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どうやら魔王は俺と結婚したいらしい  作者: わいず
幼馴染は理解する……。
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シルクは黙って行っちゃった。

全く振り返らなかった、真っ直ぐ前を見て走ってった。


私はそれを見えなくなるまで見送った。


「……はぁ」


どっと疲れた。

やっぱり感情を圧し殺すのって大変、何度も泣いちゃいそうだった。

でも泣いちゃダメ、強くそう思った、だから我慢したの。


「告白くらいすればよかった」


あぅ、今更後悔しちゃった。

でも……私、分かっちゃったもん。

あれ、あの時のシルクの顔……すっごく輝いてた。

あの顔をしたシルクは、何言ったって聞かない、だから言えなかった。


「言えるわけない……泣いたら、シルクを困らせちゃう」


好きな人だけど……そう思うの。

ほんとはあの時、止めたかった。

森で話し聞いた時なんか「イケる」って思っちゃった。

でも、ダメだった……シルク、私よりロアを選んだ。


呆然と立ち尽くしてる私は壁に近付き、ゴンっ……と頭を付ける。


そんな時だ。

しゅわん……と、妙な音が鳴った? なに? 今の音……近くで聞こえた、いや……真後ろ? 気になったから振り向いてみると……。


「……あ、らっ君」


くすっ……と笑ってる、らっ君がいた、後ろに腕を組んで立ってる。


「……」


え、なんにも言わないでこっち見てる。

なん……だろ、今一人にして欲しい気分。

よし、ちょっとキツめに言って離れてもらお。


「意外だね。あんなに好きだったのに」


と、思ったら割り込まれた。

…… って、え? その言葉、もしかしなくても……まるでさっきの事を見て言ってる様に聞こえる。

見てたの? 全く気配なんて感じなかったのに。


「くふふふ。見てたの? って言いたげだね。うん、見てたよ……ちょっと事情があってね、そしたら君ら二人を見付けた訳さ」

「……そう」


なんか、偶然見た見たいに言ってるけど凄く怪しい。

それなら姿が見える筈、この廊下は一本道、隠れる所はない。


らっ君……なんか嘘ついてる。


「そんなに睨まないでよ。ほんとの事言うからさ」

「むっ。やっぱり嘘ついてた」


私の思った通りだ。

理由によっては、許してあげない……。

そう思いながら、らっ君の話を聞いた。



「……という訳で気になってシルク君の後を追ってたわぐはぁっ!」

「…………」

「ちょっ、なんで……殴るの……さ」

「らっ君なら、理由言わなくても分かる筈」

「うっ……ぐっ……まっまぁ、なんとなくは……ね」


話を聞き終わった瞬間、らっ君のお腹にパンチした。

むぅ……切っ掛けを作ったのらっ君。

だからパンチしたの、らっ君は苦しそうにお腹押さえてる。

軽く殴っただけなのに……。


「なっ内臓……全部、ゆっ揺れた……よ」

「大袈裟、そんな威力で殴ってない」

「……そっそう言う事に、しといて……あげるよ」


ぜぃぜぃはぁはぁ言いながら言うと。

壁に手を付き、汗まみれの顔で見てくる。


「色々言いたいんでしょ? 言いなよ」

「別に良い。文句はもうパンチで帳消し」

「……そう」


ほんとは色々と言いたいけど、我慢するもん。


「……良く気持ちを押し殺したね。シルク君の事、好きだったんでしょ?」


と思った矢先、こんな事言ってきた。


「うるさい」


そんなの言わなくても分かってるでしょ? いちいち言わないで。

らっ君がシルクに色々しなきゃ、今頃私は、私は……。


あ、やっぱどのみちダメだったかも知れない。

らっ君が何もしなかっても、森でいた時のシルクを見てて思った。


帰りたい、そう思ってるけど……。

頭の中はロアで一杯、私と一緒にいて、笑ったりしたけど。

何処か元気がなかった、昔と比べてずっと……。

シルクの笑顔は他人をきゅんきゅんさせる位に可愛い、勿論あの時も可愛かった。

でも、何か物足りなかった……その原因は、ロアだ。


あの時のシルクは、言葉に反して……ロアに想いを伝えなきゃいけないって思ってた。

あ、違うかも……それを想わないように、ずっと圧し殺してた。


絶対そうだ。

だったら、らっ君が何もしなくても……仮に帰ったとしても、いつか必ずシルクは魔王城に帰ってくる。

圧し殺した想いは消せない、絶対にあふれでてくる。


特に、相手を大事にするシルクなら……いつか必ず絶対にそう思う筈。


うん、やっぱりダメだった。

シルクを元気付ける為に連れ出したけど……もう気持ちはロアに傾いてた、私は負けてたんだ……。


うっ、そう思っちゃうと……やっぱり最後に告白ぐらいすれば良かった。


「取り敢えず、涙拭きなよ」


らっ君にハンカチを差し出されながら、そう言われて気付いた。

あ、私……涙、出てる、止まらない……あぁ、どんどん、出てるよぉ。


「うっ、うぅぅ……あぁぁぁぁっ!」


らっ君から差し出されたハンカチを受け取らずに、私はらっ君に抱き付いた。

もう無意識だった、今は……誰でも良いから、温もりが欲しかったの。


「あぁ……えと、アヤネ?」

「だまっで、なにも……いばない……で」

「……分かったよ」


一瞬苦笑するらっ君だけど、私の言葉を聞いて微笑んで、ぽんっと手に頭を乗せてくる。


「言いたい事言いなよ。全部聞くよ……」


とくんっ……。

胸が高鳴った、優しくされたからだ。

そんな、らっ君の優しさに甘え、言いたい事を全部言うことにした。


ほんとに、全部……聞いてよ。

沢山、言いたい事……あるんだから。

今回も読んで頂きありがとうございました!

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