表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら魔王は俺と結婚したいらしい  作者: わいず
今後の事、ゆっくり行こう……自分のペースで
451/517

451

お待たせしました。

ちくちくちく……ちくちくちくちく……。


悪戦苦闘しながら、編み棒をくいくい動かすわらわ。

えぇと……あれをこうしてこうやって、こうしてこうなりこうなって……うぅ、目が痛い、肩もこるのぅ。


あぁ兎に角細かいのぅ、編み棒の扱いって、なんでこうもややこしいんじゃろ。

ひっじょうに細かくて難しいのぅ。

だが、わらわがやると決めたんじゃ……やりとげてやるよ。


「ロア様、一度手を休めてはどうですか? 手芸は適度な休みが必要と言われていますよ」

「ん……そうじゃな、そうしよう」


ティーセットを持ったヴァームの言葉を聞いて、一旦作りかけのマフラーを置いて、ぐぐぐぅっと伸びする。


「うぁぁぁぁっ、魔族でも堪えるのぅ……」

「お疲れ様です」


うへぇ目が痛いのじゃぁ、ぐぐぅっと眼を押すと。


「どうぞ」

「む、ありがとなのじゃ」


お茶を進められる。

なので飲む、うむ……旨い、疲れ目に効くのぅ。


「どうですか? 出来そうですか?」

「んー、まぁ……もう少しと言った所じゃな」


ずっと前に作り始めたしの、本当にあと少しで完成するのじゃ。

勿論、完成したらシルクにプレゼントするのじゃ、きっと喜ぶし、わらわの事を好きになるじゃろう。

くふふふふ……。


「そうですか、それは何よりです」

「うむ。もうひと頑張りじゃよ」


じゃから、頑張らんとな。

そう意気込んでると、ヴァームがじぃっと見つめてきおった。


「ん、どしたのじゃ?」

「あぁ、いえ。少し気になった事がありまして……」


んう? 気になった事とな? なんじゃそれ。


「あれから、シルク様にあの事は言えましたか?」

「ぅ」

「……その反応だと言えてないんですね? はぁ……」


痛い事を聞いてきおった。

なんじゃいなんじゃい、そのため息は。

しっ仕方なかろう、言うのは凄く勇気がいるんじゃよ。


「そんな呆れる事もなかろう? わらわは言えるしっ、今度会った時には、バシッ! と言ってやるのじゃ!」

「……」

「なっなんじゃ、その目は……言えないとでも言いたげじゃな」

「はい。そう思っております」

「ぅぐっ、相変わらず容赦の無い従者じゃ」


キッパリ言いおったぞこやつ。

もっとこう……その、なんじゃ、柔かい言葉で包むとか、そう言う優しさは無いのかえ?


って、あ……ちょっと待て、ヴァームの方も言わねばならん事があった筈、よし……それを聞いて見よう。

きっと、まだ言っておらぬ筈じゃ、その時は「わらわの事を言えぬではないか!」と高らかに笑いながら言ってやろう。


「ヴァーム、お主こそアヤネにあの事を言ったのかえ?」


それを聞いた瞬間、ヴァームの眉がピクリと雨後きおった。

あの事、と言う言葉で察しがついたらしい。

さぁ、なんと言う? どうせ言っておらんのじゃろ? 言いにくい事じゃもんな。

言ってないといえ、さぁ言え。


「はい、言いましたよ。言いにくくはありましたが」


……なんじゃい、言ったのか。


「ちっ、面白くないのぅ」

「あら。なにか仰いましたか?」

「や。なにも言っておらぬ」

「そうですか」


くっそぅ、真顔で言ってきおった。

この顔、嘘はついておらん……本当に言ったのじゃ。


「で? アヤネはなにか言ったのか? 喧嘩の1つでもしたのかえ?」


ふて腐れた顔で言ってやると、ヴァームは不思議そうな顔でわらわを見て来る。

じゃが、直ぐに気にしない様にしたのか、答えてくれる。


「いえ、喧嘩はしませんでした」

「ほぉ。そうなのか」

「はい、そうなんです」


ふむ。

意外とすんなり済んだんじゃな。


「なにか言われたりしなかったのかえ?」


多少なりとも何か言われた筈じゃ。

なにせ、わらわの恋愛成就の為に利用させたと言ってもいいからのぅ。


「はい。言われました」

「お。やはり言われたのか、で? なんと言われたのじゃ?」


気になるから聞いてみた、本当は聞かない方が良いんじゃろうが、仕方ないじゃろ? 気になるんじゃもん。


「……そか。とだけ、言われました」

「……え? それだけかえ?」

「はい、それだけです。それを言った後、去っていきました」


おっおぅ、ざっくりし過ぎておる。

なんじゃ? アヤネの奴、気にして無いのかえ? わらわなら問い詰めたり色々するのじゃが……アヤネはせんかったのか。


「……お陰で、色々思い悩んでた私が馬鹿みたいに思えました」

「おっおぅ。なんと言うか、そのぉ……ドンマイ」


ガクッと肩を落とすヴァーム。

そんなヴァームにぎこちない顔して言ってやった。


「ですが。アヤネさんの強さを見た、そんな気がします」

「ふむ。そんな事は気にしない、と言いたげな態度じゃの」

「そうですね、そう思いました」


遠くを見る様に言うと、ヴァームは微笑みながらお茶を飲んだ。


初めて会った時から思ってはいたが……アヤネは不思議な人間じゃな。

しかし、それがアヤネの良い所かもしれんな。


「ロア様? 私の話で誤魔化していますが、きちんと言ってくださいね? わざわざ宣言したんですから」

「わっ分かっとるよ」


うぐぅ、誤魔化してのバレてるし……相変わらず察しの良い従者じゃな。

いっ言われなくとも言ってやるよ……その内ビシッとな、時間はかなり掛かると思うがの。


「休憩は終わりじゃ。そろそろ始めるかの」

「了解です。ではティーセット、お下げしますね」


そう言ったあと、わらわは作業を再開した。

とりあえず、言える……そう思って言ってみるかの、頑張れ……わらわ。

今回も読んで頂き、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ