこ顔でスルーされてしまった、隙あらばカメラを奪って逃げたい、だが逃げれば最後、呪いをかけられる、あれ? これ詰んでない? まんまと相手の思うように動かされてないか? ……うん、少なくとも今は諦めよう。

そう決心し、すたすたと城門まで歩いた時だ、城門の右側に黒い犬が見えた……屈強な身体だ、鋭い爪に綺麗な毛並みだっだが……顔が3つあるぞ? 何だこの生物は! 俺が声を失い驚く様子を見ながらくすくす笑いヴァームは説明してくれた。


「この城の番犬のケールです」

「なんだその苦そうな名前は……」

『わんっ!』


そのケールと言う犬に近付くヴァーム……『はっはっはっ』と嬉しそうに舌を出している、顔が3つだから、なんだか見てて奇妙だ……あっ尻尾は1つなんだな……。


「顔が3つある以外は普通の大型犬みたいだな……」

「えぇ、ケールは魔界ではペットですから」

「まっマジかよ……この犬が?」

「因みに犬種はケルベロスと言います、番犬として活躍してくれるんですよ」


いや、ウインクしながら言われても……知った所で俺にどうしろと?

しかし奇妙な犬だが近くで見てみたいな、俺はゆっくりとその犬に近付いた……その時だ。


『わおーんっ!!』

「えっなっ…ちょっやめ!」


ケールが俺に飛び掛かり押し倒してくる、顔を近付かせ舌を出してぺろぺろ俺の顔を舐めまわす、顔が3つなので俺の顔は一瞬にして涎まみれになってしまう……こっこいつっ力つよっ……。


「あらあら……うふふふ、なつかれちゃいましたね」

「微笑んで無いで助けろ!」


ヴァームは満面の笑みでメイド服の中からカメラを取りだし撮影を始める。


「ほらケール、もっとがっといって下さい」

『わうわうっ!』

「ちょっ、これ以上舐めるなぁぁぁっ!」


こいつ顔3つあるから舐められたら直ぐに唾液でべちゃべちゃになるんだよ! くっくそ! 身体の上に乗られて身動きが取れない……。


「シルクさん、そこで可愛らしい悲鳴をどうぞ!」

「すると思うか? 絶対にしな……うぎゃぁぁぁぁ!」


必死で抵抗する俺、するとケールはスカートの中に顔を突っ込み始めた、こっこれはいけない!


「おいっ! 撮って無いでさっさと助けろ! こっこら! やっやめ…やめろ!」

「ふぅ……、良い絵が取れました、後で修正して際どくしましょう……うふふふ」


そう言ってヴァームはケールを退かす、その途中で嫌な言葉が聞こえた修正ってどうするつもりだよ、ぐっ……怖くて聞けない、俺はこの時苦笑するしかなかった……。

さてケールとの不快な戯れが終わり俺とヴァームを見送り城下町に足を踏み入れた。


「すっごいな……」


レンガ造りの家々、道行く人々が賑やかに辺りを歩き周り、ある者は露店を開いたり、ある人は話をしてたりしている…活気に満ちていて少し気持ちが解れて行くのを感じた、どこからか良い匂いがする……この匂い何だだろうか? 不思議な香りがする……嫌な匂いではなく良い匂いだ、だが俺はこの匂いの正体が分からなかった、まぁ今はどうでも良いか、それよりも此所は俺の街よりも随分賑やかだ、それと此処にいる奴等は人ではない、蜥蜴(とかげ)見たいな奴がいたり、魚見たいな奴がいた、あと骸骨が歩いてる! 俺は口を開いたまま俺は驚いた。


「どうですか、素晴らしいでしょう?」


目を細めながら俺を見てくる……確かに凄い、ロアはこの街を統治しているのか…そう言えばロアは城と城下町をこの世界に持ってきたんだよな? 今思えば凄い事をしたんだなぁ……って今更何思ってるんだろう、するとヴァームが俺の手を握り引っ張ってくる。


「この街はロア様が統治する街なんです、城を人間界に転移する際、城と城主が不在だと色々面倒なので街も転移させたんです」

「おい、さらっととんでもない事を言うな……あと何で毎回手を繋いでくる」

「うふふふ、私は簡潔に述べたまでです、手を繋ぐ事に関しては答えは至極当然です、逃げないようにですよ」


にこっーーと笑うヴァーム、その笑みに脅威を感じる俺、逃げるわけ無いだろう……それはさっき心に決めた事だ、絶対に逃げない! 少なくとも今はだが……。


「そうか、理解……したよ」

「それは何よりですっ、では折角ですから私がこの辺りを軽く説明しておきますねっ」


まぁ、説明してくれるのは有り難いが、きちんと説明出来るんだろうな? あっあと、今更だがヴァームの手、結構柔らかいだな……滑らかな長い指が俺の指と指の間を絡め合っている、ほっ本当今更ながら恥ずかしくなってきた。


「まずは今歩いてる所が露店が立ち並ぶ所ですね、此処では色んな物を売ってるんですよ?」


俺は辺りを見回してみる、確かにヴァームの言う通り色々な物を売っている、色んな薬草に動物の角……ほぅ食べ物も売ってるなぁ、ん、あれは何の店だ? 1人その露店の前に立っている、後ろ姿だが見た事のある奴だとはっきり分かった、半透明で妙にぷるぷるした身体を持つ女だなんて俺の知る限り1人しかいない……ラムだ。


「おじ様っ、ロープの長さは長めでお願いしますわっ! あと、蝋燭(ろうそく)も貰いますのっ! あと鞭は置いて無いですの! あたしっ、それも欲しいですの!」


どうやら此所は雑貨屋らしいな……店員の4本腕のスキンヘッドの親父が困り果ててる、ぜぃぜぃと息を切らしながら、ゆらゆらとツインテールを揺らすラム、えっと店の前でなにをやってるんだあいつは! そんなラムを冷ややかな目で見るヴァーム、するとその目線に気付いたのかラムは仕切りに辺りを見回した。


「どっ何処かで、わたくしを(さげす)む視線を感じますのっ」


恍惚とした表情で見回す、ヴァームは俺を強引に引っ張り人混みの中に隠れる。


「さっ放っておいて行きましょうか」

「おっおぅ……」


なんか、見つかったら煩そうだからな……此処はヴァームの言う通りにしよう。


「暫く露店街を歩くと住宅街があるんです……あっあの道を入ると……あっその道は……」


次々に説明してくれるヴァーム、何だか楽しそうだな、俺は疲れると言うのに……しっかし広い街だなぁ、にしても通る奴等……やっぱり俺を見てくるな、気にしまいと思っていたいたが無理だ、皆小声で「男の娘」って言ってるし……俺は男の娘じゃない! ちゃんとした男だ!


「シルク様、もうそろそろ街の出口に着きますよ」

「おぅ、そうか……」


やれやれ……やっと街から出るのか、これから山を登るんだよな? はぁ……俺は登山なんてしたことないのに、物凄く不安だ。


「さぁっ! 頑張りますよっ」


何でヴァームはこんなに元気なのかは知らない……まぁ、さっさと商談を終わらせて帰ろう、頼むから無事何事も無く終わってくれよ……俺は心の中で強く願った。


この時俺はまだ分かっていなかった、願うだけ無だと言う現実を…。

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