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いただきます、そう言って食べ始める。
ふむ……今日の朝食は優しい味付けだ。
そんな食事に舌鼓をうった後アヤネを見てみる。
「……むにゃ」
まだ寝ている。
なんか、むにゃとか言ってる。
眠りながらむにゃって言う奴、初めてみた。
「ねぇ、起こした方が良いんじゃないの?」
そう言って、ラキュはアヤネの肩を持ってゆさゆさと揺らす。
しかし起きない、小さな寝息をたてて眠り続ける。
目の前に料理があるのに起きない……勝手な想像だが、料理があれば、その匂いで目覚めるかと思ったが……そんな事は無かったな。
「そうじゃな、折角鬼騎が作ったんじゃ。食べてもらわねば困る」
そう言って、ロアが立ち上がりアヤネの近くへ行く。
そして、ゆさゆさ揺らす……だが、やっぱり起きない。
「アヤネ! おい、アヤネ! おきろっ、朝じゃぞ!」
ペチッ! バチっ!
なんどか頬っぺた叩くけど、それでも起きない。
あ……鼻ちょうちんでた、それを見てロアの眉がヒクヒク動く。
「流石に、椅子から落っことせば起きるじゃろう」
「……いや、やめとけ。起きるだろうが可哀想だ」
悪い顔して何を言ってるんだ。
「むぅ、じゃがのぅ……起きんからのぅ。早くしないと飯が冷めてしまう」
「まぁ、そうなんだが……」
ロアは目を瞑り、むぅ……と唸る。
皆も食事の手を止めてアヤネを見る。
アヤネ……注目浴びてるぞ、早く起きてくれ。
俺がそう考えた時、ガチャリと扉が開いた。
「……あぁ、いたぁ。いたよふぅちゃん。皆、ここにいたぁ」
「む、そうか」
間の抜けた声を発しながら現れたのはシズハさんだ。
遅れてフドウさんも現れる。
「えへへぇ、ちょぉっと寝坊しちゃいました」
「それと、ここに来るまでに迷った。うっかりだな」
頭をコツンと叩いて舌をペロッと出すシズハさんと無表情で、むんっと腕を組むフドウさん。
……なんか色々言いたいけど、この2人はいつもこうだから何も言わないでおこう。
「おはようございます、おふた方」
立ち上がりぺこり、と頭を下げるヴァーム。
それにたいして、2人は口々に「おはよー」「うむ、おはよう」と返事する。
「一応料理は作ってある。食べて行くよな?」
厨房にいる鬼騎がそう言うと……。
「食べまーす」
「頂こう」
と返事した。
そして2人は空いてる席に座る。
「ふぅぅ、迷って歩き回ったから疲れたぁ」
「そうだな」
……さっそく2人だけの空間を築いてるな。
このイチャイチャした空間、側にいるだけで……なんと言うか恥ずかしい気持ちになる。
「まったく、イチャつきおって……」
いつの間にか近くに来ていたロア。
そう言わないでやってくれ、喧嘩してるのと比べたらずっとマシだろう?
なんて思ってたら、2人の前に食事が用意される
「わぁ、今日は和食ですよぉ。故郷で食べた物とおんなじですねぇ」
「む。そうだな」
ほぉ、この料理は2人の故郷にある物なのか。
知らなかった……。
「えへへぇ、これは味わって食べなきゃいけませぇん。それじゃいただき……ん?」
シズハさんは、それを食べようと手を合わせた時、ある事に気が付いた。
「あ、あ、アヤネちゃんがいますぅぅぅっ!!」
「っ!? ほんとだ、いつのまに!」
アヤネにいる事に気付いて驚く。
やっと気付いたか……さっきから何時気付くんだろうな? と思ってたよ。
それと、気付かなかったらどうしよう……とまで考えた。
アヤネの存在に気付かず、イチャイチャしてるもんな……気付いて良かったよ。
あっ、フドウさん……あんた「いつのまに!」とか言ってたけど……初めからいたぞ。
「アヤネちゃん! おぉいっ
アヤネちゃん!」
シズハさんは、パタパタと騒がしくアヤネに近付き声をかける。
「むっ! 寝坊助さんはダメですよ!」
しかし、さっきと同じく起きない。
それにムッとなったのか……シズハさんは右手を上にあげる。
それを……勢い良くアヤネの頭めがけて降り下ろした。
「……っいひゃっ!? 」
ゴツンッ!
とシズハさんのチョップを喰らって流石に目覚めるアヤネ。
起こし方が酷すぎる、あと自分も寝坊した癖に酷い言い種だ。
「ふぇ……ふはぁ……なに?」
叩かれた頭をさすりながら大あくび。
眠たまなこでキョロキョロする、すっごく眠たそう……。
「しょく……どう? 私……らっ君の部屋に……いた筈、むにゃ」
うとうとしてるアヤネ。
ちょっと混乱してるな……眠たそうに口をもごもごしてる、あっ……俺を見た。
「しる……く? おはよ」
「おっおぅ。おはよう」
混乱してても挨拶はするのか。
……あ、シズハさんがアヤネの肩を叩いた。
そしたら、そっちの方を見た。
そして、ぽけぇ……とシズハさんを見る。
「ま……ま?」
「そう、ママだよぉ」
「我もいるぞ」
んー……と呻いて見る。
ほんと、眠たそうだな……このまま寝るんじゃないか? なんて思ったその時!
「ママっ! パパっ!」
パチッ! と大きく目を開いて驚いた。
突然の親と娘の再開……にしては突然過ぎる。
だが、今この瞬間。
アヤネとフドウさん、シズハさんは再開した。
正直、この展開は予想してなかった……さぁ、この後どうなるんだろう……また、騒がしくなるんだろうな。
今回も読んで頂きありがとうございましたっ!




