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どうやら魔王は俺と結婚したいらしい  作者: わいず
始まりは騒がしく甘酸っぱい、だけどやっぱり騒がしい
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シルク視点に戻ります。

店の仕事が終わって城に帰り、そこでの一時も過ぎ去った夜。

俺はひとり、風呂に入ってた。

このド派手な等身大ロア銅像にも慣れて、ここは俺にとって安息の地になっていた。


ふぅ……今日も疲れた、上を見上げながら俺は染々と思った。

今日も俺の店には変態供がやってきた。

でも、今日はアヤネがいたから なんとかなった感があるな。


改めて思うが、ほんと助かったよ。

またお礼を言っておこう。


「ふぅぅ……」


ちゃぷんっ。

至福の息を吐きながら肩までつかる。

あぁ気持ちいぃ、ここの湯……熱いけどそれが良いんだよな。

なんか風呂に入ってるって感じがするんだよ、逆に温いと物足りない感じがする。


そう思うのは俺だけか?


「……はふぅ」


ま、どうでも良いか。

とっ……汗が眼に入りそうだ、なので腕で汗を拭う。


それにしても、なんで寒くなってくると風呂はこんなに気持ちの良い物になるんだろう?

寒さで冷たくなった身体、熱い湯に入ると、カァァァッと身体の芯から暖まってくるのが分かるんだ。

その感覚が気持ち良くてたまらない……って、爺臭い事思ってるな。


「でもまぁ、気持ちいいから良いかぁ」


そんな事を思ってしまうのも、風呂の良さだ、その良さを堪能しようじゃないか。

まったりとそんな事を思いながら目を瞑る。

ほんと気持ちいいよ、今日も色々あったからなぁ……全身の疲れが取れるなぁ。


「おっじゃまするのじゃ!」

「おじゃま」


…………。

うん、取れたのに……また疲れそうだな。

すっごい笑顔でロアとアヤネが並んで入ってきた。

隣通し、肘で相手の横腹をゲシゲシ小突いてる……。


既に厄介事の発端である小さな喧嘩が始まってる。

あぁ……至福の時間が潰えてしまった、ちくしょう。


「くふふふぅ。シルクよ、わらわより先に入るとはダメじゃのぅ。決めたじゃろ? 風呂はわらわと一緒に入ると」


……いや、そんな事言ってない。

目を輝かしながら、約束してもいない事を堂々と言うな、あとな……前を隠せ全部見えてる。


「シルク。私は一緒に入りたい気分だったから来たよ」


来るなよ。

そんな気分でも来るんじゃない! 何度も言ってるだろ? 男女一緒に入るのは嫌だって! それと、お前は女の子なんだから全裸を晒したら恥じろ! ロアもだぞっ、堂々と見せ付けるんじゃない!


俺は一人で入りたいんだ……って、こう言うのは口に出さないとダメだな。

言っても無駄だったとしても!


「二人とも、前を隠せ」


そう思って言ってやった。

勿論、視線を反らしながらだ。


「むっ。隠したら見せ付けられんじゃろうが、何を言っとるんだ馬鹿者」


……え? なんで怒られた?

チラリと見てみると、前のめり気味になって俺を睨んでる。

ついうっかり視線が胸の方に移ったが、直ぐ様そっぽを向いた。


……褐色肌、はりがあるな……それに、あの胸で前のめりになられると……って、ダメだダメだ! 変な事を考えるんじゃない!


「シルク。私を見て、良い物見れるよ」


……おっと、そうだった。

ロアばかりに気をとられてはいけない。

アヤネもいるんだったな、絶対に見てやるもんか。


「むぅ。そっちに私はいない……こっち見ないとダメ」


とか言ってるが無視する。

って、俺も風呂に浸かってないで出ていけばいいか。

そう思って、立ち上がる。


ジャバッと飛沫が上げて、浴槽から出る。

そしたら、チラリと二人がきょとんとしてるのが見えた。

よし、そうしてる間にさっさと出てしまおう……。


「待てい!」

「待って」


なんて事は出来ず、二人にガッチリと腕をとられてしまう。

……くっ。

やはりダメだったか、いつも通りだなちくしょう。


「くふふふぅ。恥ずかしいからって出ていかなくとも良かろう? さぁ、入るのじゃ。あ、アヤネは出ていけ、二人きりの時間の邪魔じゃ」

「邪魔なのはそっち、ロアがでてって」


あははは、相変わらず勝手な事を言ってるなぁ、あと俺を挟んで喧嘩すんなよ。


「んう? どうしたシルク。なにやら疲れきった顔をしとるぞ? さっきまで風呂に入ってたと言うのに……」

「ほんとだ。どしたのシルク?」


俺の様子に気づいた二人は俺を覗き込んでくる。

疲れた顔してる? 風呂に入ってたのに? それはな……お前らが来て精神的に疲れたからだよ!


「入るなら二人で入ってくれ! 俺は出ていく!」

「ぬぉっ!」

「わっ」


どんっ……と軽く押して、俺は出ていった。

足早に風呂場から出たあとは、素早く脱衣場で身体を拭いて服を着て、髪を乾かして出ていった。


「はぁ……こう言うの、何度目だろう」


何回もこう言う事起きてる気がする。

あの二人は自重する事を覚えた方が良い……。


なんて思いつつ廊下を歩いていく。

あぁ……これからどうしようか? 正直、もう少し風呂に入ってたかったが……あの二人のせいで入れなかった。


……よし、決めた。

皆が風呂から出た後、また入りに行こう。

なんか今日はじっくりと風呂に入ってたい気分なんだ。

まぁ……皆出たら湯が抜かれてそうだが、その時はその時だ。

そうなったら諦めてふて寝しよう。


「って感じに先の事は決めたが……今どうしようか」


ふむ、それが思い付かない……あぁそう言えば、ラキュからまだロアの昔話の続きを聞けてない、それを聞きに行こうか。

アヤネが代わりに聞いて後で伝えるとか言ってたが、直接本人に聞きに言った方が良いだろう。


「うん……決まったな。じゃ、ラキュの所に行くか」


今やる事が決まったからそこに向けて歩いていく。

昔のロア、成長してから父親に何を話したんだ? その事をじっくり聞きに行こうじゃないか。

今回も読んで頂きありがとうございました。


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