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どうやら魔王は俺と結婚したいらしい  作者: わいず
始まりは騒がしく甘酸っぱい、だけどやっぱり騒がしい
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わいわいがやがや騒がしい店内。

そんな中、魔物(へんたい)の変態的な要望をキッパリ断りながら仕事していく。


あ、忘れたと思うが俺の店は雑貨屋だ。

決して、俺にコスプレをさせる店じゃない。


「ずぃません。ごれ、ぎてぐんねぇがな?」


なのに、今目の前にいる緑色の大きな身体の魔物に小さなドレスを渡されダミ声でそんな事を言われた。


「着ないぞ」


だからキッパリと言ってやる。

何度も言うが、ここはコスプレさせる店じゃない、雑貨を扱う店だ。


「シルク。お客様の要望には極力答えないとダメ、そのドレス似合うよ。きっと」


なのにだ……たちが悪い事にアヤネも一緒になって着ろと言ってくる。

あぁあ……こうなるんだったらアヤネを店に来させるんじゃなかった。

といっても、無理矢理着いてくるんだろうけどな。


「お前ら、物を買わないなら出ていけ」


うんざりしながら言ってると、1人の魔物がカウンターの前に群がってる魔物を掻き分けてやってくる。

とっても真剣な顔をしている、その魔物がズビッと人差し指を突き立てて格好よくこう言った。


「なら、シルクたんと1日デートの権利を下れないか?」

「そんな物はない!」


わざわざ魔物を掻き分けて言った台詞がそれか。

ため息をはきながら言ってやると、驚愕しながら「なん……だと」と呟いて膝から崩れ落ちた。


あぁ、やだやだこのやり取り、面倒くさくて仕方無い。


「ねぇねぇシルク」


おっと、更に面倒な事になりそうな事が起きそうだ。

今の声はアヤネ、さっきから俺の後ろでガサゴソと何かやっていた。


手伝わないのか? と思ったが別に良いか、そう思って放っておいたんだが……なにか仕掛けて来るみたいだ。

一応身構えておくか。


「こっち見て」


……見てって言われたな。

正直見たくない、なにか嫌な予感がする。

だから黙ってアヤネに背を向ける事にした。


って、いたっ! なっなんだ? 何か背中に当たったぞ。

なんだ? と思ってチラッと振り替えると俺の足の近くに靴が落ちていた。

……なぜこんな所に靴が?


「はやくこっち見て。無視はダメ」


あ、もしかして……この靴はアヤネのか? と言うことは俺に靴を投げたのか?


「あのな。人に向かって靴を投げるな」

「じゃ、サラシにしよっか?」

「靴で良かったです、サラシは勘弁してくれ!」


危なかった。

あのまま無視し続けてたらえらい事になってた。

無視しないで良かったぁ……そう安堵しながらアヤネの方を向く。


本当にサラシ投げられたら困るからな。


「……おぉ」


嫌な予感はするけど、意を決して見てみた。

そしたら、思わず声が漏れた。


「どう? コスプレしてみた」

「あぁ、似合ってるよ」


アヤネは俺も着た事があるメイド服を着ていた。

くるんっと一回転する、おぉ……ふわっとスカートが靡いてる、あとアヤネのトレードマークであるツインテールも靡いてる。


「ふふんっ。でしょ? 流石私」


どや顔のアヤネ。

まぁ……似合ってるからどや顔していいか。

って、なんか魔物達も賑わい始めたな。


「やべ、似合ってる」

「きっ綺麗だ……」


口々にがやがや話しまくってるな。

あぁ……えと、賑わってる所、非常に悪いんだが、仕事しないといけないな。


「アヤネ、そのままで良いから仕事、手伝ってくれないか?」

「可愛いって言ってくれたら手伝っても良いよ?」


うっ……こっこいつ、ニヤニヤ笑いながらなんて事を……。


「なんて、冗談。それは私の行動で言わせないとダメ。だから、今は言わないで。あ、言いたかったら言っても良いよ」


と思ったら冗談か。

いや、本気? どっちだ? どっちとも取れないぞ。


「じゃ、手伝うね。なにしたら良い?」


……おっと。

そんな事考えてる場合じゃなかった。

アヤネに指示しないと。


「そうだな……。取り敢えず、物を買わずに俺にコスプレをしてくれ、と言ってくる奴等全員を追い出してくれ」

「りょうかい」


ニコッと微笑んでそう言うと、魔物達は露骨に嫌な顔をしだした。

「えー!」とか「それは無いぜ」とか言ってる。

その台詞そっくりそのまま返してやるよ!


「あ……多少強引でも良いぞ」

「分かった」

「だからと言って、怪我はさせるなよ?」

「うん」


コクリとアヤネが頷くと、とててーと魔物達の方へ走っていく。

そして、「よいっしょ」と言いながら魔物を持ち上げ……そのまま窓の外へぽいっと放り投げた。

直後に投げられた魔物の悲鳴……ではなく喜びの声が響く。


………………強引だな。

まぁ、強引でも良いって言ったの俺だから何も言わないでおこう。

そう思いながら、アヤネが魔物を放り投げるのを見て恐怖した魔物達が、ぎゃぁぎゃぁ叫ぶのをスルーして、カウンターに肘を置いてその様子を見守る。


騒がしいけど……賑やかで良い事だな、はははは……。

自分に危害が無い事を良いことに傍観していた……その時だ。


ガチャっ……。

扉が開いた音がした。

視線の先にある扉は開いていない……と言うことは後ろにある扉が開いたのか?


なんで開いた? 気になって後ろを見てみると……。


「や。相変わらず騒がしいね、ここは」


ラキュがいた。

急に現れたからビックリした。

驚いて、何も言えずにいると、ラキュがくいっと後ろの方に指差してこう言ってきた。


「ちょっと良いかな。話があるんだ」


ニコッと笑うラキュ。

話……また突然だな、なんて思いつつ、断る理由も無いから「分かった」と言って話す事にした。


ふむ、突然来て話がある……か。

なんか、ある気がしてドキドキするな……まぁ相手はラキュだ、変な事は言わないだろう。

気楽にしてようか……。

今回も読んで頂きありがとうございました。


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